見るとはなしに全体を見る

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暇そうであるのには理由がある

課長が暇そうにしていると(かつ成果が上がっていないと)、上級マネージャーから「暇そうだな」と嫌味を言われることがある。

これはまあ実際に暇そうにしているから仕方がないことなのだけれど、そうかといって、本当に暇であるか、というのはまた別問題である。

たぶんその種の上級マネージャーには一生理解できないことであるとは思うが、「暇そう」と「暇」は大きく異なる。

僕が暇そうにしているのは、部下が話を掛けやすくする為であって、その方が仕事が円滑に回るからである(マネージャー業務には繁閑の差があって、本当に暇な時もあるが…)。

でも部下の様子は見ているし、そこで行われているやり取りについても大体は把握している。

今日はそんな話をしていく。

「受け」から始まる仕事が殆ど

マネージャーになって気づいたことの1つに、マネジメント業務というのは基本的に「受け」から始まるものなのだ、ということがある。

これはどういう意味かと言うと、「部下が仕事を持ってくる→マネージャーの仕事が始まる」という順番である、ということを意味する。

担当者時代というのは、「攻め」というか、自分が先手を取って仕事を作っていくようなイメージでやっていたのだけれど、マネージャーはそうではない。

あくまでも、何らかの事象(コト)が起きて、それに対応する、という形を取ることが多いのだ。

これは「相談」もそうだし、「苦情対応」でも「承認」でも「決裁」でもそうなのだけれど、何らかの入力があって、それに応答(出力)する、という形で仕事が進んでいくのである。

その際に、大事なことが「事前にある程度状況を把握しておく」ということである。

もう少し詳しく書いていく。

いきなり全力疾走を強いられるのがマネジメント

「受け」から仕事が始まる、ということは、事前準備がなく、いきなり試合が始まるようなものである。

それもかなりのハイペースで。

その時にエンジンが暖まっていないと、対処するのは困難になる。

ただ、マネジメントという仕事の構造上、いつでも臨戦態勢でいる、というのは不可能である。

あくまでも、部下の仕事が先、マネージャーの仕事が後、であるからである。

状況を把握しておくことで、すぐに動き出せるようにしておく

では、マネージャーはどのように準備しておけばよいのか?

それが今回のタイトルである「見るとはなしに全体を見る」ということである。

僕は暇そうにしていながらも、メンバーの状況を何となく把握している。

焦点をぼんやりとさせるようにして、チームで行われていることをうっすらと捉えておくようにする。

これがとても大事である。

メンバーが電話で何を話しているか、同僚同士でどのようなやり取りが行われているか、ということを、ふんわりと聞いておく。

すると、相談が来た時に、「ああ、アレのことだな」とスタートがスムーズになる。

ある程度のアイドリングができた状態から、自分の仕事を始めることができる。

それが「見るとはなしに全体を見る」ということだ。

聞いてはいるけれど、首は突っ込まない

ここで注意して欲しいのは、「聞いてはいるけれど、首は突っ込まない」ということだ。

あくまでも知らないフリをする。

聞いていないフリをする。

それはなぜか?

それはマネージャーが首を突っ込むと、社員が自分で判断しなくなるからだ。

社員の自主性が損なわれるからだ。

一次判断と二次判断

以前にも書いたことであるが、あなたの部下が指示待ちであるのであれば、それはあなたが首を突っ込みすぎているからである。

判断をマネージャーがし過ぎているからである。

僕はそう考えている。

一次判断と二次判断というものがあるとするなら、一次判断はまず部下に任せるべきだ。

その上で、その情報を基にマネージャーが二次判断を行う。

一次判断をマネージャーが行っては(取り上げては)いけない。

これを分かっている人はあまり多くない。

作業だけでなく判断も任せる

部下が自発的に仕事を行うようにする為には、仕事を任せる必要がある。

そしてその仕事の中には「判断」も含まれる。

末端の「作業」だけでなく、「判断」も任せるということが、仕事を任せるという意味である。

これをきちんと理解しておくことが重要だ。

何となく様子を伺っておくことの重要性

そうは言っても、部下に判断を任せるのは不安である、という気持ちもわかる。

とんでもないことをしでかしてしまうのではないか、そう心配になるのも無理はない。

だから、「何となく様子を伺っておく」のだ。

そこで「明らかにヤバい事象」が起こっていれば、迷わずに介入すればいい。

ただグレー領域にあるのであれば、それはしばらく放っておくことだ。

口を挟みたくなる気持ち(善意も含む)をぐっと堪えて、そのままにしておく。

部下に悩ませる。

これが部下の自主性を育むのだ。

部下の判断の理路を辿る

そして同時に、悩んだ部下がいつでも相談できるような環境も作っておく。

それは「課長が暇そうにしている」ということだ。

僕は白々しく、「そうなんだ。それは困ったね」みたいなことを部下には言うけれど、その時点で相談内容の殆どについて理解をしている。

そして状況説明とそれに関して部下がどのように判断したのかを初耳のように聞く

大事なのは「問題を解決すること」「部下がどのような理路を辿ってその判断をしたのかを知ること」である。

この両方をすることが、部下が自発的に行動する土壌を生んでいくのだ。

それではまた。

いい仕事をしましょう。


あとがき

マネジメント業務においても、「先手」を打ちたがる人は多いです。

プレイヤー時代の成功体験もそこには関係しているのでしょう。

ただ、部下の人数が少ないのであればいざ知らず、一定数以上になるとそれを全員に対して行うことは物理的に不可能になってきます。

その時に大事なのは、先手を打つことではなく、後手を取られない、ということなのだと思います。

考える部下を育てながら、チームを円滑に回していくことはなかなか難しいことですが、視野を広げ、視点を上げながら仕事をすることで、それを実現することは可能です。

全体を見ながら仕事をしていきましょう。