断定しない

自惚れることなかれ

今日の話は自戒を込めたものとなる。

というのは、僕は断定することで数多くの失敗をしてきたからである。

ここで言う断定というのは言葉の通りで、「初めから決めてかかる」「決めつけて話をする」というような態度を指す。

多くは部下との関係性においての話である。

ある程度マネージャーとしての経験を重ねてくると、「こう来たらこう」「こういうヤツはこう」のような、ルーティン化・パターン化がされてきて、それはそれで業務を効率的に運営する為には必要なスキルではあると思う。

特に「自分には人を見る目がある」と自惚れる僕のようなタイプは、この事前の判断が「大体は」合っているので厄介なのである。

それでも、できるだけ断定はしない方が良い。

探偵が1つ1つ証拠を探しながら犯人を追い詰めていくように、じっくり構えることが必要なのである。

それでは始めていこう。

パターン化の罠

マネージャーには見えていない部分がある。

まずこれを認識しておくことが重要だ。

メンバーの状況を全てマネージャーが把握できるはずがない。

こんなのは当然のことである。

でも、そう思っていても、嵌ってしまうものなのである。

「パターン化」の罠のようなものに。

部下の言い分は聞こう

人間はたぶん進化の過程でそのような思考方法を身に付けたのだろう。

できるだけ知的リソースを省力化しながら、適切な判断を行えるように。

でも、ちょっと待って欲しい。

そこで判断を留保することが大切なのである。

部下には部下の言い分がある。

納得できるかはさておいて、取り敢えず事情は聞いていた方がいい。

それが今回の話である。

判断だけでは…

もう少し言うと、事情を聞いたとしても、最初の判断が大きく間違っているということは殆どない

「じゃあ、初めから決めたって、断定したって、いいじゃないか?」

いや、そうではないのだ。

このプロセス、やり取りの部分が重要なのである。

僕も勘違いしていたのだけれど、マネージャーにとって大事なのは適切な判断を下すこと「だけ」ではない。

もちろん判断を下すことは大切だ。

ただ、そこにはプロセスが生じており、それも加味した上で判断していると思わせることが重要なのだ。

とてもまどろっこしく思えるだろう?

確かにまどろっこしい。

でも、これができないと、部下からの信頼は得られないのである。

感情面での腹落ちが不可欠

「何もわかっていないくせに」というのが部下からの反応としてはよくあるものだ。

これは最短距離を駆け抜けた時によく起こる事象である。

仮に結論が合っていたとしても

当たり前の話であるが、部下は人間であり、感情を持っている。

理非だけで、「納得!」ということは起こりえない。

感情面での腹落ちが不可欠なのである。

プロセスを辿ることの重要性

これには適切なプロセスを経る必要がある。

事象を整理して、その際の状況を確認して、どのような感情からそのような行動を取ったのか、を確認する必要がある。

一見遠回りのように見える過程をきちんと辿ること。

そうやって部下との信頼関係を築いていくのだ。

話す回数を増やす行為自体が大切

これは単純接触効果に近いものだと僕は思っている。

別に何か決定的な話をする必要はなくて、ある一定以上の回数を重ねるその行為自体が大切なのである。

マネージャーが断定していると部下が判断すると、出る情報も出てこなくなってしまう。

だから、同じ地平に立って、先入観を持たずに「まあ話を聞こうか」というスタンスがとても大事なのである。

タイムラグによる過失を防ぐ

もう少し言うと、これはタイムラグによる過失を防ぐことにも役に立つ。

タイムラグによる過失?

そうなのだ。

ある事象に伴う原因というのは、上記したプロセスを経れば全て分かるというものではない。

当事者は言わないこと、言えないこと、敢えて言わなかったもの、などなどが時間を経つとわかってくる。

それらが出てきた時に、マネージャーが断定をしていると、自分も逃げ道がなくなってしまうのだ。

なので、何となくの方向性だけは理解しておいて、「最終的解決」のようなものまでは持っていかないことも併せて重要である。

最後の最後はぼやかしておく。

そうやって、事象の全体像が現れてくるのを待つのが重要なのである。

余白を残しておく

事象が起きた直後においては、感情が波立っていることもあり、冷静な分析が部下もできないことが多い。

その時の状況を、感情に任せて話してしまうことだってある。

そして当然ながらマネージャーには言えないこともある。

それらが時間を経ると、ポロポロと周囲から漏れ出てくるものなのである。

当事者以外の部下から、ポロリと「あの時は実はああだったんですよ」という話が出てきたりする。

それによって当初判断したものと大筋では間違っていないものの、やや違った観点が必要になる場合がある。

その時に、マネージャーとしても「余地」「余白」を残しておく方が対応がし易いのだ。

あとから軌道修正できるように

何というか、こうやっておくと、後出しではあるのだけれど、「大物感」「器の大きい感じ」を出すことができるのである。

嫌らしい話であるが、「いや、そうだと思っていたから言わなかったんだけれど…」みたいな技を使うことができるのだ(その当時は何とも思っていなかったとしても)。

だから、断定はしない方が良い。

自分だってそんな完璧な人間ではないことは自分が一番よくわかっているはずだ。

それではまた。

いい仕事をしましょう。


あとがき

判断は速い方が良い。

僕はそう思っていました。

大筋ではそれは間違っていません。

でも、解釈の余地(余白)は残しておいた方が良い、と今は思っています。

思いのほか、部下は色々なことを考えていたりします。

頭ごなしに決めつけるのではなく、時を味方にしながらゆっくりと理解していくことも重要なスキルです。

じっくりいきましょう。