実務家も必要

実務がわかるマネジメントクラスがいないと組織は回らない

マネージャーには2つのタイプがいる。

1つは、マネジメントをしている領域の実務を知っているタイプ。

もう1つは、実務を知らないタイプ。

さて、あなたはどちらのタイプだろうか?

これはどちらが良いとか悪いとかそういうことではなく、この2つのタイプがバランスよく配置されていないと、組織は上手く回っていかない、ということを言いたいだけだ。

もう少し詳しく言うと、少なくとも同じライン(担当者から社長までの間)に実務ができるマネジメントクラスがいないと、なかなか厳しい、ということになるのかもしれない。

もちろん僕自身が現場叩き上げのマネージャーなので、実務を知っているタイプのマネージャーを擁護したいという気持ちがある、という面は否めない。

それでも、と思うのだ。

もう少し現場担当マネージャーを優遇してもいいのでは、と。

現場経験がないと、言葉が芯を食わない

昇格とか昇進とか、そういうものに疎い僕は、いわゆる本社でエリート街道を走ってきた人がどのような気持ちで現場の指揮をとっているのかはわからない。

そういう人は一時的に現場を経験して、また本社に戻るのだろう。

そしてそういう人達が更に偉くなっていくのだろう。

でも、その「お試しの舞台」で働いている我々からするとこれはたまったものではない。

本当に不思議なことだけれど、この種の人は頭が抜群に良いはずなのに(だから?)、現場に合った戦略を考えることができない。

言っていることは決して間違ってはいないのだけれど、その言葉が芯を食わないのだ。

なんというか、言葉が上擦っている感じだ。

現場で働いている人たちの感覚がわからない人達

これがなぜなのか、その原因を考えてみた。

何人ものこの種の上司に仕えてきた僕の現在時点における結論は、「実務がわからないから」というものだ。

これは何も自分の経験領域のマネージャーにならなければならない、それ以外のマネージャーはダメだ、ということではない。

どの領域の仕事であれ、そのポイントがどこにあるのか、要点がどこにあるのか、ということを瞬時に理解できる、ということがとても大事だということ、そしてそれはどの領域であれ「実務」の経験がないと難しい、ということだ。

これは実際に働くのは現場の担当者であることが関係している。

どんなサイズの組織であれ、利益を生むのは現場の担当者だ。

その現場担当者達をいかに効率的に動かすのか、がマネージャーやそれ以上の仕事であると言っても過言ではないと思う。

その為に本社組織や管理組織がある訳だ。

でも本社の人はその現場の人達の感覚がイマイチよくわかっていない。

そういう人達と泥にまみれた経験がないからだ。

そしてそういう経験がないのであれば、その努力をすべきであるはずなのだ。

戦略を、それを説明する言葉を、現場レベルに落とし込む作業が必要になる。

でもこれがわからないようだ。

そしてなぜできないのか、ということばかり言っている。

原因は自分の方にもあるのに、それがわからないままでいる。

「踊る大捜査線」ではないけれど、現場と本部というのは元来「そういうもの」なのかもしれない。

だからこそ、それを繋ぐ(架橋する)マネージャーが必要なのだ。

理想と現実、その両方を体でわかっているマネージャーが必要なのだ。

言葉を地面に下ろすために

最近強く思うことだけれど、「人を動かす」というのはとても難しいことだ。

そしてそれは必ずしも立場があるからできるものではない

面従腹背というか、表面上はいい顔を見せていても全然従わない、なんてことはチームマネジメントでは頻繁に起こる。

そういう人達に「自発的に動いてもらう」為には本当に色々な要素が必要になる。

もちろんこの文章で書いているように、実務経験があればそれは少し容易になるだろう。

でも僕が言いたいのはそれがなければ人を動かせないということではない。

仮にそれがなくても、そういうことが自分には欠けている、という「欠落への引け目」みたいな自意識が必要である、ということだ。

確かにそこで働いている担当者達のレベルは低い。

でも、そういう人達を動かすのがマネジメント層には必要な能力なのだ。

だから、ある種自分の立場から降りてきて、地面の上で、そういう担当者達と交わる、一緒になって汚れる、ということが必要なのだ。

言葉を地面に下ろす為にはそれができなくてはならない。

よく言われる話だけれど、その立場にいるから認められる訳ではなく、認められるからその立場になるのだ。

僕は空言ではなく地に足の着いた言葉を求めている。

その言葉を使ってコミュニケーションを取りたいと思っている。

でもそれはどうやら難しいようだ。

そしてその困難性を理解している人はごく少数だということだ。

纏まりのない話になってしまった。

それではまた。

いい仕事をしましょう。


あとがき

「地に足の着いた言葉」と「そうでない言葉」の違いを考え続けています。

ある人の言葉はすっと心に届くのに、そうでない人の言葉は宙に漂ったままになったりします。

その差はコンテンツや話し方の巧拙ではなく、その言葉に身体性が伴っているかどうかによるものではないか、そんなことを考えています。

言葉に身体性を帯びさせるためには、実務を身体的にわかっていることが大きなアドバンテージになります。

日々の仕事を愚直に取り組んでいきましょう。