腹落ちで生産性を上げる

UnsplashErika Fletcherが撮影した写真

目標値のインフレ化

毎年目標が上がる。

前回「成果主義に目標はいらない」と書いたのも、毎年目標値がインフレ化していくことに無意識的に嫌気がさしていたからかもしれない。

そうなのだ。

毎年毎年目標値が上がっていく。

でも、人員は少なくなっていく。

その中で「それを実現しろ!」という号令だけが響いている。

そして、それをやり遂げるのが我々マネージャーの仕事だと。

さて。

そんな苦しい状況の中で、嘆きたくなる気持ちをグッと堪えて、今日は何とかそれを実現するための方法について考えてみようと思っている。

それはもしかしたら生産性向上に悩む日本経済全体の解になるかもしれないから。

それでは始めていこう。

生産性という分数

生産性の向上。

「日本は生産性が低い」ということがずっと言われている。

そして、その原因は「長時間労働」であるという言説が一般的であるような気がしている。

要は、生産性(アウトプット/インプット)という値が低いのは、この分数における分母(インプット)が大きいからなのではないか、というのが大抵のアプローチであるように感じている。

そして、その長時間労働を是正するための方法として、働き方改革がある、と。

「無駄な残業時間などを減らして、効率的な働き方を実現しましょう」という考え方。

それ自体は何らおかしなことではない。

というか、むしろ望ましい方向性であると思う。

でも、体感として、働き方改革によって生産性が向上したよね、とは僕には思えていない。

確かに以前と比べれば、残業時間は減ったし、ワークライフバランスは改善したのかもしれない。

ただ、それに伴ってアウトプットも減少したように思う。

となると、先述した生産性という値(分数)は大して向上していないのではないか?

というのが、僕の実感であり、現在地である。

時間も人も減る中で…

そこに冒頭に書いたような目標のインフレが押し寄せてくる。

毎年20%、30%の目標増加が当たり前のように示達される。

でも、労働時間に制約は課され、人員数も減ることはあれ、増えることはない。

さて。

このような状況の中で、どうやったら目標達成をすることができるのだろうか?

真に生産性を上げる

僕が考えるのは、「質の向上」である。

そして「レバレッジ」である。

要は、真に生産性を上げるしかないのだ。

それは「労働時間の削減による見かけ上の生産性の向上」とは大きく異なる(それだって上記したように上手くはいっていないのだけれど…)。

カギは部下の腹落ちだ

では、真に生産性を上げるにはどうしたらいいのか?

「部下に自発的に動いてもらう」

これしかない。

そして、「部下に自発的に動いてもらう」為には、「腹落ち」させるしかない。

それが今日のテーマに繋がってくる。

統制型マネジメントでは無理

彼(彼女)らの創発性を結集して、仕事の成果にレバレッジをかけていく。

それ以外に方法がないように僕は思っている。

これは「統制型マネジメント」では決して実現できないことだ。

多くの人は未だに「マネジメント=統制型(管理型)マネジメント」だと考えているようだけれど、そのような考え方では、成果にレバレッジをかけることはできない。

負荷をかけることで、もちろん一定の成果の向上は見られるはずだ。

でも、ブーストはかからない。

ある種単線的な、予測可能な範囲の成果にしか届かない。

それでは指数関数的に増えていく目標に到達することはできないのだ。

対話以外にマネージャーにやることなんてある?

現場の最前線にいる、メンバーの考え方やアイディアをとことん活かしていく。

もちろん、ただ漫然としているだけでは、それらが出てくることはない。

1on1を通じて、それらを引き出し、ブラッシュアップさせることが不可欠である。

そういう意味においても、マネジメントという仕事の大半は、彼(彼女)らと対話することに注がれるべきだと僕は考えている。

彼(彼女)らから出てきたアイディアを磨き、彼(彼女)らと共に戦略を作り上げていく。

これ以上に、腹落ちを促す方法はない。

プロセスを共に歩むことの重要性

10年近くマネジメントという仕事やって、僕は「プロセスを共に歩んでいくことが部下を腹落ちさせる為には最も手っ取り早い」ということがわかってきた。

そして、腹落ちした部下は勝手に動き、勝手に成果を上げてくる。

それもこちらが予測したよりも大きな成果をいとも簡単に上げてくる。

これがマネジメントであり、成果にレバレッジをかける、という意味である。

そこに細かい統制指示なんてものはいらない。

大まかな方針さえあればいいのである。

もっと言えば、その戦略を練り上げる際にマネージャーとメンバーが対話を重ねることで、イメージが既に共有された状態が実現されているのだ。

後はそれを実行するだけなのである。

「やってみなはれ」と「よきにはからえ」

もちろん、その実行に際し、様々な問題が出てくるだろう。

でも、それだって、対話をもって解決していけばいいだけである。

何も難しいことはない。

部下が良いと思うことをただやらせればいいだけなのだ。

「やってみなはれ」

「よきにはからえ」

これが僕のスタンスである。

後は暇そうにしていればいいのだ。

それではまた。

いい仕事をしましょう。

あとがき

今日の話は個人的には最近考えていることの集大成のようなものだと思っています。

そして、それが出来ているマネージャーが多くはないということも。

これは、(悲しいかな)暫くは僕のマネージャーとしての地位は揺るがないということを意味します。

「戦略を部下と共に作り上げていくこと」

「その為に対話を繰り返すこと」

これがマネジメントの本質です。

それ以外のことは些末なことに過ぎません。

部下ととことん対話をして、生産性を上げていきましょう。