一貫性と信頼性

言っていることがコロコロ変わる人
会社の中で長く働いていると、「あれ、この前と言っていることが違うな…」という事態によく出くわす。
その度に、とても残念な気持ちになる。
もちろん、企業体である以上、ピボットというか方向転換というか、外部環境に合わせて戦略を機動的に変えていかなければならないということはあるだろう。
でも、今回の話はそれとは別である。
単純に「言っていることが違う」ということについてである。
マネジメントとは判断を求められる仕事である。
そして、その判断が変わり得るなら、それも簡単に変わり得ると部下が思っているなら、そこに信頼性など生じるはずもない。
今日はそんなことを書いていこうと思っている。
それでは始めていこう。
思っていることを言わないから一貫性がないのでは?
一貫性。
10年ほどマネジメントという仕事をやってきて、大事なことはこれだよなと改めて思う。
そして、一貫性を担保する為には、自分が思っていることを言わなければならない、ということも併せて思う。
というのも、それなりに多い確率で、言っていることがコロコロ変わる人に出くわすからである。
またその要因として、自分の考えと異なる話を部下がしてきた時に、自分が納得するまで部下と話をしていないことがあるように思う。
対話が足りない
これを敷衍すると、結局のところ「部下との対話が足りない」というところに行き着くような気がしている。
部下と普段から話をしていて、それなりの議論がそこで行われているのであれば、一貫性というものは損なわれづらい。
というのも、部下も自分がどのように考える傾向にあるか、どのような反応をするか、がある程度予見できているからである。
また、こちらも疑問に思うことなどを部下ととことん話し合うことができるからである。
結果、方針が明確なものとなるし、言外にある部分についても、合意の上で話が進むことになる。
でも、このような人は(残念ながら)あまり多くない。
会議という限られた時間の中で、限られた話しかしていない。
だから、そこで決まったことも、(特に自分の意に沿わない場合には)すぐに忘れてしまう。
そして、次の場面では、全く違うことを言っていたりする。
これでは方針を決める意味がない。
もっと言えば、そのことに本人自身が気付いていなかったりもするのだ。
すぐにでもできること
部下との関係性に悩む上司は多い(僕自身もよくその種の相談を聞く)。
そして、往々にして多くのマネージャーはその原因がわかっていない。
もちろん、人間性であるとか、仕事の出来不出来であるとか、色々な要因がそこにはあると思うけれど、すぐにでも改善でき、それなりに大きな効果があると思うのが、「対話」である。
残念ながら、明日から人間性が急に良くなる訳ではないし、仕事が出来るようにはならない。
もっと言えば、失った信頼というものは簡単に取り戻すことはできない。
でも、対話はすぐに実行することできる。
それは確かに時間がかかる。
また、効果がすぐに現れる訳ではない。
ただ、漢方薬のように、それはじわじわと効いてくるのである。
思っていることを言えば一貫性が具備される
結局のところ、マネジメントとは戦略を如何に部下に腹落ちさせ、高いレベルで履行してもらうか、に尽きるような気がしている。
その為の方策は様々あるけれど、最も有効なのは「対話」である。
これによって、一貫性と信頼性を担保することができる。
少なくとも、毎回言っていることが変わる上司が信頼されないということは明白であろう。
でも、我々マネージャーも人間である。
同じことを同じように言えるわけではない。
だからこそ、できるだけ自分が思っていることを言う必要があるのだ。
言葉の重みによる違い
これは「言葉を担保する」こととも言える。
たくさんのマネージャーと仕事をしてきて、その人の言葉が信頼に足るものなのか、そうでないものなのか、という違いは、確実に存在することを痛感する。
でも、それは言語としては同じものである(当たり前だ)。
また、そこにある違いは、抑揚とか表現方法とか、そのようなスキル的なものによる違いではない。
となると、その人の言葉に重みが存在するかどうかということになる訳だ。
一貫性と信頼性がなければ、腹落ちなんて存在し得ない
言葉に重みを付与する為には、今日のテーマである一貫性と信頼性が欠かせない。
一貫性と信頼性がないところに、腹落ちは存在しない。
そんな当たり前のことを、多くのマネージャーは出来ないでいる。
それは自分が思っていることを言っていないからである。
会社の言葉と自分の言葉
ごく単純なことだ。
自分が考えていることを普段から口に出していれば、そこには一貫性が生じる。
一貫性が生じているなら、それが続いているなら、そこには自然と信頼性が生じる。
何も難しいことではない。
でも、それができない。
それは会社の言葉や組織の言葉を彼(彼女)らが多用するからだ。
そして、多用していることに自ら気づいていないからだ。
スキルでどうにかできるものではない
マネジメントとは言語である。
でも、こう書くとそれをスキルだと勘違いする者が続出する。
そうではない。
ただ単純に、言うことに一貫性と信頼性を持たせればいいのだ。
それがわからない限り、部下との関係性が改善することなんてないのである。
それではまた。
いい仕事をしましょう。
あとがき
小手先だけで部下との関係性を改善できる(したい)と考えている人が多すぎる印象を僕は持っています。
でも、そこにあるのは、不信感です。
不信感を解消しない限り、部下との関係性が改善することはありません。
一貫性と信頼性を意識して、仕事に取り組んでいきましょう。