本心を偽りなく話す

当たり前のことは難しい

言語コミュニケーションよりも非言語コミュニケーションの方が、相手に与える影響が大きいのは周知の事実だ。

でも、個人的にはこの2つを切り離して考えるのはどうなのかな、と思っている。

正確には、言語コミュニケーションと非言語コミュニケーションの一致度が高いほど影響力が強い、という表現の方が適切だと僕は考えている。

要は、このブログ内で腐るほど言及している「言行一致」ということだ。

言っていることと、やっていることが一致していれば一致しているほど、その人への信頼感は増す。

当たり前のことだ。

でもこの当たり前のことが難しいのだ。

本音ベースで話をする方が行動を変えるよりも簡単だ

では、どうやったら言語コミュニケーションと非言語コミュニケーションを一致させる(近づける)ことができるのか?

それは言語コミュニケーションを本心に基づいて行う、ということに尽きる。

本音ベースで話をするように習慣づけしておくと、結果としてこの2つが大きく乖離することを防げる。

それは単純に、言うは易く行うは難し、だからだ。

「あいつは口だけ」と言われないために

僕自身もそうであるが、平常時においては、なるべく言行一致を心掛けようとするものだ。

でも、忙しくなってきたり、イライラしていたりしていると、指示がだんだんと「浮いて」くる

詳細まで話すことが億劫になって、大体の感じで話すことになる。

そしてそこには「期待」も含まれることになる。

ありていに言うと、自分に都合の良い言い方をしがちになる。

本当は自分自身も難しいとは思っているけれど、その難しさを説明するのは面倒くさいし、上司も「それでできるだろ」と言っているし、まあ部下もその感じは理解してくれるだろう、というような感じでテキトーに話してしまう

当然ながら、ここには本心があまり含まれていない

伝言ゲームのように、言われたことをただ部下に下ろしているだけだ。

これが続くと、「あいつは口だけだ」というレッテルを部下から貼られることになる。

そうなると挽回は不可能だ。

チーム内の人間関係の安定なしにパフォーマンスの向上はない

これはある種の習慣みたいなもので、マネージャーが本音ベースで話すことに慣れていくと、チームは単純になる。

マネージャーだけでなく、メンバー同士も本音ベースで話をするようになる。

感情の読み合いがなくなって、言葉が言葉通りに受け止められるようになる

こうなると、余計な労力を使わなくて済む。

あまり気付いていない人がいるので敢えて言うけれど、チーム内の人間関係が安定していないと、パフォーマンスが向上することはない。

人間は生き物(動物)なので、そういう基本的なことが満たされていることが実は重要なのに、そこに注意を払わないマネージャーは多い。

むしろ敢えて敵対関係を煽って、競争意識を高めようとしたりする。

健全な競争意識であれば確かに問題ない。

でも往々にして人間というのは足を引っ張り合いがちだ。

そしてそれぞれがそれぞれのメンバーの裏を読もうとしてくる。

さらに深刻になると、裏の裏、裏の裏の裏、というようにエンドレスに複雑になっていく。

こういう事態は避けた方が賢明だ。

マネージャーはシンプルな言葉遣いを心掛けて、本心を曝け出すべきだ。

辛いときは辛いと言い、嬉しい時は嬉しいと言う。

とても簡単なことだ。

カッコつけるとろくなことはない

でも、格好つけるマネージャーはこれがなかなかできない。

それはある種の「弱さ」を開示することと同義だからだ。

強いマネージャーを演じたい、というのは僕も同じだ。

全てが完璧で、憧れられるようなマネージャーを目指した時期もあった。

でもどう贔屓目に見ても、僕は凡庸で、どうしようもない人間で、明らかにリーダー向きではなかった

最初はそれを取り繕っていたけれど、だんだんと無理が生じてきた

ボロが出てきた

それでも、リーダーはかくあるべし、みたいな呪縛に囚われて、カッコつけたことばかり言っていた。

自分と言葉がどんどん乖離していった

結果として、チームも何となく上辺だけの繋がりになってしまっていた。

これは僕の大きな反省点だ。

ルートが違ってもいいのでは?

そこから自分の身の丈に合わないことをするのをやめた。

自分のキャラに合わないことを言うのをやめた。

どうしても職責上言わなければならない時には、前置きをした上で、それを言うようにした。

誰かが言うことをオウムのように言うことをやめて、そこに自分の考えを混ぜ込むようにした。

もちろんそれは組織的にはどうなのか、という考え方もあると思う。

マネージャーたるもの、本音と建前を上手く演じ分けるのが当然じゃないか、という意見もあると思う。

でも現在の僕が辿り着いた答えは、ルートが違ってもゴールが同じならそれでいいんじゃない? ということだ。

成果が出ているのであれば、そこへの行き方は違ってもいいんじゃない? ということだ。

「マネージャー」っぽく働かない

僕は「マネージャー」という概念に囚われ過ぎていた。

「マネージャーっぽく」仕事をしなければならないと思い過ぎていた。

でも、ハナから僕には向いていない仕事なのだ。

だったら、僕なりのやり方で、キャラクターに合った方法で、それをやればいい(というかできない)と開き直ってから、事態は大きく好転することになった。

そこには時代の流れも大きく影響しているとは思う。

建前よりも本音をみんな求めるようになっているから。

少なくとも僕は本音を話すことでマネージャーの仕事がやりやすくなった。

やりがいも感じられるようになった。

それではまた。

いい仕事をしましょう。


あとがき

今回の話は、それっぽく書くと、コミュニケーション・コストを下げるとチームのパフォーマンスは向上する、ということです。

僕は余計なものに煩わされることをできるだけ少なくすることで、チームの体力や精神力の無駄遣いは避けられるという考え方を基にチームマネジメントを行っています。

多くのマネージャーは「付加する」ことに重点を置きがちですが、「削減する」ことだけでチームのベースを上げることは可能です。

付け加えるよりも減らす方が簡単です。

無駄を排して、シンプルなチーム作りをしていきましょう。