お客さんが喜ぶことが一番

体制側の人間になる

管理職になると判断の優先順位が変わる人が多い。

本人に自覚があるかどうかは別として、これは事実であると思う。

端的に言うと、内部の論理を優先させがちになる。

社内政治とは言わないまでも、「そちら側」の意見を基に判断を行うようになる。

結果として、メンバーとマネージャーは往々にして意見を異にするようになる。

メンバーの意見を聞くような素振りは見せるものの、採用するのは内部の論理だ。

もともとは気概がある人であっても、パワーバランス「なあなあの論理」によって、自分でも無意識にそのように選択するようになっていく。

いつしかそんな状態が常態化する。

人間が萎れていく職場

メンバーからすると、新しい意見や斬新な方法論を思いついたとしても、悉く潰されるように感じるようになり、だんだんとを考えることすら馬鹿らしくなっていく。

せっかくのアイディアも、「あいつに言っても無駄」と諦められてしまい、くしゃくしゃに丸めてくずかごに投げ捨てられてしまう。

このような状態でチームが停滞しないはずはないのだけれど、「組織というのはそういうものだ(仕方がないだろう?)」とマネージャーもある種諦めているので、段々と活力が失われていく(マネージャーも当初は情熱があったとしても、組織にねじ伏せられ続けると、このような態度になってしまいがちだ)。

無力感がチームにも組織にも及んでいく。

明文化されている訳ではないのだけれど、それが「空気」になって、誰もがその空気を吸って仕事をするようになるので、そこにいる人間達はどんどん萎れていく

日々惰性で過ごすようになる。

繰り返しの毎日。

こなすだけの仕事。

知らず知らずのうちに、あなたもその片棒を担いでいないだろうか?

そして、それを変える方法はないのだろうか?

今日はそういうテーマだ。

キャッシュは顧客から生まれるという大原則

結論から言うと、「顧客が喜ぶこと」を判断基準にすること、がその解決方法だ。

もう少しマーケター的に言うと、「プロダクト・アウト」ではなくて「マーケット・イン」にするということだ。

自営業を営んでいる人ならいざ知らず、大半のサラリーマンはキャッシュがどこから生み出されているかを自覚していない。

キャッシュがなければ企業は死ぬ。

そしてそのキャッシュは顧客から来る。

だから顧客が喜ぶことをすべきだ。

以上。

これ以外に判断軸はない。

組織を守ることを自己目的化してはいけない

でも組織の中で働いていると、これがわからなくなる。

理屈としてはわかっているのだけれど、体感としてはわからなくなる。

そこにそれぞれの思惑が働いて、自己防衛本能自己保存機能が加えられて、「組織」というのはある種の人格を持ち始める。

「組織を守ること」が自己目的化していく。

その総体としての「組織」の論理は、内部で自己増殖して、異形化していく。

そしてその「組織」の論理を盲目的に守ろうとする、「官僚」達が増えていく。

「あれ? これってそもそもは何の為だったんだっけ?」ということを考えることはタブーになる。

前例踏襲を繰り返すだけになる。

これが無力感の正体だ。

「ための仕事」を排除するために

誤解がないように言うと、これは顧客の言うことが全て(お客様は神様です)ということではない。

購入権(選択権)は顧客にある、ということだ。

必要以上に媚びへつらう必要はない。

僕らがすべきなのは、お客さんに「刺さる」提案をし続けることだ。

そこからキャッシュを生じさせることだ。

それができれば(できていると実感できれば)、組織というのは活性化する。

「ための仕事」を排除できるようになる。

毒は自分にも回る

ミドルマネージャーは時に「組織の論理」を優先させなければならない。

でもそこで一旦立ち止まって考えるべきだ。

ここには顧客視点があるのだろうか? と。

それをそのままメンバーに下ろした時に、どのような反応があるのだろうか? と。

これを惰性のままやってしまうと、メンバーも無力感に覆われるのはもちろん、その毒は自分にも回ってくる

自分はただ上からの命令を伝達するだけのオウムだと思うようになる。

それは確実に自分の情熱を蝕んでいく。

誰かの役に立っているという幻想

もちろん立場によっては直接顧客と接することはないかもしれない。

特にマネージャーともなれば、その確率は減少するだろう。

でも、忘れてはいけないのは、その向こうには顧客がいるということだ。

受動的にニーズを受けるのではなく、能動的に面白いと思ってもらえるような提案をする。

顧客というのはB(企業)でもC(消費者)でもG(政府組織)でも何でも構わない。

とにかくその相手がノッてくるようなことを考えて判断をしていくべきだ。

それは巡り巡って自分の活力に繋がってくる。

自分が意味のある仕事をしているという実感に繋がってくる(それが幻想に過ぎなくても)。

そしてマネージャーがそのような判断軸を持っていることは、確実にメンバーに伝わっていく。

どんなに過酷な環境であっても、人間とは不思議なもので、誰かの役に立っているという感覚(幻想)があれば、何とかやっていけるものだ。

全て顧客優先というのが現実的でなければ、「三方よし」という昔からの商売哲学を思い起こすべきだ。

立場が変われば僕らも顧客なのだから。

それでは。

いい仕事をしましょう。


あとがき

お客様第一主義、というのはありふれたスローガンです。

特に日本においてはここに「お客様は神様です」のようなニュアンスが乗っかります。

でも僕が言っている意味合いはちょっと異なります。

僕は「キャッシュを生まない商売は商売とは呼べない。だから顧客が喜ぶことを起点として物事を考えるべきだ」という現実的なことを言っているだけです。

どんなに官僚たちが綺麗な絵空事を並べても、それがキャッシュを生まなければ商売自体がなくなってしまいます。

でもそれがわからない人が本当に多い。

立場を守る仕事をやめて、意味のある仕事をしていきましょう。

組織論

次の記事

オーガナイズする