オーガナイズする

自動的にチームがワークする仕組み

僕はサッカーが好きなので、しばしばサッカーで使われる言葉をマネジメントにも適用しようとする。

今回は「オーガナイズ」だ。

これは意訳すると、組織力を高めることでチームを円滑に回す、というような感じになる。

自動的にワークする仕組みがある、というか。

試合中のプレーはメンバーが決める

マネジメントを野球型サッカー型に分けるとするのなら、野球型はプレー中にもマネージャーの関与が大きくなるのに対し、サッカー型はプレー中はマネージャーはあまり関与できない、となるのかもしれない。

野球が1球ごとにプレーが止まるのに対して、サッカーはずっと動いている

ビジネスにおけるマネジメントはサッカー型に近いと僕は思っている。

朝会とか会議とかでマネージャーの方針を指示しても、日中全てのメンバーの行動を管理することはできないし、各々が自分達の好きなようにプレーをしているのが一般的だと思う。

もちろんセットプレーのような局面ではマネージャーの戦術みたいなものを活かせるかもしれないけれど、基本的にはプレーは止まらない

日々流れていく。

ある程度経験のあるメンバーがいれば、試合中でも修正は可能となるが、そうでない場合は、それが連綿と続いていくだけだ。

この「練度」みたいなものを上げて、高い水準を維持していく、これがマネジメントには求められる。

質の高いプレーを続ければ、自ずと勝率は上がる

もちろん、勝つこともあるし、負けることもある。

でも、質の高いプレーを続けられれば、自然と勝率は上がっていくものだ。

ヘラヘラ系のマネージャーの多くは、この「オーガナイズ」するという作業ができない

何となく日々をそのままに流しておく。

彼らは厳しいことを言えないので、規律が保てないのが原因なのかもしれないし、単純にそのような発想がないのかもしれない。

そもそもそれが問題だとすら思っていないような気もする。

大事なのは緊張と緩和だ。

ある程度メンバーに任せておいても自然と仕事が回っていくような環境を整えることだ。

「個」の強さも大事だけれど…

サッカーの監督に色々なタイプの人がいるように、マネジメントの方向性は様々で良いと思う。

でも大事なのは、そのチームにマネージャーの意思が反映されているか否かだ。

これはサッカーも同じで、マネージャーの意思が反映されたからといって、その試合に勝てる訳ではない。

でも1シーズンを通じて見ると、オーガナイズされているチームとそれ以外のチームの差は歴然だ。

これが2シーズン・3シーズンになればその違いはどんどん広がっていく。

サッカーもビジネスも、個人による「アドリブ」の要素が強いことは事実だ。

局面局面の「個人戦術」が勝敗を分ける。

レベルが高くなればなるほど、これは揺るぎのない事実となる。

「個」が強くないと、サッカーでもビジネスでも強いチームはできない。

でも、だからと言って、マネージャーの仕事がない訳ではないのだ。

どこかの国の代表チームのようになってしまってはいけない

ここがよく勘違いされるポイントでもあるのだけれど、「自由にやらせる」のはチームとしての戦術がベースにあった上でのものだ。

その「決まり事」がない中で、「デザイン」をしない中で、試合をしてしまってはどこかの国の代表チームのようになってしまう。

単純にその時のメンバーの相性やコンディションによって試合が左右されてしまう。

それではダメだ。

「個人戦術」「グループ戦術」「チーム戦術」の大枠・原則を決めておいて、それでも局面によっては自由を与える

これがオーガナイズされているチームだ。

自分に確固たる戦術がなかったり、そもそもメンバーを指導できないようなマネージャーはこの部分を「なあなあ」にしようとする。

「自由にやらせています」とのたまったりする。

それは違う。

土台があった上での自由なのだ。

規律がなければ勝率は保てない

僕のチームも「楽しそうでいいですね」と嫌味を言われることがあるけれど、この違いは外からは見えづらいものだ。

ある程度のマネージャー経験がないと(そして成果を出していないと)、たぶんこのギリギリのバランス感覚は伝わらない。

現在サッカーのトップレベルのチームでは規律があるチームが当たり前だ。

その規律の度合いはマネージャーの考え方(や個性)によって強弱はあるものの、それなしではシーズンを高い勝率で戦っていくことは不可能なのだ。

このイメージを持っているかどうかで、長い期間安定して成果を出せるかどうかが変わってくる。

長い長いリーグ戦を戦い抜く為に

「長い期間安定して」というのはとても重要なポイントだ。

僕らが戦っているのは「トーナメント戦」ではなく「リーグ戦」なのだ。

それも何シーズンもある「リーグ戦」なのだ。

現場に出してしまえばマネージャーにできることは限られているけれど、その裏側でできることはたくさんある。

ロッカールームの中で、たくさんの言葉を駆使して、チームの士気を上げる。

連敗が続いている時には思い切って戦い方を変えてみる。

フロントやスポンサーやマスコミからの攻撃から選手を守ってやる。

そのやり方は自由でいい。

マネージャーのキャラクターによって異なっていい。

でも「必ず」それをやらなくてはいいチームはできない。

それではまた。

いい仕事をしましょう。


あとがき

チームに最低限の決まり事を決めておくというのは、意思決定をメンバーに任せることに繋がります。

その決まり事がメンバーの判断軸となるからです。

よく「権限移譲」することがマネジメントの要諦であると言われますが、これをする為にはその裏側にあるリスクをマネージャーが負うという覚悟が必要で、どちらか一方だけを得ること(良いとこ取り)はできません。

でもその覚悟があれば、チームは自動的に回っていくようになります。

僕はリゾーム型組織のようにそれぞれがそれぞれ判断を下していく方が、時代の変化に適応しやすい(生物のように)と考えています(というか、僕は自分の無能性について自覚的であるだけなのかもしれません)。

指示待ち部下を作らないように、ある程度好き勝手やらせていきましょう。