安易な道に流れない

UnsplashKarsten Würthが撮影した写真

簡単な道。困難な道。

マネージャーは時に選択を迫られる。

前方には簡単(そう)な道困難(そう)な道があって、どちらに進むか決断を求められる場面がある。

ここで大事なのは、安易な道に流れない、ということである。

もちろん、実際に簡単である場合にはそちらに進んでも構わない。

リスクとリターンが合っていれば問題ない。

でも、一見簡単そうに見えて実は結構困難であるとか、当初は簡単であるけれどいずれ困難になる可能性が高いというような道が目の前に現れた際には、慎重に判断を行った方が良い。

一見遠回りになることが、チームビルディングには大事だったりもするのだ。

今日はそんな話をしていく。

願望込みの決断は危ない

マネージャーには自分を騙したくなる瞬間が訪れる。

第六感は「ヤバい」と警告を発しているのだけれど、目先の目標達成に目が眩み、「いや、大丈夫だ。大丈夫なはずだ」と自分に暗示をかけたくなる局面がある。

更に追い打ちをかけるように、上司からのプレッシャーがかかったりもする。

こうなると、冷静な判断は難しい。

自分の感覚を捨てて、「そうなって欲しい」という願望込みでの決断をしてしまいそうになる。

納得させるような論理展開を行い、「いや、こんなの簡単だから大丈夫だ」と自分に言い聞かせる。

マイナス面を軽視し、プラス面を過大評価する。

そうやってどんどんドツボに嵌っていくのだ。

直感は結構当たっている

これは感覚を信じるということとも関係している。

自分がマズいと思うこと、直感に反することは、大体間違っているのだ。

というか、しばらくは大丈夫そうに見えても、いずれ大丈夫じゃなくなるのである。

正規分布や統計の話

数多くの「判断」という仕事を行うマネージャーは、十分なエビデンスがない状況で決断をしなければならない局面によく直面する。

その際に信じられるのは、今までの経験から導かれる「勘」のようなものである。

この「勘」というのは、当てずっぽうとは大きく異なる概念である。

僕が考える「勘」というのは、経験値から導かれる蓋然性の高さを表現したもの、である。

標準偏差的な、2σ・3σ的な概念である。

そして自分が予測する範囲内にそれが着地するかどうか、というのは安易な道を通らない方が予想外の事態が生じづらいので、僕は安易な道に流れない方がいいとお勧めしているのである。

困難な道は少なくとも事前に困難だと想定されている

安易な道、というのは、起きうる可能性をあまり考慮していないのとほぼ同義である、と僕は考えている。

これに関連する言葉として「想定外」というものがある。

「想定外」というのは、その言葉通り「想定していない」訳で、結果としてその種の事態が生じると対処が困難(もしくは不可能)になるわけである。

でも、困難な道というのは、事前に困難であると想定しているから困難である訳なので、それに対する予防策なり対応策が練られていることが多いのである。

AプランとBプランとCプラン

僕は日本人の精神構造(思考形態)として、未来の(どちらかと言えば悪い)事態を想定することが苦手である、という考え方を持っている。

Aプランは念入りに考えるのだけれど、それがコケた時のBプランはあまり考えず、AプランもBプランもダメだった時のCプランについては想定もしていない、そんな状態が「普通」であると考えている。

そしてAプランの風向きが怪しくなってくると、「いや、元からこうなると予想していたんだ」というような記憶改造を行い、それも更にダメになってくると「神風が吹くはずだ!」神に祈り、それすらも絶望的になると、「あとはどうにでもなれ!」急に開き直ったりする

僕はこのような考え方が苦手である。

願望や祈りに頼る割合を減らす

それは何も全てのプランを綿密に練りなさい、ということではない。

想定をしておくことで、願望や祈りみたいなものに頼る割合を減らすことができるという利点があるからである。

何の想定も事前訓練もしていなかった安易な道を進みながら、道路に穴が開いたり、雷鳴がとどろいたりすると、「これは神(悪魔)の仕業だ!」なんて言うのは、ちょっと違う気がする。

単純に雨が降って地盤が緩んでいたり、台風が近づいていたり、何らかの要因が必ずあるし、それもある程度の確率で予測できるはずなのである。

でも、天気図はおろか、天気予報すら見ずに、「まあ今晴れているからだいじょぶっしょ!」ピクニック気分で仕事をしている人を見ると、かなり不安になる。

というか、少なくとも僕はそういうマネジメントをしたいとは思わない。

部下は長期的な判断を見ている

ギチギチに将来を決めつけるのは論外だけれど、ある程度困難な事態を想定しておいて、敢えてそちらの方向に進むというのはチームを良い方向に進める上でも重要なことだと思う。

そして当然ながら困難な道には困難なことがあり、短期的には痛みも伴うのである。

そこから目を背けずに、自分のこととして受け止めながら、敢えて困難な道を選べるマネージャーに、部下はついてくるのである。

思いのほか部下はマネージャーのことを見ているし、短期的な判断よりも長期的な判断を見ている。

そこであなたの真価が問われるのだ。

それではまた。

いい仕事をしましょう。


あとがき

自分のメンタルが崩れていると、安易な道に流れたくなります。

でも、そこでぐっと留まって、敢えて難しい道に進むことをお勧めします。

短期的には損したように思えることも、マネジメントにおいては得になることが多いような気がするからです。

それもかなりのお釣りが出るくらい。

もっと言うと、大事なのは損得ではなく、マネージャーの振る舞いそのものです。

恥ずかしくない(ダサくない)決断をしていきましょう。

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