緊張と緩和

UnsplashVictoria Troninaが撮影した写真

長期間高いレベルを保ち、かつ脱落者を出さない

そのチームが良いか悪いかを見極めるには、そこに漂っている空気に占める緊張と緩和の割合を見ればいい。

そんなことを思ったので、それを今回は言語化してみようと思う。

僕が考える良いチームというのは、何期も何期も高いレベルで成果を出し続けられ、かつ脱落者がいないチームのことを指す。

短期間で成果を出すことは簡単。

脱落者を生みながら成果を出すことも簡単。

でも、長期間高いレベルを維持し、脱落者を出さないのはなかなか難しい。

そしてその為には、適度な緊張感適度なリラックス感が必要となる。

それをどのように維持したらよいのか?

今日はそんなことを書いていく。

緊張を生むタイプ? 緩和を生むタイプ?

まず大切なことは、自分が緊張を生むタイプのマネージャーなのか、緩和を生むタイプのマネージャーなのかを理解することである。

自分がチームにいることによって、緊張と緩和にどのくらいの影響を及ぼすのか?

それを理解する。

もちろん、厳密に緊張73%・緩和27%なんてことがわかるはずもないので、ある程度の感覚の話で構わない(それでも足りなければ、チーム以外の周囲の人間に聞いてみてもよい)。

そして、緊張を与える割合が高い人の場合は、緩和をどのようにもたらすのか、緩和しがちな人の場合は、緊張をどのようにもたらすのか、それを考えていくのである。

ちなみに、僕は緊張を与える割合が高いマネージャーだと自認している。

なので、緩めのマネジメントを行っている。

そうやって緊張と緩和のバランスを保っているのだ。

時代との整合性

次に気を付けなければならないのは、そうやってできたチームの雰囲気が時代と適合的であるかどうかである。

これは分かり易く言えば、昭和と令和の違い、みたいなものである。

かつては、死語禁止・仕事中はピリピリとした雰囲気が望ましい、という感じだったと思うけれど、現代ではそれは通用しない。

マネージャーの「威厳」みたいなものは存在しなくなったし、もしかしたら会社への「忠誠心」みたいなものも失われてしまっている。

もっと言うなら、仕事に対する価値観(スタンス)自体が変わってきている。

「仕事人間」「仕事中心のライフスタイル」というのは、過去の遺物(もしかしたら嘲笑の対象)ですらある。

そんな中で、どのようにマネジメントを行っていくか(特に緊張感を維持していくか)?

そこに悩んでいるマネージャーも多いのではないだろうか?

すぐ病み、すぐ辞める時代で

コンプライアンス全盛の時代の中で厳しいことを言えなくなったり、昇給昇格をエサに釣ることもできなくなったりする中で、どのように仕事に対する緊張感を作り出すか?

ちょっとでも強く言えば辞めてしまう時代の中で、でも求められている水準までの能力を保持している訳でもない状況の中で、それなりの「練度」を保つにはどうしたらいいのか?

僕ももちろん模索している。

悩み続けている。

でも、最近思うのは、やっぱりいい仕事をするしかない(することを目指すしかない)のではないか、ということである。

祈りのようなもの

これは「いい仕事をしようぜ!」というような暑苦しいものではない。

表現が難しいのだけれど、淡々といい仕事をし続けた結果、周囲がそれに感化され、自分もいい仕事をしたいなと思えるような輪が静かに広がっていく、そんなイメージである。

響かなければそれで構わない。

でも少なくとも、自分自身はいい仕事をすることを諦めてはいけないように思うのだ。

矢印の方向性

そしてそれは緊張感の与え方に対するヒントにもなり得ると僕は思っている。

昭和型マネジメントが「家父長的威圧」に支えられていたとするなら、矢印が「こちら側から向こう側」に向いていたとするなら、現代はそうではなく、職人的に黙々と仕事を続けることで「向こう側からこちら側」に矢印が向いてくることを待つ、そのようなイメージを持っている。

「畏敬の念」というと偉そうだけれど、誠実に働いている人への敬意というか、そのようなものをベースとすることが、適度な緊張感を生むのではないか、と僕は考えている。

会社の評価であるとか、地位とか名声とか、もちろんそれが重要でないとは言わない。

でも、もう少し上の概念というか、崇高とまでは言えなくても、自分自身の声にきちんと向き合いながら仕事をする、それで結果も出す、そういう姿勢が大事であるように僕は考えている。

英語で言うならインテグリティ(integrity)のようなもの。

日本語で言うならお天道様が見ているからみたいな感じ(ちょっとウェットで好きではないが…)。

それが緊張感を生むのではないかと思っている。

強制する訳ではなく

ここにおける大事な考え方として、「強制」とか「使役」みたいなものは必要ない、ということである。

緊張感を「与える」のではなく、緊張感が「生まれる」ようなチームを作ること。

それぞれのメンバーが自分の仕事に対して真摯に向き合うこと、その累積としてチームに適切な緊張感が生まれること。

それが僕が考える良いチームの条件である。

そしてその為には、まずはマネージャーが真摯に仕事に向き合うことが大切なのだ。

偉そうなことを言った。

でも、本当にそう思うのである。

それではまた。

いい仕事をしましょう。

あとがき

仕事とは何か?

カネを稼ぐ以上のものを求めるのは、青臭いことなのか?

僕に答えがある訳ではありません。

でも、僕が思うのは、人間には痕跡を残したいという欲望が備わっていて、その欲を満たす為の1つの方法として、仕事というのはそう悪いものではないということです。

権威や権力、金や名誉や地位、将来への希望や展望、そういったものがアメとして機能しなくなった時代に、チームに適切な緊張感を生むことはとても難しいことです。

ただ、そうはいっても不可能ではない。

その1つの方法として、なぜ自分はその仕事をしているのか(偶然であれ必然であれ)、ということを問うことはアリなのではないか、と考えています。

いい仕事を目指して、それが広がることを願って、ひたむきに取り組んでいきましょう。