スポットライトを求めない

UnsplashVidar Nordli-Mathisenが撮影した写真

注目されたい欲

自分が世界の中心。

物語の主人公。

多かれ少なかれ、生きるというのはそういうことなのかもしれない。

もちろん仕事だって例外ではない。

注目されたいし、称賛されたい。

それはいくつになったって変わらない。

でも、ことマネジメントという仕事においては、この「注目されたい欲」というのは抑えた方がいい、と僕は思っている。

と言っても、欲なので自然と湧いてしまうからそれはやむを得ないとして、できるだけ表に出さないように隠しておいた方がいい。

その方が、チームは円滑に回る。

そして、成果だって出る。

今日はそんな話をしていく。

もっとオレを見てくれ!

マネージャーになって、僕自身つまらなくなったと感じるのは、自分が称賛される場面が殆ど訪れないということである。

以前は営業担当者としてそれなりの実績を上げていたこともあり、折に触れて表彰されたり、フィーチャーされたりしていたものである。

それがマネージャーになってぱったりとなくなってしまった。

主役はチームであり、部下である。

そんなことは頭ではわかっている。

でも、いざ自分にスポットライトが当たらないと、それもそんな日々がずっと続くと、だんだんとフラストレーションが溜まってくる。

「もっとオレを見てくれ!」という思いが溢れ出してしまう。

お前のものはオレのもの。オレのものはオレのもの。

皆さんの周りにも、自分の手柄だけでなく部下の手柄まで自分の手柄であると吹聴している人はたくさんいると思う。

それはその人が目立ちたがり屋であるとか、出世欲に溺れているとか、そういうことだけではなく(もちろんそれもあるだろうが)、自分が注目されないことへの寂しさがあるのだと思う。

かく言う僕だって、「いや、もう少し褒めてくれたっていいのにな…」と思う場面はたくさんあるし。

でも、そんな機会は訪れないし、期待もしてはいけない。

もちろん、ジャイアニズムを発揮して、部下の手柄を横取りするなんて以ての外である。

望ましい態度とかそういう話じゃなく

静かに淡々と自分の仕事をやっていく。

気づく人がいればありがたいと感謝するくらいの気持ちを持つ。

それがマネジメントを志す人間には必要な心の持ちようである。

これはその方が慎ましいとか、望ましい態度であるとか、そういう話ではない。

マネージャーとしての力を発揮したり、それによる大きな成果を得たいと思うなら、この方法を取ることが最善であるからである。

回り道的な話にはなってしまうが、本当にマネージャーとしての称賛を受けたいのであれば、自分からスポットライトを求めないことが重要なのだ。

チームの平均体温を高く保つ為に

それはなぜか?

部下の熱を奪うからである。

部下の熱が下がれば、チームの体温も下がる。

チーム単位の成果を求められるマネジメントという仕事において、チームの平均体温というのは重要な概念だと僕は思っている。

それが一定以上であれば、チームには熱が生まれ、その熱が波及し、個人個人の成果を足し合わせたものではなく、掛け算のような成果(もっと言えば等比級数的な成果)が生まれるようになる。

でも、そのような状況というのは狙って作れるものではない。

様々な要素が絡み合い、適切な培地が整った時に、そのような状態(ある種のゾーンと言ってもいい)が生まれるのだ。

そして長年マネジメントをやってきた僕の経験から言えるのは、この「いい状態」をできるだけ多く再現する為には、チームを冷めさせないことが重要である、ということである。

マネージャーの養分だと部下に思われたらおしまい

想像して頂ければわかると思うけれど、チームを冷めさせる要因は様々ある。

みなさんだってそうだろう。

会社のバカみたいな指示や、上司の無理解、やっている仕事のレベル感など、冷めてしまう事態というのは容易に起こり得る。

そのような原因の1つにマネージャーの「我欲」も含まれる。

自分ではそんなつもりはなくても、「オレに注目して欲しい!」というオーラは醸し出されてしまうもので、それを嗅ぎ取った部下たちの熱量は確実に下がってしまう。

「結局自分たちはマネージャーの養分に過ぎないのか」

そこまで強く思うことはなくても、多かれ少なかれ寂しい気持ちにはなってしまう。

そのような状況を避ける為には、自分が思っている以上に「目立ちにいかない」ことが重要となるのである。

自己肯定感を

もちろんマネージャーだって聖人君子ではない。

煩悩だってたくさんある。

でも、繰り返すが、本当にマネージャーとして大成したいのであれば、スポットライトを浴びに行かずとも光が照らされる感覚というのは身に付けた方がいい。

というか、自分自身が照らされていると思えればいいのだ。

もっと言えば、光となる(光源となる)ことも重要である。

僕たちは部下を照らし、その反射光みたいなもので十分。

誰かからの称賛を求めに行かなくても、自分自身がその状態に対して満足できていればそれで十分。

そのような態度、self-esteem(自己肯定感)みたいなものが自然と備われば、マネジメントという仕事は何十倍も面白くなってくる。

自己満に過ぎないのかもしれないけど

評価軸のスライド。

ちょっと間違えれば、ただの自己満足に過ぎないのかもしれないこの感覚を身に付けた時、マネージャーとしてのレベルは少しだけ上がっているはずだ。

それではまた。

いい仕事をしましょう。

あとがき

思いもかけない人からの、予想外のタイミングの称賛と感謝。

僕はマネージャーになってから、(幸運にも)このような場面に何度か立ち会うことができました。

それは狙ったものじゃなくて、想像していたものじゃなくて、でも確実に僕宛のもので。

それを思い返すことで、僕は自分がマネージャーになったことの意味を噛みしめ、今日も辛いながらも仕事を続けることができています。

光を求めなくても、勝手に光は射す。

そんな偶然を願いながら、愚直に働いていきましょう。