捨てられない人へ

UnsplashGary Chanが撮影した写真

そりゃ生産性なんて上がるはずがない

「マネジメントとは削減することだ」

このような趣旨のことをもう何万回も書いているのに、捨てることができないマネージャーが減る兆しは全く見えてこない。

もちろん僕のブログの影響力なんて0なので、それでどうにかなるとは全く思ってはいない。

ただ、これだけ生産性の向上働き方改革等々が叫ばれているのに、マネジメントの手法は全然変わらないことにウンザリしている。

更に悪いことに、むしろ増やすことをマネジメントであると勘違いしている人がたくさんいて、「そりゃ日本の生産性なんて上がるはずないよな」と何度も思うことになる訳だ。

定期的に書いているこの話題。

今回もその焼き直しである。

それでは始めていこう。

戦略への軽視

何年もマネージャーをやってきて、それも最近になって更に強く感じるのは、物事の本質を捉えることができる人は想像以上に少ない、ということである。

もう少し正確に書くなら、捉えようともしていない人がたくさんいて、そのような状況の中で戦略を構築している、という厳しい現実がある。

これはプレイングマネージャー論にも繋がってくるのだけれど、多くのマネージャーやマネージャーに期待する人達は、この「本質を捉え、的確な戦略を打つ」という仕事を物凄く軽視しているように僕には感じられる。

それがなぜなのかはわからない。

ただ、圧倒的にプレイの方へ関心が向かっているように思えるのだ。

滅茶苦茶な医者たち

例えば、チームが病気にかかっているとする。

医者であるあなたは、その病気が何なのか、病巣はどこにあるのかを見つけ、適切な処置を施し、チームを快方に向かわせるのが仕事であるはずだ。

でも、僕から見える多くのマネージャーは検査もろくにせず、テキトーな診断を下し、むしろ余計な手術なんかもやってしまっている、その結果、患者(チーム)の体力は落ち、全然快復しない、そんな感じがするのだ。

そして、変なサプリメントや、余計な処方薬なんかをテンコ盛りで与えていたりもする。

僕が思うのは、チームマネジメントにおいて適切な手術(大きな手術)は1回やればよくて、その後は経過観察し、自然治癒に任せる、というスタンスが大事である、ということだ。

もちろん、予後において出血があったり、痛みがあったりすれば適切な処理が必要になるかもしれないけれど、それだってそこまで丁寧にやる必要はない。

むしろ少し放っておくというか、事態の経過を見守る、というイメージが大事なのである。

そして自然治癒力を高めるには、余計なことをしないということも非常に大切なことである。

安静にしておく、チーム本来の力を発揮させる為に睡眠をとらせる、そんな風に無駄な負荷をかけないことを意識する。

捨てた部分が、捨てる前よりも良くなることさえある

これはある種チーム(部下)を信じる、ということにも繋がってくる。

あれもこれもとやらせない、ということは、捨てる分野が存在するということと同義で、捨てる分野があれば部下は怠けるものだ、と多くのマネージャー達は思っているようだけれど、そんなことはない。

これがマネジメントの不思議なところで、捨てた分野というのが完全に捨てされられる訳ではないのである。

奇妙な表現であるが、捨てたことによって全体が底上げされ、捨てた分野ですらも捨てる前より状況が良くなる、ということはマネジメントの世界においてはよくあることなのだ。

これは実際に(どっぷりと)マネジメントをやっていない人にはわからないかもしれない。

やれと言われてもやらない。やらなくていいと言われたらやる。

何かを捨てる、ということはそれを全くやらなくなる、ということを必ずしも意味しない。

捨てることによってやるべきことが明確になり、それ以外の仕事に対しても余力が生まれるようになるのだ。

不思議なことではあるが、「全部やりなさい!」と言うとどれもできないのに、「これだけやりなさい!」と言うとやらなくてもいいと言ったことをやってきたりするのが部下という生き物である。

この辺がマネジメントの面白いところでもある。

たぶん人間というのは、何らかの余白や遊びを好む生き物で、そのようにやらなくていいと言った物事をやりたくなってしまう性質を持っているのだ。

遊びみたいな感覚で咥えてきた仕事が、後に大化けしたりもすることもある。

でも、これは捨てないと生まれない仕事でもある。

余白が余裕を生む

僕が常々「マネジメントとは削減することだ」と言っているのは、戦略を絞るという意味もあるけれど、余白を生むという意味もあるからである。

何かに焦点を絞ると、視野外のものは余白となる。

それは仕事ではあるものの、マネージャーはやらなくていいと言っているものなので、部下達からすれば、遊びみたいな感覚が生まれる。

そしてそのようなカジュアルさが、顧客には刺さったりもするのである。

「全部やれ!=マネジメント」ではない

「全部やれ!」と言って、それができる部下ばかりなのであれば、マネージャーはいらない。

マネージャーがいるのは、「全部やれ!」と言ってもできない部下がいるからである。

それを忘れ、「全部やれ!」と言うこと=マネジメントであると勘違いしてはいけないのだ。

勇気を持って、削減していきましょう。

それではまた。

いい仕事をしましょう。

あとがき

捨てることは勇気がいることです。

捨てたことによって責任の所在が明確になってしまうから。

でも、それをやらなければ、成果が上がるようにはなりません。

多くの日本企業の生産性が上がらないのは、捨てていないからです。

どんどん捨てていきましょう。