話は伝わらないのがデフォルト

Photo by Mark Paton on Unsplash

話が伝わらない

部下の人数が増えたことが影響しているのかもしれないけれど、ここまで話が伝わらないものなのかと愕然とすることがある。

大体の場合、庶務連絡みたいな内容の話は朝礼の時にメンバーの前で立ってしているのだけれど、これがすっと伝わらない。

同じ言葉と同じ口調で言っているのに、受け手によってその解釈はそれぞれに異なる

伝言ゲームにおいて、何人もの人を経て内容が変化していく、というのならまだ理解できるけれど、そうではないのだ。

話者は僕1人で、受け手もメンバー1人(ずつ)。

内容の齟齬なんて起きるはずがない。

でも起きる。

今日はそんな話をしていく。

話すのは確かに上手ではないけれど…

大前提として、そもそも僕の話し方が下手、ということがあるのかもしれない。

上手な話者であれば、言いたいことをスパッと切れ味良く言えて、それが同じ容量で伝わるのかもしれない。

でも、僕の場合は、空気を経て伝わるまでの間に、内容が変化したり、鮮度が劣化したりしてしまうようだ。

ただ、1つ釈明をさせて貰えるとするなら、これは今までのチームにおいてはあまりなかった経験でもある。

それがなぜなのかを思い起こすと、「平場」での補正が可能であったからだ、ということに行き着く。

もう少し詳しく書いていく。

人数が増えて、補正が難しくなった

以前僕が所属していたチームにおいては、メンバーの数は10人前後で、朝礼の後に「何となくうまく伝わっていないな」と感じた時には、デスクのところで「そうじゃなくて、あれはこういう意味なんだよ」ということを伝えることができた。

平場での補正、というのはそういう意味だ。

でも、今僕が所属しているチームはもう少し大きくて(20人前後)、デスクの近くのメンバーには補正可能なのだけれど、遠くに座っている人には上手く伝わらない

そして上手く伝わっていない人同士が話すことで、更にこんがらがってしまう。

そんな印象だ。

更に言うと、その伝える話というのは日々生じてくる訳で、こちらとしても1つ1つを補正していくというのは手間がかかるものだ。

もちろん話が聞こえてきた時に、大きな声で修正をかける場合もある。

ただ、そこまでしなくてもいいかな、と思うような重要度の内容もあるので、判断が難しいし、上記したように、いちいちそれを補正するのがダルいのも事実だ。

一連のラリーを経ないと伝わらない

そこで僕が現在している方法は、1on1ミーティングで補正をかける、というものだ。

これは文章で伝えるのが難しいのだけれど、仕事の微妙なニュアンスの話というのは、ある程度の会話のラリーがなければ上手く伝わらないものだ、と僕は思っている。

もちろん、そのラリーをしたとしても伝わらない人も存在しているのだけれど、大抵の人はこのラリーという過程を経ないと納得してもらえない。

大事なのは、相手が自分の言葉でこちらの意図を言語化する行為、だ。

「それってこういう意味ですか?」「そうです」というやり取りをすること。

これが意思を伝えるのには重要である。

日本語特有の限界もある

当たり前のこと?

確かに僕もそう思う。

でも、マネジメントをしていて思うのは、こちらが思うよりも話を浸透させるのには手間と時間がかかる、ということだ。

不遜な言い方をすると、メンバー全員が自分であれば、話なんてものは瞬時に伝わる。

それは能力が同じであるということも関係しているけれど、思考形態や使用言語・話法が一緒であることが大きいからだ。

同じ日本語話者であったとしても、常用している言葉は違うし、その言い回しみたいなものも異なる。

そして日本語という言語は、その微妙なニュアンス(余韻)を残す言語でもある。

行間や空気感、みたいなものも「言葉そのもの」と同等、いやそれ以上に重要だったりする。

それを伝えるのはなかなか難しい。

言葉を伝えるだけでは納得してもらうことはできない

人によっては、同じことを何回も言うことでこれを超克しようとする人もいるだろう。

庶務事項であれば、僕もこの方法で構わないと思う。

でも、もう少し深い話、ニュアンスが大事な話、というのは、朝礼や会議の場だけでは伝えられない。

もちろん言葉は伝わるだろう。

「マネージャーはそう思っているのですね」ということは理解してもらえるだろう。

でも、腹落ちさせることはできない。

大事なのは納得感なのだ。

以前にも書いたことであるが、納得感や信頼感を醸成する為には、相手がどのような言語運用をするのか、そして非言語的コミュニケーションをするのかを知っておかなければならない。

それには相応の時間がかかる。

それを僕は1on1の時間で埋めようとしている。

音声と画像以外のやり取りが重要

リモートワークで明らかになったのは、僕たち人間はアナログな動物に過ぎない、という皮肉な事実であった。

大事な話ほど面と向かって話した方が良いと自然に思ってしまうこと。

僕たちはきっとコミュニケーションにおいて、音声と画像以外にやり取りをしているものがたくさんあるのだ。

「1対多」のコミュニケーションは、どうしても言語的なコミュニケーションに偏ってしまう。

相手の表情や仕草に合わせて、言いなおしたり、詳細に話したり、割愛したり、することが難しい。

それを日々補正し続けるしかないのだ。

それではまた。

いい仕事をしましょう。


あとがき

「この前課長が言っていたことがようやく理解できましたよ」と言われて、ハッとすることがたまにあります。

僕のチームには、様々な年齢層がいて、様々な背景(キャリア)を持った人たちがいます。

その人達に一発で何かを伝えるのは本当に難しい。

もちろん適切なチューニングをしながらこれを試みてはいるのですが、全員にぴったりと合う周波数はこの人数になってくるとどうやらないようです。

それを僕は1on1で地道に埋めています。

参考になれば幸いです。