習慣の力を借りる

UnsplashBram Van Oostが撮影した写真

人間は習慣の生き物

以前何気なく書いた言葉が今日のテーマになっている。

それは「習慣の力を借りる」ということである。

人間は習慣を重んじる。

人間の行動は習慣に左右される。

それをマネジメントにも取り入れたらいい。

今日はそんな話だ。

慣性の法則

往々にして、習慣というのはネガティブな要素としてマネジメントにおいては捉えられる。

それは惰性という意味に近いからである。

何らかの問題がチームにあるとして、それをマネージャーが一生懸命変えようとしているのに、メンバーは昨日までの習慣に従って、行動を変えようとしない。

それを僕は「慣性の法則」と呼んだりもする。

どんなに頭では良いと思っていても、体は正直なもので、異質なもの、慣れていないものにはただ慣れていないという理由だけで拒否反応を示す、というのが人間の本性である。

皆さんもマネジメントという仕事をやっていれば、この慣性の法則に基づく抵抗に何度も直面したことであろう。

それくらい、習慣の力は強いのである。

習慣の力をマネジメントに活かしたらどうなるのか?

特にある程度の年齢以上の部下たちは、この日々の行動の変化に強い抵抗を示す。

今まで慣れ親しんだ行動をなぜ変えなければならないのか?

「抵抗勢力」とも言えるくらい非常にネガティブな反応、もっと言えば、攻撃的にすらなったりもするくらいである。

では、それくらい強い習慣の力をマネジメントに活かしたらどうなるのだろうか、というのが今日の話である。

負け癖。勝ち癖。

このテーマは以前「小さな勝利を積み重ねる」という記事の中で、その1例として書いたことでもある。

負け癖が付いているチームを変える為には、その負けているという習慣をやめさせ、勝つという習慣をつけさせるしかない。

その為には、小さな勝つという習慣を続け、勝ち癖にするしかない。

そして一旦勝ち癖となれば、それが習慣化し、継続できるようになる。

そのような趣旨のことを書いた。

習慣の構築=戦略

これはマネジメントにおける他の部分にも当てはめることができる。

今風に言うなら「仕組み化」ということになるだろうし、僕の表現にするなら「自動化」ということになる。

要は部下たちが意識せずとも、自然にそのように行動するような枠組みを作ってしまえば、あとはその習慣に従って、チームは自動的に動いていくのである。

そしてマネージャーの仕事というのは、この「習慣の構築」である。

それを「戦略」と呼んだりもする。

無意識を活用する

やりたいことがあって、それを部下にやらせる為にはどのようなルートを取るのが望ましいか?

最短距離を進む、というのは1つの答えではあるけれど、それが以前とあまりにも違う行動であると、上記したように大きな反発が生じ、一向に進まなくなってしまったりもする。

一方、一見回り道に見えるようなやり方であったとしても、抵抗感が少なければ、部下は自然にそれを取り入れ、いつしか習慣化し、自分のやりたいことが結果として実現できたりもするのである。

この辺の「無意識の活用」みたいなものも、マネジメントにおいては重要な概念である。

言い方は悪いが、無害なフリをしてスッと忍び込ませるというか。

意識下に侵入させる、というか。

気づけばそれを無意識にやってしまっている(習慣化してしまっている)という状態まで持っていくのがマネージャーの腕の見せ所である。

下手にやると「小言ばかりのうるさいおじさん」になってしまうので、そうではなく、悟られないように習慣化させるのがミソである。

マネージャーはヒマそうでいいし、ヒマそうであるべきですらある

逆に言えば、これさえできればマネージャーはヒマとなる。

僕はマネージャーはヒマそうでいいとずっと言い続けているけれど、これはこのようなイメージから来るものである。

赴任してすぐの時には、このような「体制構築」にそれなりに体力がかかるのだけれど、一旦軌道に乗ってしまえば、あとは自動的に動いていくので、特にマネージャーがやることはなくなる。

結果、マネージャーはいらなくなる(マネージャー不要論)。

それが僕の理想のマネジメントである。

オートパイロットモード

そういう意味では、マネージャーがあくせく動いているチームというのは、この仕組み化・習慣化が上手にできていないとも言える。

自動車におけるオートパイロットのように、勝手にアクセルやブレーキを調節してくれるようなチームを構築すること。

そちらの方に注力するのが、マネージャーの仕事なのである。

成果が出始めればこちらもの

ただ、上記したように、その自動化まで至る過程においては、それなりの反発がある。

その反発はチーム内から生じる時も、自分の直属の上司から生じる時も、もっと上から(組織から)生じる時もある。

それを適切にいなしながら、自分が描く理想のチームに近づけていくことが大事なのである。

もう少し現実的なことを言うなら、それまでの時間を稼げるように、そして周囲からの信認を得られるように、わかり易い成果(手柄)を先に挙げておくことも重要だ。

「何か気に食わないけれど、結果も出してきているし、従ってみるか(任せてみるか)」

そう思わせることができれば、習慣の力を借りることができるようになる。

一旦転がり始めれば、あとはそのままにしておけばいいのである。

それではまた。

いい仕事をしましょう。

あとがき

マニュアル車オートマ車(と自動運転車)。

マネジメントもこのような分け方ができるような気がしています。

多くのマネージャーはマニュアル車に乗ることが、自分のテクニックを見せられる最善の方法だと思っているような気がしています。

オートマ車は邪道というか。

でも、オートマ車の方が圧倒的に楽ですし、実際に普及率も圧倒的に上です(オートマ:98%、マニュアル:2%)。

もちろん、マニュアル車の運転の楽しさはオートマ車の比ではありません。

ただあまりにもマニュアル車にこだわり過ぎなのでは?

そう思うことがあります。

上手に自動化して(習慣の力を借りて)いきましょう。