スローガンを言わない
管理職は言わなくてもいいことを言いがちだ
言わなくてもいいことをわざわざ言う人がいる。
もちろん管理職も例外ではない。
というか、むしろ管理職には多いような気がする。
それはなぜなのだろうと考えてみると、今回のタイトルであるスローガンを言っているからなのではないか、ということに辿り着いたので、今回はそんな話をしてみようと思う。
標語大好きカントリー
僕は標語が嫌いだ。
五・七・五になっていたら猶更嫌だ。
他の国ではどうなのかは知らないけれど、日本には標語的なものが非常に多いような気がしている。
学生時代も社会人になってからも、周りには標語が溢れている。
下手をすると、唱和させられたりする。
そこには当たり前のことが書かれていて、誰もがそれを当たり前だと認識していて、でもそれを「当たり前だ!」と指摘することはタブーであるような無為な時間。
欺瞞に溢れた無益な時間。
いや、こんなことを思っている僕の方が変なのかもしれない。
きっとあの標語によって「今日も一日頑張ろう!」とやる気に燃えて頑張る人の方が圧倒的に多いのだろう。
だからこそ、これだけ標語が蔓延っているのだろう。
「諦めな 標語は周りに 溢れてる」
「わかってる でも管理職には 不要だよ」
空疎な言葉はチームを空疎にする
そう、今日のテーマはスローガンを言わない、ということだった。
もう少しで危うく標語の沼に溺れてしまうところだった。
クソつまらない冗談はさておき、真面目なことを言うと、マネージャーの使う言葉の種類によって、チーム内で使われる言葉の種類が決まってくる、と僕は思っている。
マネージャーが率直な物言いをしていれば、チームも率直な物言いを、上っ面な言葉を使っていれば、チームも上っ面な言葉を使うようになる。
だからこそ自分の言う言葉には気を付けた方がいい。
僕の分け方で言うと、スローガンは後者に属している言葉であって、できるだけ避けたい種類のものだ。
もちろんスローガンに心から共感していて、マネージャー自身も納得の上でそれを使うのであれば、何の問題もない(まあそんな奴が高いパフォーマンスを出せるとは思えないが…)。
でも本当はそうは思ってもいないのに、「そのように言わなければならないから」という理由で使うのはやめたほうがいい。
「それっぽいから」という安易な考えで口にするのは慎んだ方がいい。
他の言葉も全て空疎に響いてしまうから。
誰もマネージャーの言う言葉を信頼してくれなくなってしまうから。
当たり前のことを言わなければならないシチュエーションは確かにあるけれど…
管理職という役責上、「当たり前の言葉をなぞらなければならない局面」というのは確かにある。
どの人から見ても、その通りだ、と思える言葉を使わなければならない場面というのは職位が上がれば上がるほど、高い頻度で訪れてくる。
ただ、その時にも「そういう言葉遣いをしなくてはならないからしているのだ」ということは示した方がいいと僕は思っている。
少なくとも「本心からそう言っているのではないか」と疑われるような言い方はしない方が良い。
演技が下手である方が望ましいのだ。
なぜか?
それはチーム作りに大きく影響してくるからだ。
毒にも薬にもならない言葉は言わない
先程も言ったように、チーム内の言葉遣いというのはマネージャーの影響を大きく受ける。
残念ながらスローガン的な言葉というのはチーム内の体温を上げることはない。
どんなに熱っぽい言い方をしても、それはスローガンに過ぎないのだ。
「顧客利益を最大化しよう!」とか「我々はチームだ!」とか「全てはお客様満足の為に!」とか、そういう毒にも薬にもならない言葉というのはできるだけ使わないようにする。
当たり障りのない言葉は言わないようにする。
実際、そういう言葉を使わなければならない局面が訪れたら、黙っていればいい。
それだけで、チームのメンバーはマネージャーを信頼してくれるようになる。
スローガン絶叫大会
当たり前のことは言うまでもない。
これが大半のマネージャーにはわからないようだ。
顧客利益の最大化?
そんなものは当たり前の話だろう?
言うまでもないことだろう?
それを繰り返すことはマネージャーの仕事ではない。
でも、本当にこの種のマネージャーはとても多い。
特にある一定以上の職位の人達が集まっている場(会議等)には、こういう人たちが本当に多い。
口々に当たり前のことを、さも「今とても重要なことに気づきました!」みたいなトーンで口々に言うから本当にうんざりする。
たぶん彼らは本心からそのように言っているのだろう。
僕からしたら時間のムダ。
そんなことを絶叫している暇があるのであれば、1分でも多く顧客と話している方がマシ。
僕はそんな風に思っている。
だから僕は嫌われるのだろう。
でもだからこそ僕は高いパフォーマンスを上げられるのだろう。
仕事の欺瞞性を増幅させないために
マネジメントの本質は、メンバーのメンタルをコントロールすることだと僕は思っている。
コントロールと言うと操っているというか、操作しているみたいな感じがするなら、メンタルコンディションをを良い状態に保つことと言い換えてもいい。
仕事というものはそもそもつまらないものであるという前提に立って、様々な理由から人は働いている(働かなければならない)ということをきちんと認識した上で、せめてマネージャーがそのつまらなさを助長することがないようにすること。
仕事の欺瞞性を増幅させないこと。
そこに少しでも意味や有用性・有益感を灯させること。
僕はそんなことを考えて、スローガンを言わないようにしている。
それではまた。
いい仕事をしましょう。
あとがき
僕はマネジメントにおいて、言葉、というものをとても重要視しています。
繰り返し書いていることですが、「言行一致」があってこそ、マネジメントには力が宿ります。
しかしながら、全ての行動を言葉に一致させるのは難易度が高い。
だから、そこで使われる言葉の種類を自分である程度(行動し易いように)コントロール必要があるのです。
言霊、とは言わないまでも、言葉には心で思っている「重み」みたいなものが乗らないと、相手の奥深くまで届くことはありません。
もちろん全ての言葉に「重み」を乗せることは現実的ではないのですが、少なくとも「軽い」言葉を減らすことはできるはずです。
「軽い」言葉の筆頭が、スローガン(お題目)です。
言葉を上滑りさせないように意識するだけで、チームの雰囲気は大きく変わります。
意味のある言葉を使っていきましょう。