お花畑の住人たち
痛みから逃げるとお花畑になってしまう
理想と現実。
その2つに分けるなら、僕は現実主義者であると自認している。
もちろん理想は持っている。
それも結構崇高な。
でも、マネジメントという仕事に関して言うと、理想を追うのはかなり困難であり、どうしても現実的なアプローチを取らざるを得ない、というのが実情であると思っている。
もう少し正確に言うなら、本来的には理想を追求した先に大いなる成果があるのであるが、それができるメンバーは殆どいない為、分かり易い現実的な方法を取らなくてはならない、ということになるのかもしれない。
そして、現実的なアプローチというのは、痛みを伴うものでもある。
さらに言えば、痛みを伴うものは避けたい、というのが人間の性だ。
でも、ここから逃げてしまうと、戦略や戦術というものは急にお花畑みたいな話(空論)に堕してしまう。
今日はそうならない為の手段について書いていく。
プラスを増やす理想主義。マイナスを減らす現実主義。
プラスとマイナス。
アプローチの方法として、理想主義を「プラスを増やすもの」、現実主義を「マイナスを減らすもの」、だと僕は捉えている。
これはどちらが優れているとか、劣っているとか、そういう話ではない。
その局面局面において使い分けて然るべきものである。
また、価値観や好みの問題でもあるとすら思う。
結局のところ、大事なのはチームの状態を改善することであって、どちらも十分にワークするならそれで構わない、というのが議論の前提である。
その中で、「どちらの方が、チームが上手くいっていない状態、もしくはメンバーのレベルが低い場合、に効果的なのか?」ということを考えた時に、僕は現実的なアプローチが効果的であると考えている。
その方が費用対効果が高い(レバレッジがかかる)というか。
理想は誰も傷つけないが、何も生み出さない。
でも、どうやら多くのマネージャーはこの種の現実的なアプローチを取りたがらず、理想主義的なアプローチを取ることが多いようである。
それはなぜか?
現実的なアプローチは、痛みを伴うからである。
そして、その痛みを生じさせた要因が自分にある(自分だと思われる)、ことに向き合えないからである。
もっと平たい言葉で言うなら、「部下に嫌われたくない」のだ。
だから、理想を追いたがる。
理想は誰も傷つけない。
でも、何も生み出すことはない。
僕はそう考えている。
今なのか?
「正しい姿」「あるべき姿」「理想像」の類。
理想主義的なアプローチを取るマネージャーは、事あるごとにその話を展開する。
内容については僕も共感できることばかりである。
でも、「今それなのか?」とは思うのだ。
理想主義的なアプローチを取ることは否定しないけれど、それをやるには段階があって、ある程度チームが成熟してきた時にやるべきなのではないか、と僕は思うのである。
それがまだまだチームが途上である時、もしくは全然うまく行っていない時に、その打開策として理想的なアプローチを取ろうとするのは、あまり良い打ち手とは言えない。
何というか、問題が覆い隠されてしまうからである。
マネージャーが批判を恐れて現実的なアプローチを取っているなら末期
もちろん、人間は現実だけでは生きていけない。
適度な理想は不可欠ではある。
でも、そのバランスというか、加減というか、はチームの段階によって変えるべきなのだ。
そして、現実的なアプローチを取れない理由として、「マネージャーが批判を恐れている」なんて話があるとするなら、それはもう終わっているに等しい。
厳しい言い方だ。
ただ、本当にそうなのである。
誰も理想的に働きたいなんて思っていない
理想を追求すれば、素晴らしい未来が待っている。
まあ否定はしない。
でも、それは一定程度以上の能力や意欲がメンバーにある場合に限る、という留保条件は付けておいた方がいい。
そして、多くのメンバーというのはそこまでのレベルに達しない(し、望んでもいない)、という悲しい現実も言い添えておく。
僕がマネージャーを7年以上やって思うのは、仕事に対して情熱を持って取り組んでいる人間なんていうのは1割もいない、ということである。
多くの人は、ただ漫然と仕事をしている。
そこに理想なんてものはない。
できるだけ楽に、効率よく金が得られるなら、それでOK。
面倒くさいこと、負荷がかかることは、NG。
そういう人ばかりである。
やや極端な言い方をしていることは承知の上で、僕はこんな風に思っている。
理想郷は遠すぎる
だから、理想主義的なアプローチというのは、「距離が遠すぎる」のである。
言っていることは間違っていないし、そちらの方向に進むべきではあるのだけれど、多くの人にとっては、その理想郷は遠すぎて、リアリティがあるものとして受け取られない。
結果として、「ふうん…」くらいの反応で終わってしまう。
もっと言えば、「また何か現実離れしたこと言ってるよ…」みたいな感じに捉えられてしまう。
もちろんある程度の戦力が揃っているチームであれば、理想主義的なアプローチが絶大な効果を上げることもあるだろう。
でも、少なくとも(日本の)多くのチームには当てはまらない。
それだったら、もう少し視線を下げて、近い距離を見た方がいい。
手触り感のある、具体的な戦術を示した方が、チームの体温は上がってくる。
理想の話はその後からでも遅くはないはずだ。
それではまた。
いい仕事をしましょう。
あとがき
「正論は正しい、だから誰もが従うはずだ」
そう能天気に思っている人が多すぎるように感じています。
正しいからといって、人が従うわけではありません。
そして、もっと言えば、正論に従うべきでもありません。
お花畑を脱して、戦場を駆け抜けていきましょう。