いい顔をしたがる人たち

過剰にいい人を演じない方がいい

全てはバランスの問題だ、と言ってしまえば身も蓋もないのだけれど、自分が過度にいい顔をしようとしているのであれば気を付けた方が良い。

僕自身もそうだったように、マネージャー初心者はとにかく周囲に嫌われないように振舞いがちだ。

部下をはじめ、他課の人間にも、「いい人」を演じようとする。

それが本心から出たものであれば僕がどうこう言う必要はないのだが、大抵は無理をしながら、いい人ぶってしまう。

背景には「ハラスメント恐怖症」のようなものが潜んでいると思うので、ある種仕方ない側面があるのは承知の上で、これは程々にしておいた方がいい、というのが今回のテーマだ。

「言行一致度」を維持できる自信はあるか?

このブログ内でも言及しているように、マネージャーというのは好かれも嫌われもしない状態が最適(「部下との距離感」参照)であると僕は考えている。

それは、中間管理職という職責上、時に嫌われるようなこともしなければならない、ということに起因する。

その際に、普段からあまりにも「いい人」を演じていると、そのギャップ感によって、部下や周囲からの評価は大幅に下がることになる。

人間が信頼というものを測る尺度として、その人が言葉通りに行動しているか、というものがあると僕は思っている。

それはそれぞれの部下の中で、「言行一致度」という形で感覚的に数値化されている。

あの人は言っていることとやっていることが一致しているから信頼できる、あの人はそうでないから信頼できない、というように。

この一致性(もしくは不一致性)がマネージャー業のし易さを大きく左右する。

複数年にわたって「いい人」を貫徹できるのであれば、僕に言うことは何もない。

さっさとこのブログを読むのをやめて、もっと有益なことに時間を使った方が良い。

でも、僕のような凡庸な人間にはそれは不可能だ。

どこかでボロが出てしまう。

それは元々が善人ではないからだ。

そういう意味において、過剰な演出は控えた方が良いと僕は主張したいと思う。

改革期と安定期

「いい人戦略」は短期的には有効だけれど、長期的にはマイナスになってしまう。

チームマネジメントにおいては、緊張と弛緩改革期と安定期というものが交互にやってくる。

着任してすぐの時期、特に停滞しているチームのマネジメントを任された場合には、まず改革に着手することになる。

それはある種の「痛み」を伴うことが多い。

新しくやってきたマネージャーに対して、既存のやり方を守ろうとするメンバーはまず反発という形で対応する。

しばらくそのような状態が続いた後、改革の成果が少しずつ出てくる。

マネージャーへの信頼感が徐々に生まれ、チームも結果が出る、という好循環期が訪れる。

すると、徐々にマンネリ感が出てきて、チームが弛緩してくる。

その際にマネージャーはまた新たな手を繰り出す。

小さな反発が生まれ、チームは緊張感を取り戻す。

また安定期が続く。

以下繰り返し。

いい人戦略のリスク

自分のマネージャーとしての力量や、チームとの関係性によっても変わってくるのであるが、この改革期にはある程度「嫌われる覚悟」が必要となる。

この「嫌われ期」に差し掛かった時に、「いい人戦略」はリスクが大きい。

「あれ? あんなこと言っていたけれど、全部嘘(演技)だったのかな?」と、実際はそうじゃなくても、受け取られるようになる。

コインの表が全て裏返るように(気持ちの良いオセロゲームのように)、逆サイドに全て触れてしまうようになる。

そして更に悪いことに、一旦このような疑念がチームに生じると、そこからの挽回は難しくなることが多いのだ。

それはマネージャーの言うことの信義をいちいち気にするようになるからだ。

「これは本意なのか? 建前なのか?」というような疑心暗鬼状態になる。

こうなったら挽回不能だ。

大人しくチームを去った方が良い。

そしてそうならない為に、僕は「普通戦略」を主張する。

好かれも嫌われもしない「普通」状態が最適だ。

リスクを取らなければリターンはない

誰しも嫌われたくないし、できれば好かれたい、という心性が人間にはある。

でもそれが行き過ぎてしまって、「いい人」にパラメータを「全振り」すると、手痛いしっぺ返しを食らうことになる。

そしてそれを理解しているマネージャーはあまり多くない

こんなことを言うと反発を招きそうだけれど、「ただ無難にやり過ごす」のであれば、「いい人」を演じ続けるのが一番簡単だ。

誰にも嫌われないで済む。

嫌な思いもしないで済む。

でも絶対に結果は出せない。

もう一度言う。

絶対に結果は出ない。

リスクを取らなければリターンはないのだ。

それは普遍の原理だ。

嫌われる覚悟はあるか?

それなのに、裏ではその責任を部下に押し付けたりするマネージャーが履いて捨てるほどいる。

いい人を演じながら、そういう奴に限って部下を見捨てていたりする。

自分の勇気のなさを棚に上げて、部下の無能性を声高に叫んでいたりする。

本当にうんざりする。

でもこれが現実だ。

あなたがもしマネージャーとして「いい仕事」をしたいのであれば、泥をかぶる覚悟が絶対に必要だ。

嫌われる覚悟がない状態で成果を出せる程甘い世界ではない。

それだけは肝に銘じていた方がいい。

それではまた。

いい仕事をしましょう。


あとがき

僕の所属が営業課だからかわかりませんが、うちのメンバーは人の本質を簡単に見抜いてきます。

もちろん第一印象で人間を判断するという行為には浅はかさが付きまとうのも事実なのですが、個人的な経験によると、この第一印象は途中で揺らぐことはあるにせよ、大体のところ合っていることが多いです。

そういう意味において、僕は僕のままで勝負するしかない、とある時点から腹を括れるようになりました。

格好つけても、善人ぶっても、結局僕はありのままの僕でしかない。

そのことに気付いてからはマネジメント業務は格段にやりやすくなりました。

自分のパーソナリティが理解されるようになると、どんなに厳しいことを言ってもその受け止め方は大きく変わります。

下手な包装紙は不要です。

中身の商品性で勝負していきましょう。