換気をしよう
固定化させないという意識
コロナウイルス対策と同じように、マネジメントにおいても「換気」は重要だ。
ここで言う「換気」というのは、言葉の通り「空気の入れ替え」のことで、チームマネジメントにおいては、「人の入れ替え」のことを指す。
もちろん働いている環境においては、人員構成は固定であって、どうやっても不可能、ということもあるだろう。
ただ、その場合においても、意識として「固定化」させないことがとても重要だと僕は考えている。
今日はそんな話をしていこう。
中心化と分散化
チームマネジメントにおいては、「中心化」と「分散化」のバランスがとても大事だ。
「中心化」というのは、一体感というか、チーム感というか、纏まりというか、とにかくチームのメンバーが同じ方向を向いている状態、同質的な状態、になることを志向することを指す。
その中心には、できればマネージャーがいると良い。
独裁、とは言えないまでも、ある程度の判断軸にマネージャーがなっているような状態が、時にチームの運営には必要となる。
権力の集中と言うとちょっと言葉は強くなるけれど、特に非常時などにおいては、このような「密度の高さ」がなければ、大きなパワーを得ることはできない。
これはスポーツの世界を想像してもらえるととても分かり易いと思う。
メディアでよく取り上げられるように、中心に監督がいて、選手がその監督を慕っているような状態。
チームが纏まっていて、個々人の力を合わせた以上の力が出るような状態。
それが中心化だ。
中心化のデメリット
一方で、中心化にはデメリットもある。
それはメンバー間の力関係が硬直化しやすい、ということだ。
そしてそこには当然マネージャーも含まれる。
ある種の階層構造、ヒエラルキーみたいなものが生じてしまって、上意下達的な構造が生まれがちだ。
人間関係が硬直化すると、メンバー内における「上位者」の発言の方が、「下位者」の発言よりも、「通る」ようになる。
ベテラン社員や、お局様、みたいな人がこのカテゴリーに入る。
そしてそういったチームにはダイナミズムが失われてしまう。
年功序列もそのような概念の一つで、現在の構造は自分の力では変えることができない(黙って受け入れるしかない)というような「諦め」がチームに蔓延するようになる。
集団浅慮みたいなものも生じてくる。
結果として、「淡々と」チームは進んでいくことになる。
分散化によって過剰な中心化を是正する
局面によってはこれは必ずしも悪いことではないのだけれど、時に有害になることがある。
それを防ぐための方法がもう一方の「分散化」だ。
これは「中心化」の逆で、権力(パワー)が誰かに寄っていない状態、固定化せず流動化している状態、メンバーそれぞれが違うことを考えているような状態、になることを志向することを指す。
フラットな組織構造というか、意思決定権が分散しているような状態で、かつそれぞれが別の方向を向いているようなイメージ。
それぞれがそれぞれの持ち場できっちりと仕事すればいいんでしょ、と考えているようなチーム。
それが分散化だ。
分散化のデメリットも確かにあるけれど…
分散化は分散化でデメリットがある。
上記したように、ある種バラバラな状態なので、「チーム感」が出づらく、どちらかというと個人事業主の集まりのような感じになってしまうからだ。
マネージャーの言うことも、あくまでも一意見でしかなくて(多少は尊重してもらえるとはいえ)、変な話をしてしまうと、全く言うことを聞いてくれない、みたいな事態が生じてしまうのも事実だ。
ただ前述したように、僕は分散化したチームの方がやり易いように感じていて、それは案件毎、プロジェクト毎に、意思決定者が変わっていくことが一番の要因であるように思う。
ヒーローが毎試合変わっていくというか。
少なくとも人間関係の固定化や、階層化、みたいな状況は、中心化しているチームよりは防ぎやすい。
空気が入れ替わっていくように、チーム内におけるパワーバランスが状況によって変化していく。
緊張感があるとも言えるし、自由であるとも言えるような感じ。
それぞれのメンバーが自分の裁量を持って仕事をしていて、時にはその力を持ち寄って働くような感じ。
マイクロマネジメントやプレイングマネージャー化を防ぐために
この一番のメリットは、公平感とチーム力の安定化だと思う。
中心化というのはどうしてもエースに頼るような運営になりがちだからだ。
そしてそのエースがマネージャーになることもあるから、注意が必要だと僕は思っている。
この一形態がマイクロマネジメントであり、プレイングマネージャーである。
メンバーの行動を逐一管理しようとしたり、自分に良い条件を集中させたり、とにかく自分がそのチームの中で存在感を発揮しようとする。
そしてそれに迎合したり、阿るようなメンバーが出てきたりする。
中心的なメンバーやマネージャーからの寵愛度合いによって、チームでの仕事のやり易さが変わってくるような状態。
これはあまり健康的とは言えない。
健全な競争を保つために
それを防ぐのが「換気」だ。
これは定期的に人の入れ替えがある組織であれば自然とそうなるのだけれど、そうでないのであれば、意識的に制度の中に組み込む(ビルトインさせる)しかない。
僕の場合は、前述したように、それぞれのプロジェクトごとにリーダーを変えていくこと、そのリーダーの権限を同程度に保つこと、によってこれを行っている。
それぞれのメンバーをサイロ化させることなく、ある程度助けがなければ仕事が進んでいかないような状態を恒常的に保っていく。
言うは易く行うは難し、ではあるけれど、これを適切に行うことで、チームには健全な競争が生じるのだ。
それではまた。
いい仕事をしましょう。
あとがき
マネジメントの立場からすると、メンバーが固定化している方がやり易い、というのは確かにあります。
ただ、一方でそのデメリットもしっかりと認識しておいた方が良い、というのが今回の論考です。
昨日の延長線上に今日があること、それが明日も明後日もも続いていくこと、を人間は好む生き物です。
そしてその安定した日々を守る為には過剰に攻撃的になったりもします。
停滞したチームが停滞したままであるのは、このような生き物としての根源的な本能があるからだと僕は思っています。
改革は痛みを伴うし、その刃はそれを為そうとするマネージャー(平和な日常を壊そうとする悪者)に向かいます。
それによって傷を負ったとしても、得るものは必ずあります(そしてそれは大きい)。
「寒い!」とか文句を言われながらも、窓を開けましょう。
そこから新しい風が入ってくるはずです。