まずどこから手を付けるか?

マネージャーに着任して、その任されたチームがうまくいっていないという事前情報が与えられている場合、まずどこから手を付けるか?

(※たかだか5年しかやっていない僕が言うのはおこがましいし、2チーム程しか担当していないので、正直汎用性はあまりないと思う。あくまでも現時点で一般論として適用できるのではないかという推測に基づいたものである。予めご了承頂きたい。)

僕がやるのは次の3点だ。

  • チームの第一印象を書き、保存しておく。
  • チームのメンバーと個人面談を行う。
  • メンバーの行動を可視化して、既得権益を排除する。

第一印象を残しておく

僕は着任すると、まずそのチームの第一印象をワード(というかワープロソフト)に書きつける。

箇条書きで。感じたままを書く。

特に文章を練る作業はせずに、感じたことを羅列していく。それを個人フォルダに保存する。

当然ながら、前任者からの引継ぎもあるし、お客さんのところにもいかなくちゃならないし、結構バタバタしているのだけれど、一息ついたときに必ずこれを書くようにしている。

できればチームだけでなく、他の課の雰囲気や、上司の感じとか、とにかくちょっとでも気になることを書いておく。

そうしていると大体初日は終わる。

翌日も大体同じような引継ぎがあり、一段落した時に同じような作業をする。

前日に書いたことをさらっと読み返し、そこに書いていないことを書き足す。

前日よりは少し込み入ったことも書く。

3日くらいすると、第一印象が固まる。

僕の場合は大体そこでそのチームの問題点がわかる。

わかる、というよりも、「根本の原因はわからないけれど、ここがネックになっているのだろうなあ」ということを感じるようになる。

だから、次にやることは「何が原因で」これがネックになっているのかを考えていく。

まだ、部下の顔と名前も正直言って一致していないし、それぞれの個性も特徴もはっきり言ってよくわからない。

ただ、自分はある程度営業の経験はあるので、その人がどういう人かというのは大体わかる。

この辺は言葉にし辛いのだけれど、癖みたいなものもわかる。

(もちろん、もっとヤバい部分がだんだんと見つかってくるのだけれど…。あくまでこの段階ではその表層だけ)

部下と個人面談を行う

大体着任して1週間くらいを目途に、チームの全員と個人面談を行う。

1人30分くらいということでスケジュールを割り振るけれど、大体が長引いて、下手をすると2時間くらい話していることもある。

ここでも大体部下の性格が現れる。

待ってました、とばかりに今までの不満をぶつけてくるもの、こちらの様子を伺ってあまり話さないもの、当たり障りのないことしか言わないもの、キャラクターは様々だ。

だから、僕は話半分に彼らの話を聞く

鵜呑みにすると痛い目を見ることになる(実際に最初の頃は失敗した)。

大体の場合は、この面談をしている期間に、自分も上司に呼ばれて飲みに行ったりすることになる。

そこで、今までのチームの状況とか、問題とか、上司の考えを聞くことになる。

これも判断に迷うので、話半分に聞くようにしている。

その上司がどこまで本質をわかっているのか、印象だけで話しているのか、本心はどこにあるのか、そもそもチームのメンバーから信頼されているのか、と言ったことがわからないからだ。

僕の経験から言うと、大体の場合、この段階では上司も僕の腹を探ってくることが多い。

タヌキとキツネの化かし合い、とまでは言わないけれど、向こうもこちらの性格をわかってないので、当たり障りのないことを僕も話すことになる。

正直に言うと、この辺で僕は本当は手に付けた方が良いことがわかるようになっている。

でも先ほども書いたように、それがなぜできないのか、ということまでは掴めていない。

大体のイメージはわかっているけれど、まだ確信には至っていないという感じかもしれない。

チームメンバーの行動を可視化する

個人面談と、一連の飲み会や自分と上司の面談等が終わった段階(着任後2週間も経たないくらい)で、僕は最初に書いたワードの文章と、これまでの面談等から得た情報を合わせて、方針を打ち出す。

方針、といっても、本当にヤバそうなところだけにまず手をつけるという感じだ。

できない営業のチームは大体が個人プレイかつ「できなくても仕方ないよね」という雰囲気が蔓延していることが多いので、各人の行動計画に手を入れることが多い。

と言っても、僕はマイクロマネジメントは大嫌いなので、最小限の報告を求める形に変えるようにする。

そして各人の行動が他のメンバーにも見えるように可視化する。

もちろんチームメンバーのキャラクターによって変わるのだけれど、営業マンは個人事業主気質の人が多くて、自分のことは棚に上げて、他のメンバーを批判することが多いように思う。

曰く、あいつはサボっている(自分だってそんなに変わらないのに)、曰く、あいつは良いお客さんばかりついている(自分だってそんなに変わらないのに)、エトセトラ・エトセトラ。

膿を出す

担当顧客も見直すことも多い。

これは大きな反発を招くので、初任のマネージャーにはあまりお勧めをしないけれど、ここが一番のガンになっていることはよくあることだ。

実績を上げているとされるベテランは結局は優良顧客を抱えているだけの場合が多いし、そこにしか訪問していないことが多い。

それに不満を持っている中堅・若手も多いし、だからといって彼らがそれを埋め合わせるだけの努力をしている訳でもない。

結局、できないチームというのは他責なのだ。

だから、ここに手を入れる。

当然どの方面からも批判が来る。

大体はベテランが自分の上司に言いつけて、「事情も知らないのに新参者が勝手なことをするな」ということを回りくどく伝えてくる。

これもよくある例なのだけれど、そのベテランは腫れ物のようになっていることが多く、自分の上司もそこにはなるべく触らないように、へそを曲げさせないようしていることが多い。

厳しい言い方をすると、上司だって言いなりだとそのベテランは思っているわけだ。

そうすると、上司から個室に呼ばれて、「いや、もう少し穏便にできないかね」とか「もう少し馴染んでからやったらどうか」と説得めいたことをされるようになる。

僕はここでなるべく柔らかいトーンで、「優先させるべきは業績を改善させることなのか、ベテランのご機嫌を取ることなのか」ということを上司に確認する。

両立は難しいことが多い。現時点では。

そうすると、(もちろん人によるけれど)「業績を改善したい」という結論になることが多い。

というか、そういう結論になるように話を進める。

だって、その上司だって、営業の数字が悪ければ自分の評価に響くし、だからこそ新任の僕に任せることになったのだから(ここで上司を味方につけることができるか、も結構重要なポイントだ)。

既得権益を排除する

大抵のマネージャーはこの時点で折れて、結果、チームのガンであるベテランの軍門に下る。

そのベテランもマネージャーを舐め始める。

でも、ここでその改革を断行すると、「あれ、言うこと聞かないやつが来た」という感じになる。

それによって、一定期間嫌な雰囲気になるのだけれど、僕は殆ど気にしない。

というか、結果が出ていないチームの奴に言われても痛くも痒くもない。

だって、そのやり方で今まで上手くいかなかったんでしょ、って思うから。

もちろん自分の上司の性格とか、改革への本気度合いとか、そのベテランの面倒くささとか、色々な要因が重なるので、すべてこのようにするわけではないけれど、大体この辺から僕は手を付ける。

既得権益の排除には尻込みする人が多い。

でも、どちらにせよ業績を上げるにはここは避けて通れない道だ。

そうであるなら、自分が何者であるか知られる前に断行してしまうほうが良い。

空気が読めないふりをして、どんどんやってしまうと良い。

もちろん、的外れにならないように、自分の経験に基づいたある種の確信をもってやることが大切なのは言うまでもないけれど。

改革はお早めに

ここまでが大体3週間だ(1か月かかると遅い)。

着任後3か月は様子を見る、というマネージャーは多いが、僕はこの意見には反対だ。

3か月もしたら、マネージャーの評価は固まってしまうからだ。

そこから改革を行おうとしても、マネージャーの評価が邪魔をしても上手くいかなくなってしまう。

僕はすぐにやってしまうので、こういう経験はないけれど、他のマネージャーを見ているとこの陥穽に嵌っている人は意外に多いように思う。

強いチームなら前例踏襲はアリだけれど、弱小チームでは絶対にナシだ。

自分の直感と第一印象を信じて、一番大変なところから手を付けよう。

みんなお手並み拝見みたいな感じで(というか失敗しろ!という感じで)見てくるけれど、そいつらを黙らせる為には結果を出すことが何よりも大事だ。

批判される勇気もない癖に、結果が出ないことを部下のせいにする、どうしようもないマネージャー達にならないように、腹を決めて、早め早めに膿を出してしまおう。

どうせ元から上手くいっていないチームなのだ。

やりたいようにやろう。

それではまた。

いい仕事をしましょう。


編集後記

チームを改革するためには最初が肝心です。

やり過ぎもやらな過ぎもいけないのですが、本当に気になる部分はどちらにせよいつか露見するので、早めに手を付けた方が良いと思います。

この辺のさじ加減は初任のマネージャーには難しいと思いますので、着任初日の第一印象を文章で残しておくことをここではオススメします。

異邦人としての自分を残しておくこと、その時の印象や違和感を記しておくこと、それが後々の助けとなります。

改革の途中では批判も多く、自分の感覚を信じられなくなる場面が訪れます。

その際に自分の立ち位置を振り返る為には、指針(錨)となるものが必要です。

自分の感覚を信じること

そこから反転は始まると僕は考えています。