2・6・2の法則

「普通」の人を引き上げるのは難しい

どんな組織にも2・6・2の法則があるという。

簡単に言うと、組織は「2割が優秀・6割が普通・2割がダメ」という人員構成になるというものだ。

僕個人の体感で言うと、大体合っているが少し違う。

1・6・3という方がしっくりくる。

そして、その中の6の部分もかなりの濃度の差がある印象だ。

これを課の運営に置き換えてみると、10人の部下がいれば、1人が優秀、6人が普通(バラつきも大きい)、3人がダメ、となる。

僕は営業の課長なので、目標の数字がある。

それを達成させる為に各人に目標数字を割り振るのだけれど、結果として上がってくるものは、1の優秀の人が課の目標の半分、残り半分弱を6の普通の人、弱の部分を3のダメな人でという感じになる。

そして大体のマネージャー本には、この6の普通の人を引き上げようとか、3のダメな人を活用しようとか、そんなことが書いてある。

考え方としては非常に賛成できるのだけれど(そして実際に試みてみたのだけれど)、これがなかなか難しい。

入社3年目くらいまでの若手であれば、成長する余地は十分にあると思うのだけれど、それ以上の中堅・ベテランがここに含まれていると、これはなかなかしんどい。

というか、きっと優秀なマネージャーはそれができるから優秀なのだろう。

結論から言うと、僕はこれができなかった。

普通の人は普通のままだし、ダメな人はダメなままだ。

1・6・3を、2・5・2とか3・4・1には僕にはできなかった(というか、2・6・2の法則は構成を変えても結果的に組織の形は元に戻るということも示唆しているので、この言い分は間違いなのかもしれない)。

でも、全体の数字を底上げすることはできた。

数字の比率は変わらないのだけれど、数字の総額は増えた。

それはどうしてか?

「相対的」ではなく「絶対的」な特徴を活かす

以前にも書いたと思うけれど、僕は長所を活かすということにマネジメントの力点を置いている。

普通とかダメとか言ったって、それはあくまでも営業の数字の話であって、彼らにも長所はある。

(目を凝らしてもなかなか見つからないというのは正直なところではあるが…)

それに、1の優秀と言われる人だって問題がないことは稀だ。

僕の経験ではこの1の優秀な人は営業はできるのだけれど、それ以外の部分で問題があることが多い。

事務作業がからきしダメだったり、人間的に問題があったり。

そして他の9の人から大体嫌われている。

一方で、この1の優秀な人も残りの9に対して不満がある。

「何で自分だけが頑張らなければならないのか」という不満を抱えている。

そしてそれを改善しようとしないマネージャーにも腹を立てている。

手を入れるべきはここだ。

「1」の人は本当に優秀なのか?

まず、1の人が本当に優秀なのか確かめる必要がある。とりあえずは営業の面で。

何人かの顧客との面談に同席すれば、大体の力量はわかる。

そして僕の経験からすると、これは「うーん…イマイチ」ということが往々にしてある。

こういう場合になぜ数字が上がっているかと言うと、太い客を抱えているか、太くなりそうな客はその人が営業するような仕組みになっているか、その両方か、であることが多い。

普通以下とされる人達からすると、これが面白くない。

結局その1の人が頑張っている訳ではなく、そういうシステムになっているから、数字が上がっているのだ、と彼らは思う。

これはやや言い過ぎのきらいはあるものの、そんなに大きく外れてはいないことが多い。

普通の人が普通であるのは不満が原因であることが多い

だからと言って、この1の優秀と言われる人からお客さんを剥がしたり、システムを変更したりすることはリスクを伴う。

この2点がリスクだ。

それによって数字が上がらなくなる可能性がある。

優秀な1の人からの反発に合う。

しかし、もしあなたが本当にチームを変えたいと思うのであれば、ここは避けて通れない。

色々な問題の根っこはここにあることが多いからだ。

普通とされる人達が普通のパフォーマンスに留まっているのも、「やってられねえよ」「頑張ったって客が良くなければ限界があるよな」と不満を抱えているから仕事に身が入らないという場合が多い。

もちろんすべての不満に対して応えることはできない。

あちらを立てればこちらは立たず、という状態になるのが常だ。

それでも、チームを改善させたいと思うのであれば、一番ヤバそうな部分には手を入れなければならない。

その為に必要なことは不満を可視化することだ。

不満を可視化することで、公平感・平等感・納得感を醸成する

僕の経験から言うと、この1の優秀な人からお客さんを変更しても、この人の数字は落ちない。

というか、奮起して以前よりも良い数字になることが多い。

厳しい言い方になるけれど、この1の人だって自分が恵まれた環境にいることはわかっているのだ。

そしてそういうぬるま湯的状況がなくたって自分は優秀なのだということを証明したいと思っている。

なので、大きな反発期を超えた先に感謝されることも多い。

殻を破る、というと大げさかもしれないけれど、一皮剥けることが多い。

そうなればしめたものだ。

課の数字はより安定するようになる。

元々営業に関しては一生懸命にやるのがこのタイプだからだ。

優秀な人が担当していたお客さんは他の9人に割り振る。

前ほど数字が上がらなくなることもあるけれど、大体はそんなに変わらない。

どちらかというと、「平等感」「納得感」「公平感」を醸成するのがここでの狙いだ。

同時に、この9人にも良いお客さんを担当させる「機会」を与える。

既存顧客というよりも新規顧客で見込みのありそうなお客さんを割り当てる。

こちらの結果はまちまちになることが多いけれど、それも飲み込む。

同じように「平等感」「納得感」「公平感」がチームの運営には大事だからだ。

機会を平等化すると、結果も可視化される

こういう機会を与えると、彼らは彼らなりに努力しようとする。向上しようとする。

機会が平等化されるということは、結果が可視化されるという意味で、僕はある種残酷だとは思う。

今までは「良いお客さんがいないから、数字が上がらない」という言い訳ができていたのに、それができなくなるから。

それは彼らもわかっている。そうすると、甘えの部分が少なくなる。

甘えがなくなれば、数字がついてくる。

数字がついてくれば、やる気にもなる。自信にもなる。

もちろんその伸びた数字だって劇的なものであることは殆どない。

でもここで大事なのは数字ではない。

公平な機会を与えることと、信頼しているというマネージャーからのメッセージを送ることが大事なのだ。

長所を活かそうとすると自信が生まれる

僕は先ほども書いたように長所を活かしたいと思っている。

そしてその長所というのは、相対的には大したことなくても、その人にとっては大事なものであることが多い。

僕はそこに気付く機会を提供したい。

結果なんて正直どうでもいい。

仕事に対する姿勢がポジティブになることが大事なのだ。

僕は営業という仕事の大変さをわかっているつもりだ。

だからこそ彼らには少しでも前向きに仕事をしてもらいたい。

少しでも充実感を感じて欲しい、そう思っている。

比率は変わらないけれど…

結果として積み上がった数字の比率は1・7・2であるかもしれない。

でもその内情は大きく異なる

全体が底上げされていて、多少なりとも日々の仕事に満足感も伴っている。

僕は自分でもリアリストだと思うけれど、同時に理想も求めている。

そして相対評価というものにあまり信を置いていない。

別に2・6・2だろうが、1・7・2であろうが、絶対的に課の数字が伸びていればいいのだと思っている。

数字が上がらない部下を信頼するのは難しいけれど、まずは機会を与えよう。

それでダメならその時にまた考えればいい。

僕はそう考えている。

それではまた。

いい仕事をしましょう。


編集後記

チームの能力の底上げをするためにはどうすればいいのか?

これはなかなか難しい問題です。

マネージャーは限られた時間の中で数字を伸ばすことを至上命題とされます。

「教育」という響きは美しく理想的ですが、現実的には人が成長するためにはある程度の時間が必要となりますし、そこまでは待ってもらえないことも多いです。

そこで僕が提案するのは「可視化」です。

停滞しているチームの中では様々な不満が渦巻いています。

全部を解決するのは不可能ですが、それらを可視化して納得感を与えることで、チームは活性化します。

人は納得感があると、不満があっても前向きに行動するようになります。

結果としてパフォーマンスも向上します。

業態によってやることは変わると思いますが、最近はそんなことを考えています。