重箱の隅をつつくな!

Photo by kofookoo.de on Unsplash

安易な道

本質とは関係ない些細な部分を突くことで、マウントを取ろうとする人(そしてそれを「知性的である」と考えている人)が増えているように感じている。

これはマネージャーにも同じくらいの分布(いや、もっと多いか?)で存在する。

それは簡単に上下関係(の擬制)を構築できるからである。

権威(主義)が影を潜める現代において、本来的には人としての「格」や「器」で相手からの尊敬を得るべきなのだろうけれど、これはなかなか難易度が高いものである。

そりゃそうだ。

実際に人としての格が高かったり、器が大きかったりしなければならないからである。

それは多くの人にとっては難しい。

だから安易に議論に勝つことで、優位性を示す方向に人は流れようとする。

でもそれは間違いなのだ。

今日はそんな話をしてみようと思う。

テンプレの展開

最近の流行り議論のテンプレみたいに僕は思っているのだけれど、本論には直接的に関係ないことを持ち出してきて、「ここが考慮されていない!」と得意げに言う人が増えているように感じている。

例えば、あなたがマネージャーで、何かの企画書を部下に依頼するとする。

1週間の期限の中で、部下は企画書を上げてくる。

100点満点とは言えないまでも、80点くらいの水準のもの(自分が考えるよりも良いもの)であったとする。

その時にどのように振舞うか?

僕だったら素直に褒める(というか、感嘆する)。

でも、多くのマネージャーはそうではないように思える。

彼ら(彼女ら)は、80点の部分ではなく、20点の部分に注目する

もしくは、80点の部分に「統計的な裏付けがあるのか」とか「誰それに確認したのか」とか、「こういう事態(ブラックスワン的な確率のもの)が起きたらどうするのか?」とか、まあ本当にどうでもいいことに拘泥する。

そして鬼の首を取ったように、「ほら見ろ! できてないじゃないか!」というような振る舞いをする。

僕はこの風潮にうんざりしている。

マネージャーの仕事は部下のマウントを取ることではなく、部下を賦活することだ

マネージャーの仕事は、部下のマウントを取ることではない。

権威を示すことではない。

賦活することである。

意味が解らない方がいるかもしれないので、もう少し詳しく書いていく。

活力を削ぐ人をマネージャーにしてはいけない

相手の活力を削ぐ人は、マネジメントという仕事をしてはいけない。

僕はそんな風に考えている。

そうではなく、相手の活力を増す人をマネジメントという仕事に従事させるべきである。

ただそのタイプの人間は少なくなってきているのも事実である。

相手の力を引き出せることを知性と呼ぶ(というか、呼びたい)

多くの人は、冒頭の議論のように、相手をやり込めることで自分の優位性を示そうとする。

それが知的な振る舞いだと思っている。

それは間違いだ。

相手の力を引き出すこと、それが知的な振る舞いなのである。

触媒や媒介物になること、それが知性である。

僕はそんな風に考えている。

不機嫌の連鎖

不機嫌な人は、不機嫌をまき散らす。

能力のない人は、相手を陥れようとする。

僕はこの「不機嫌の連鎖」みたいなものが現代の日本における病のように感じている。

みんなイライラしている。

不全感を誰かにぶつけることで、一時的な愉悦を得ようとする。

でもぶつけられた相手は不機嫌になるだけである。

そしてその不機嫌をまた別の誰かにぶつけていく。

そうやってみんなで不機嫌を連鎖させ、みんなで沈んでいく。

それは病気だと僕は思う。

捻じれた愉悦と美意識

「相対的優位は優位ではない」ことに僕たちは早く気づくべきだ。

誰かの足を引っ張ることで、社会全体が貧しくなることに、もうそろそろ気づくべきなのである。

妬みや嫉みや同調圧力。

気持ちはわかる。

でも、それによって皆で沈んでいくことに快楽を覚えるのは倒錯的であるように思えるのだ。

カタストロフィタナトス的なものに美を感じるのは、僕たち日本人の特性なのかもしれないけれど、それが全体に敷衍してしまうと、流石に社会から活力が削がれてしまう。

それでいいならいい。

でも、僕は嫌だし、せめて自分のチームくらいは機嫌よく働ける環境を作りたいのだ。

重箱の隅をつつくのはリスクヘッジではない

細かい議論は相手との信頼関係があってこそ成り立つものであって、それを指摘することがマネジメントの仕事ではないのである。

リスクヘッジを履き違えてはいけない。

重箱の隅をつつくのはリスクヘッジではない。

それをわかっていないマネージャーが多すぎる。

フレーム問題

1つ1つリスクを挙げていけば、僕たちは何もできない(フリーズしてしまう)。

それは「フレーム問題」を挙げるまでもなく、当たり前の話である。

リスクは無限だ。

でもだからこそリターンが得られるのである。

そのリスクを1つ1つ列挙して、「これはどうだ?」「じゃあこれは?」と言っていたら何も始まらない。

というか、そのリスクを負うのはマネージャーなのだ。

その覚悟もないやつが、重箱の隅をつつくなよ、と僕は思う。

爆弾を抱えたまま、爆発するまで何もしないのかい?

無限の可能性を考慮し続けるのかい?

相手の活力を増すような仕事をマネジメントと呼ぼう

僕はそれをマネジメントとは呼ばない。

マウンティングはやめて、相手の活力を増すような行動をしよう。

それをマネジメントと呼ぼう。

そうやって機嫌よく働く人を増やしていこう。

それではまた。

いい仕事をしましょう。


あとがき

バフデバフ

マネージャーの仕事は部下にバフをかけることです。

というか、少なくともデバフをかけることではありません。

そしてあなたはもう主人公ではないのです。

でも、補助系の魔法を使うことで、パーティーを助けることができます。

機嫌よく働ける環境を作っていきましょう。