1回は管理職をやっておいた方がいい、たぶん

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マネージャーかスペシャリストか

部下とのキャリア面談をしている中で、「管理職に進むべきかどうか悩んでいる」という話が出た。

その彼はこの先、マネジメントの仕事をするか、スペシャリストの仕事をするか、で迷っている様子であった。

僕が彼に言ったのは、「まあ1回管理職をやっておいたら?」というものであった。

これは過去の自分に向けたメッセージでもある。

僕はマネージャーになりたくなくて、スペシャリストとしての道があるならそっちの方に進みたかった口である。

でも当時はスペシャリストとしての道はなくて(その後細い道が作られた)、僕には選択権がなかったのである。

ただ振り返ってみると、「マネジメントという仕事は1回やってみた方がキャリア形成上も良い」と思ったので、彼にもそう話したし、今回は文章に纏めてみる。

それでは始めていこう。

マネジメントは不人気

専門性の時代だ、ということがよく言われる。

その中で、マネジメントという仕事はゼネラリスト的に捉えられることが多い。

だから、若手には不人気である。

これに加えて、責任と裁量が合っていないであるとか、仕事量と報酬が合っていないであるとか、プレッシャーとストレスで押しつぶされそうであるとか、そんなイメージ(現実)があって、ますます管理職にはなりたくないと思うようである。

その気持ちはよくわかる(僕もそうだったし、今も変わらない)。

でも、「それでも、1回はやってみたら?」というのが今日の話である。

自分自身を客観的に見られるようになる

マネジメントを経験することの効用は、「俯瞰で見られるようになる」ことである。

特に、「自分自身を客観的に見られるようになる」ことが大きい。

これは言葉では表現しづらいのだけれど、今日は無理やり表現してみようと思う。

スペシャリストは視野が狭い

自分のプレイヤー時代や、現在スペシャリストとして働いている人達のことを思い返すと、視野の狭さに気づく。

それはある種トレードオフの関係で、1つの道を究めようとすれば仕方のないことなのかもしれない。

そして魅力的でもある。

ただ、そこには時間という概念が抜けているように思えるのだ。

我々は歳を取るが、それでもスペシャリストでありたいか?

これはどういうことか?

それは「我々は歳を取る」ということである。

そして「体力や気力が薄れる」ということである。

それでもあなたはスペシャリストとして働いていきたいだろうか?

例えそうであったとしても、マネジメントを1回くらい経験してからスペシャリストを目指してもいいのではないか?

それが今日の結論となる。

最先端の努力をずっと続けますか?

僕は自分が中年と呼ばれる年齢になるにつれ、「尖り」がなくなってきたように思う。

これはマネジメントという仕事にはとても役に立っているけれど、スペシャリストとしてはどうなのかと思うのである。

最先端のスキルや知識を恒常的にアップデートする作業、それをアウトプットし続ける作業、は気力体力共になかなか大変である。

それを40になっても、50になっても続けるのだろうか?

それもマネジメント経験なしで。

これはなかなか怖いキャリアプランであるように思う。

自称専門家たちの専門性のなさ

もちろん本当の意味での専門性を武器にする仕事であれば、一芸に秀でるというか、特化するという選択肢はアリだと思う。

でも、残念ながら僕たち一般のサラリーマンがやる程度の専門性というのは、そこまで特化する必要がないように僕には思える。

もっと言うと、本人は特化しているように思っているのだけれど、他人から見るとそうでもない、という事象が起こりうるのではないかと思っている。

専門馬鹿、とまでは言わなくても、視野が狭くなるというか、柔軟に対応できなくなるというか、ある程度以上の年齢の専門家と呼ばれる人と話をするといつも僕はそう感じるのだ。

そして彼ら(彼女ら)の言う専門性というのは、僕程度(僕以下?)のものでしかないことが多い。

ならば、一度マネジメントを経験して、自分の仕事の領域をある程度広げてから専門領域にトライする、というのでもマイナスにはならない(むしろプラスになる)と思うのだ。

マネジメントだって専門性は必要だ

マネージャーという仕事は、何もないように見える。

専門性なんてものが身に付くとはとても思えないように感じる。

それはそうだと思う。

でも、多様化する価値観の中で翻弄されながら、何とか日常業務を回していく能力というのは、一朝一夕で身に付くものではないことも事実であるように思う。

それを僕は以前「マネジメントという専門職」というタイトルでブログに書いた(新聞の受け売りではあるが)。

これができるようになれば、スペシャリストとして仕事をしていく上でもとても役に立つだろう。

一回くらいいいんじゃない?

残念ながら、本当の意味で「職人」のように仕事をしていくのは、勤め人には難しい。

スペシャリストと豪語していても、所詮は一介のサラリーマンに過ぎないのだ。

そして組織に所属する以上、様々な人間関係を円滑に進める能力(もしくはそれを適度に無視できる能力)はやっぱり必要になると思う。

なので、騙されたと思って1回やってみるといい。

面白くはないかもしれないけれど、学ぶことはきっとあるはずだ。

それではまた。

いい仕事をしましょう。


あとがき

僕自身この先のキャリアについて迷っています。

マネジメントを経験してその面白さと奥深さがわかった一方、自分の限界みたいなものも感じました。

その経験が今後のキャリアにおいて役立つかはまだわかりませんが、少なくとも僕はやっておいてよかったなと思っています。

大変ではありますが、その分得るものも大きいです。

迷っている方は是非お試しでも構わないので1度やってみてください。