ファストマネジメント?

UnsplashImmo Wegmannが撮影した写真

タイパ・コスパ

ファスト映画なるものが流行っているらしい。

ファスト映画というのは、「映画の映像を無断使用し、10分程度の短時間にまとめ、あらすじや結末を解説する違法動画」のことを指す。

これはコンテンツが溢れる現代社会において、限られた時間で効率よく楽しみたい(タイムパフォーマンスを上げたい)という消費者のニーズに応えたもの、とのことである。

もっと言えばサブスクの普及(何本見ても料金は一緒)、SNS常時接続社会における仲間内で行われる話題へのキャッチアップ、コロナウイルスによる巣ごもり需要、そんなことが複合的に組み合わさって、一部において活況を呈している、らしい。

「マジすか…」というのが僕の第一印象で、その後「まあ確かにわからんでもないよね…」というのがそこに続く感想である(違法であることは置いておいて)。

そして、「それはマネジメントにも言えるのではないか?」という考えに繋がっていく。

今日はそんな話だ。

「一言で言うなら?」という呪い

マネジメントに関するブログを書いている僕の頭の片隅に常にあるのは、「一言で言うならば」という「まとめ言葉」である。

「あなたの話はわかった。じゃあそれを一言で言うなら、どういうこと?」という問い。

それができたらいいのにな、と思いながら言葉を紡いでいる。

でも一方で、「そうできないから、マネジメントは難しいし、面白いんだよな」とも思うのである。

これだけたくさんの言葉を尽くしても、どこかへスルスルと逃げていってしまうような感覚

でも、時にそれをグッと掴むことができたような感覚。

その行ったり来たりがマネジメントなのではないか、と僕は思うのである。

忙しい現代人が僕のダラダラしたブログなんて読む時間があるのか?

ただ、現代人は忙しい。

コンテンツは死ぬほどある。

でも1日の時間は限られている。

その中で、的を射ないことをダラダラと書いている僕のブログを読む必要性なんてあるのか?

そう思うのである。

TikTokみたいに短時間の動画にまとめて、「はい! これだけやればOKですよ!」とシンプルに提示できればどれだけ需要があるか、そんなことを考えてしまうのだ。

リスト化と効率化

そしてそれは若手社員との会話の中においても感じることでもある。

仕事におけるスキルというのは多岐にわたる。

その中で「じゃあまずどれをやったらいいですか?」という問いは、若手社員からは必ず上がる。

リストアップして、順位付けをして、それを上からこなしていきたい。

できるだけコスパ(タイパ)良く習得したい。

そういう欲望を感じるのだ。

フィルターと上澄み

彼(彼女)らが求めているのは、身に付いた後の「状態」であって、その過程にはない。

その為に不必要な苦労はしたくない。

だからあなたが「フィルター」をかけてくれ。

その純粋な上澄みだけを摂取したい。

そういうイメージを彼(彼女)らと話していると感じるのである。

「損をしたくない」賢い消費者

それは「賢い消費者」を想起させる。

失敗した買い物なんてしたくない。

手持ちのリソースをできるだけ消費せずに、レバレッジ高く効果を得たい。

コスパ至上主義。

さらにそこに「時間」に対するコスト意識が加わってくる。

「できるだけ短時間で効果的な方法を教えてくれ」という欲望。

気持ちはわからないでもない。

でもさ、というのがそこに続いていく。

そんな「どこでもドア」みたいなことってあり得るのか?

そして楽しいのか?

そう思うのである。

「状態」を身を置いても…

先程も書いたように、「状態」を彼(彼女)らは求めている。

過程はすっ飛ばして、なった(通過した)後の「状態」。

でも、当たり前の話だけれど、スキルというのは身に付けて「はい! OK!」という代物ではない。

情勢は変化していく。

「be」ではなく「being」。

そこに対応できることがスキルなのだ。

旧世代のAIみたいだ

仮に彼(彼女)らが求めている「状態」に瞬間的になれたとして、それが有用なのかと言われると、僕はそうは思わない。

僕から見ると「フリーズ」して見えるのは、彼(彼女)らの頭がある特定の状態にしか対応できないということに関係しているような感じなのだ。

「場合分け」というか。

旧世代のAIというか。

少なくとも「自走」したり、ディープラーニングしたりすることはなさそうなのである。

ある入力を基に、それに合った適切な出力を出すことには長けているけれど、それ以外の出力は出ないようなイメージ。

でも流石にその弱点を彼(彼女)らも気づいているので、できるだけ多くの場合分けを身に付けておきたい、そんな感じ。

脳で考えるなよ(考えるな! 感じろ!)

僕もおじさんになり、後輩のマネージャーの指導をすることが増えてきた。

その際にこの種の「脳的」なマネージャーが増えてきたことを感じるのである。

「効率よくマネジメントをする為にはどうしたらいいですか?」

そのような種類の問い。

それは僕だって知りたい。

でも、たぶん形が定まった「これっ!」というようなものはないのだ。

いや、一時的にはそうかもしれないけれど、それは形を変えていくものなのだ。

社会の変化やチームの変化と共に(自分の変化もあるだろう)。

その中でどうやったら安定的なチームマネジメントができるのかを考える(試行錯誤・七転八倒・七転び八起き)のが、僕たちマネージャーの仕事なのだ。

少なくとも、10分にまとめることなんてできない

僕はそう思うのである。

それではまた。

いい仕事をしましょう。


あとがき

最短距離を駆け抜けたい。

気持ちは良く分かります。

でもさ、というのが今日の話です。

若手のマネージャーと話をする時に感じる薄っぺら感。

それは「おじさんの戯言」とはちょっと違うような気がしています。

少なくともマネジメントにおいては、回り道や雑味も滋養になる。

僕はそんなことを思っています。

たくさん寄り道していきましょう。