「王国」を作らない

マネージャー王国
マネージャーの中には「王国」を作りたがる人がいる。
ここで言う「王国」というのは、会社という組織の中ではありながら、マネージャー独自の治外法権が適用されるような状況のことを指す(ことにする)。
もう少し簡単に言うなら、「(閉鎖的)マネージャー王国」という感じだろうか。
できるだけメンバーと外部とのコミュニケーションを絶ち、独自の思想や価値観を植え付け、その中で絶対的な権力を振るうこと。
高くそびえる扉は閉ざされ(もちろん門番付きだ)、滅多なことで開くことはない。
その奥にマネージャーが鎮座している。
それはやめておいた方がいい。
門は空けておいた方がいい。
今日はそんな話をしていく。
「文化」と「王国」
最初に断っておくと、「文化」と「王国」にはやや近しい部分があって、マネージャーの色が良い方向に出ると「文化」に、悪い方向に出ると「王国」になりがちである、ということをまず押さえておきたい。
マネージャーがメンバーとの関係性を深めていくにつれ、ある種の「カルト的」な要素が必要になることはある。
マネージャーの個性とメンバーの個性が共鳴し合い、それぞれの内的な協奏によって惹かれ合う、結果チーム内に結束が生まれ、高いレベルの成果が出せる。
その面は否定しない。
ただ、そうであっても「オープン」ではあるべきなのだ。
そう、今日のテーマにおける重要なキーワードは「開放性」である。
キーワードは開放性
集団内の結束を高める過程において、「内輪」の論理が必要になる局面というのはある。
仲間内だけで通じる言葉(女子高生の流行り言語なんかをイメージしてもらうと分かり易いかもしれない)や、独特の応酬、コミュニケーション・スタイルなど、ある程度その集団内でしか通じない作法みたいなものが、メンバー間の密度や強度を高める、そういう側面は否定できない。
そしてその文化の中心にマネージャーがいる。
強い部活のチームのような、ある種の閉鎖性を持った集団。
外部との差を作ることによって生まれる一体感。
それはチーム作りにおいて、不必要であるとは言わない。
でも、ドアは空けておくべきなのだ。
空気の入れ替え、人の出入り、はできるようにしておく。
それが「密」にならない為に必要なことなのだ。
集団内の結束の高さは、そこに属さない外部への暴力性に繋がる可能性がある
これが閉鎖的になってしまうとどうなるか?
「密室」になってしまうとどのようなことが起きるか?
大体のイメージは付くと思う。
先程の例えに即して言うなら、強い部活で起きる暴力事件、飲酒・喫煙問題、他校との諍い、そんなことが起きるようになる。
集団内の結束の高まりは、暴力と排外主義を呼び込む恐れがある。
内側の論理は、外側への敵意となり得る。
それをマネージャーは肝に銘じておくべきだ。
依存という呪い
チーム内において、マネージャーが王として君臨し、自分の言うことにメンバーが機敏に動く状態、というのは確かに気持ちが良いだろう。
外の人間の言うことを無視し、自分だけの言うことに従順な部下を持つと、何というか全能感みたいなものも持てるだろう。
でも、不健全だ。
自分で仕事を抱え込むこと、仕事に属人性を帯びさせること、というのは、承認欲求が強い人がその地位にいる場合に起きやすい。
「私がいなくてはダメだ!」という、(僕からすればただの)思い込み。
それをチームにまで拡大していくこと。
部下はもちろん人格を持った1人の人間ではあるけれど、閉鎖的な環境においてはマネージャーの言うことを聞かざるを得なくなってしまう場合がある。
納得はしていなくても、指示に従わないと、色々と業務に支障が出るからだ。
高い城壁を築き、門を閉ざすことで、外からも入れなくなるけれど、内からも出られなくなる。
依存関係を生じさせる。
マネージャーの中には、このようなスタイルのマネジメントを行っている人がいる。
「教祖的な」とでも言おうか。
それは上記したように、完全に悪いという訳ではないけれど、「拡がり」がないのだ。
「純度」を高めることも必要ではあるけれど、「攪拌」させることも大事なのだ。
たぶん、閉鎖的なチームではイノベーションは生じづらいだろう。
でも、制御はし易い。
それに甘えてはいけない。
ルールで縛ること、外との付き合いをやめさせること、ありがちなDV夫みたいなイメージ。
「私がいなくてはあなたはダメなのだ」という、ある種の呪い。
それに頼ってはいけないのだ。
窓を開けよう
「王」というのは、「名乗る」から王なのではない。
皆が「王」と認めるから王なのだ。
この辺の感覚、ある種の固執がなくなると、チームの空気の流れは良くなっていく。
自信がない気持ちはわかる。
そうでもしないと、自分がマネージャーとして慕ってもらえないのではないか、という不安。
そうやって内に閉じこもろうとする感じ。
防御姿勢。
わからないではない。
でも、ドアは空けておこう。
窓は開いておこう。
そうすることであなたのマネージャーとしてのステージは1つ上がるはずだ。
それではまた。
いい仕事をしましょう。
あとがき
最近、「ノーガード」が上手にできるようになってきました。
経験がない時の僕は、ひたすら腕を高く上げてガッチガチの防御姿勢を取っていたような気がするのですが、現在の僕はある程度経験を経て自信がついてきたので、その必要がなくなっています。
そして、その方がチームの流れが良くなっている、というか。
突っ込まれること、イジられること、それはマネージャーにとってある種の汚点であるように僕は思っていました。
でも、そんなことは全然ない。
そして、身を固めなくても、自分の実力を誇示しなくても、力があれば勝手に信頼されるということ。
時間はかかりましたが、それが最近ようやくわかってきました。
鍵を外すのは勇気がいりますが、ドアを開けておくと、新しい空気が入ってきます。
オープンでいきましょう。