対症療法と根治療法
優劣ではなく
新年度を迎えた。
丁度いい機会なので、自分のマネジメントを点検する際の1つの視点について今日は書いていこうと思う。
対症療法と根治療法についてだ。
対症療法というのは、症状に対する治療のことで、主要な症状(例えば痛みなど)を和らげることを指す。
根治療法というのは、病気を完全に治すことを目的に行われる治療を指す。
これはどちらが優れているとか劣っているとかそういう話ではなくて、状況に応じて使い分けていくことが重要である。
対症療法は自然治癒力に期待し、根治療法は手術でダイレクトに病巣を切除する。
前者はマイルドだけれど時間はかかり、後者は短時間で済むが多くの血が流れる。
今日はそんな話だ。
同語反復は問題解決ではない
何か問題が起きた時に、その問題に対する打ち手として、同語反復的なことが行われることが多いような気がしている。
例えば、「売上が落ちた」という問題があるとする。
これに対する打ち手として、「じゃあ売上を上げよう」と言うのは、ただ言葉を繰り返しているだけで、何の意味も持たない。
こうやって文字に起こしていくと当たり前の話だと誰もが感じると思うのだけれど、実際の現場で行われているのはこれと似たようなことである。
原因について「もう少し」掘った方がいい
これはチーム内部の問題についても同様である。
ある問題に対して、その原因が何なのかを考える時、どのくらいの深さまで掘っていくかという視点を持つことは重要である(もちろん広さも重要だ)。
この層(レイヤー)は、深ければ深いほど良いという単純なものではないけれど、感覚的には「もう少し」掘った方がいいと僕は感じている。
というのも、大体の打ち手の深さは1層もしくは2層くらいで留まっていることが多いからである。
そうではなく、もう少し深い所、例えば5層とか7層くらいまで掘っていくことが大事なのだ。
深掘っていこう
これはよく言われる「なぜなぜ分析」に近いけれど、必ずしも掘る際の理由として「Why?」である必要はないというのが僕の考え方である。
5W1H(2H)的な、問いを重ねて、どんどんと原因を深堀っていく。
例えば「売上の減少」という問題の原因を分解すると、顧客数と顧客単価と購買頻度に分けられるだろう。
その中で、顧客数がどうなっているのか、単価はどうなのか、頻度はどうなのか、そしてそのようになっているのはどうしてなのか、ということを考えていく。
競合他社の存在があるかもしれないし、内部のオペレーションに問題があるのかもしれない。
単純に顧客が飽きたのかもしれない。
様々な要因があるはずだ。
そこに対してどのような手を打つのか?
そしてその手は、対症療法的なものなのか、根治療法的なものなのか?
この辺の感覚が重要なのである。
「深い所」に手を突っ込むこと
これは内部の話に対しても同様である。
チーム内の問題に対して、対症療法的に取り組むか、根治療法的取り組むかを考えることはとても重要で、でもそれは上記のような要因分析を行ったうえで判断すべき事項である。
そして付言すると、最近の傾向として根治療法に取り組むマネージャーは激減している、ということになりそうだ。
様々なハラスメント問題とそれに対する自己防衛策が積み重なった結果、マネージャーは「深い所」に手を突っ込むことに恐れを感じるようになっている。
本来的にはその部分に手を入れないとチーム状況が改善しないことはわかっているのだけれど、それをすることで対立が生まれ、不和が生じ、混乱がもたらされる可能性が高いから、しり込みしてしまう。
もっと言えば、その矛先が自分に向いてくるかもしれない。
それなら、自分の任期の間は見てみないフリをしよう。
対症療法的に、傷口にバンドエイドを張って、何とかやり過ごそう。
そう考える人がとても多くなっているのだ。
事なかれ主義を打破する為に
これは現場でマネジメントをしている僕からしても、ある種やむを得ないものだと思う。
その種のマネージャー達を庇うわけではないけれど、どうやったって割に合わないし、そこで問題が大きくなったとしても組織が守ってくれる訳でもない。
大いなる事なかれ主義。
それが組織の中には蔓延しているのだ。
ただ、同時に、そのまま手をこまねいて、「あれが悪い」「これが悪い」と嘆いていても何も始まらないので、僕なりの対応策を書いて、本稿を終えようと思う。
それは、「チーム内でできることをやる」ということだ。
「根治」かどうかはわからないけれど…
根治療法を行う場合、多くはチームだけでなく、もっと大きな組織を動かす必要が生じるものだ。
でも、組織は動かないことが多い。
そこで諦めてしまうこともたくさんある(僕だってそうだ)。
ただ、その中でもできることはあるはずなのだ。
それはもしかしたら「根治」とは言えないものかもしれない。
でも、チーム内で切除できる病巣は必ずあって、それを摘出するだけでも、成果が大きく変わる場合がある。
そして、現在のマネジメント環境においては、それすらもやろうとしない人が多過ぎるのだ。
戦略構築が僕らの仕事だ
気持ちはわかる。
ただ、僕たちはマネージャーなのだ。
その部分に手を突っ込むことが僕たちの仕事なのである。
プレイングマネージャー?
マイクロマネジメント?
そうじゃない。
そこに手を入れ、戦略を構築するのが僕たちの仕事だ。
それではまた。
いい仕事をしましょう。
あとがき
ドロドロとした病巣。
ヘドロみたいなこびりつき。
そこに手を入れれば、血が流れ、ダメージも生じます。
でも、たとえそうであってもやらなければならない時がある。
バンドエイドだけでは、僕たちは健康になれない。
そんな当たり前の事実を受け止めて、今日も仕事に励んでいきましょう。