戦略はひらめきだ
斬新なものじゃなくても
「頭がいい人」と聞いて、どういう人を思い浮かべるだろうか?
もちろん、人それぞれ、多種多様なイメージがあるだろう。
でも、最近僕が思うのは、「ありもので新しいものを生み出す人」は頭がいい、ということである。
これはコロンブスの卵的なイメージでもある。
一見すると、そして振り返ってみると大したことがないようなことであるが、それしか解決方法がないようなことを、その場のひらめきによって生み出せる人。
これが僕が最近考える頭がいい人の定義である。
そして、それは戦略を構築する際にも重要な概念となる。
スペシャルかつ斬新なアイディアを出すことが戦略構築ではない。
今手元にあるものを活用して、全く違う視点を付与することを戦略構築と呼びたい。
今日はそんな話である。
雷撃のような一手
会議で議論が煮詰まって、にっちもさっちも行かない状況がある。
それなりに意見が出尽くして、「さてどうするか?」となった時に、会議室には沈黙が訪れる。
その際に何とかその場を繋ごうと、それっぽい話を(ダラダラと)する人はいるけれど、雷撃のような一手を打てる人は本当にいない。
「ああ、その手があったか!」と、参加者すべてが見失っていたような、でも納得できるような手段。
そのイメージが僕が考える戦略というものである。
煮詰めた後、外す
これは会議室で唸るだけでは出てこない。
もちろん唸るという過程は必要ではある。
でも、ちょっと「外す」というか、もう少し違う角度から眺める、ということができないと、ハッとするような戦略を策定することはできないのだ。
因みに、(手前味噌ではあるが)僕はこのような戦略構築が得意な方である。
自分で言うのもなんだが、これによってマネージャーとして生き残ってきたと言っても過言ではないくらい、このようなアイディアを出すことができるのだ。
そして時に、後輩のマネージャーからそれを褒められ、教えを請われることがある。
「アイディア思考」というほど大層なものではないけれど、彼に説明したような、僕なりのヒントを以下に書いていく。
前提となるものをしっかり考えておく
まず大事なことは、前提となる知識(状況)をきちんと頭に入れておくことである。
そして、それを結構な深さで考えておく。
ありとあらゆるデータ、感覚、経験、を自分なりに整理し、仮説構築を行ってみる。
更に仮説に基づいた検証もやってみる(場合分けも込みで)。
そうやって、脳内を攪拌しておく。
もうこれ以上考えるの面倒くさいなとか、自分の中ではある程度満足したとか、もっと言うと考えるのに飽きちゃったと言えるくらいまで煮詰めておく。
それからフッと抜く。
圧力釜から蒸気が抜けるように、脳内の圧を一気に抜いてしまう。
すると、新しい空気が入ってくる。
ピコン!
今までは1つの事象に深く(でも狭く)取り組んでいたのに対し、それをやや離れた場所から見るような視点を加えてみる。
また、極端な視点(例えば思いっきり逆サイドに振ってみる)から眺めてみたりもする。
そうやって、対象の事物からピントを外す。
すると、そこにアイディアが湧いてくる。
それはまさに電球が光るみたいな感じなのだ。
経験値の蓄積と経験の排除と
戦略というのは難しいもので、参加者にとっての納得性が求められると同時に、ある程度の新規性が問われる。
あまりにも納得的である戦略は凡庸と同義で、かと言って突飛すぎると誰も納得してくれない。
この中間領域を狙うのがポイントだ。
そしてその為にはそれなりの経験値が必要となる。
と同時に、余計な経験を排除する必要もある。
離れたものを組み合わせる
ある分野の仕事を長く続けていると、頭でっかちというか、「ああそれ知ってますよ」というような頭の使い方がデフォルトになってしまうことがある。
全てのことは既知であり、目新しいことは何もない、というように。
確かに、もう長年やっている仕事において、新しい視点を付与することは困難であると言える。
その際に取り入れて欲しいのが、「組み合わせる」という概念である。
AとBはそれぞれ単体では既知であり、もうだいぶ使い古されたものであるが、このAとBを組み合わせたらどうなるかという発想。
それをAとBだけでなく、色々と掛け合わせてみる。
すると、時に思いもかけないものが生まれることがある。
手元にあるものの見方を変える
「アイディアを出す」というと、何か空中から新しいものを取り出してくるというイメージを持っている人は多いが(もちろん天才はそれができるのだろう)、まずは手元にある材料の見る角度を変えたり、角を削ったり、それらを組み合わせたりすることから始めてみるのが良いと僕は思っている。
存外、人というのは、物事を一面からしか見ていない。
そこに違う視点を付与するだけで、アイディアというのは湧いてくるものである。
後講釈をする人は多いが…
これは戦略も同様だ。
素晴らしい一手というのは、後から考えると、「なあんだ」というものであることが多い。
そしてそれを自分の手柄にしたがる人も多い。
でも、その「なあんだ」という程度の戦略すら考えられない人ばかりなのだ。
地味であっても、効果的な戦略はある。
それを探して。
それではまた。
いい仕事をしましょう。
あとがき
今日はちょっと違った毛色の話となりましたが、戦略構築においてひらめきは重要です。
そしてひらめきは「脳を振る(シェイクする)」ような感覚によってもたらされます。
それは本文にも書いたように、圧力を極限まで掛けた後に、フッと抜くと訪れることがあります。
たくさん考え、適度に抜いていきましょう。