話をする以上のマネジメント手法は(たぶん)ない
1対1で定期的に部下と話をしているかどうか
マネージャー初心者が自身のマネジメントについて悩んでいるとする。
本来的には、そのチームの実情やそのマネージャーのキャラクターなど、個別具体的な状況を把握した上でアドバイスをするべきなのであるが、現実問題として難しい場合も多い。
そんな時に僕がよく聞くのは、「1対1で定期的に部下と話をしているかどうか」である。
もしそれをやっていないのであれば、今すぐにでも始めた方がいい。
他のたくさんのマネジメント手法を参考にするのもいいけれど、まずはベースとなる信頼関係を構築した方がいい。
そしてもう少し詳しく書くなら、その1対1の面談において、特に(小手先の)テクニックみたいなものは必要がない、ということである。
また、その充実度についても(最初は)気にする必要はない。
とにかく定期的に繰り返すことが大事なのである。
もう既に結論を言ってしまっているような気もするけれど、今日はそんな話をしていく。
話をしている? 本当に?
多くのマネージャーと接してきて、それも時々は指導をする中で僕が思うのは、「あまりにも部下と話をしていなさ過ぎる」ということである。
彼(彼女)らは一様に、「話をしている」と言ってくる。
でも、それをよくよく聞いてみると、ちょっとデスクで話をした、タバコ部屋で冗談を交わした、飲み会でゲラゲラ笑った、その程度の話である。
もちろん、それが大事でないとは言わない。
ただ、何年もマネージャーという仕事をやってきた僕が思うのは、1対1というある種プライベートな環境において、やや固め(オフィシャル寄り)の面談をすること(繰り返すこと)の重要性についてである。
言葉の上滑り感を失くす
これは部下の腹落ち度合いに関わってくる。
マネージャーが思っている以上に、部下という生き物は上司であるマネージャーのことを信頼していない。
そしてそこには必ずと言っていいほど、「わかっていない」というイメージが含まれている。
これを覆すことは難しいけれど、そのイメージを緩和することは可能であり、それができれば、マネージャーの言っていることが部下に伝わる度合いが大きく良化してくる。
以前と同じことを言っていても、同じことをやっていても、浸透度合い大きく変わり、チーム内に流れている白けた空気というものがどんどんなくなってくる。
初心者のマネージャーが陥りがちなのが、自分の言葉が上滑るあの感じ、であるが、それを大きく減じることができるようになるのだ。
経験は如何ともしがたいが、緩和は可能
マネージャーの言葉が上滑るのは、自分に経験がなく、部下から舐められているからだ、と当時の(初任マネージャー時代の)僕は思っていた。
それはその通りだと思うし、経験がないことはどうにもできないのだけれど、それを多少なりとも緩和することは可能である、というのが現在の考えである。
その為の手法が1対1の面談だ。
テクニックは不要
これは冒頭に書いたように、テクニックは不要である。
モノの本には、「コーチング的なテクニックを駆使して1on1をやりなさい」というようなことが書いてあるけれど(というかその方が多いけれど)、そんなものは気にしなくていい。
また、何らかの成果物を出そうともしなくていい。
内容やそこでの雰囲気みたいなものも気にしなくていい。
取り敢えず決まった時間にそこにいて、話をするだけでいい。
それをひたすら繰り返していく。
自分の価値観を知ってもらう
1on1の意義は、「部下のことを知る」ことはもちろん、「自分のことを知ってもらう」ところにもあるような気がしている。
部下の人数にもよるけれど、何年も一緒に仕事をしていたとしても、上司のパーソナルな部分なんてほとんど知らない、というのが一般的であるように僕は考えている。
それは別にプライベートで仲良くしなさいということではなくて、ある種の話題に対してマネージャーがどのような反応を示すのか(価値観)、ということを継続的に理解してもらった方が仕事がやり易くなる、そんな風に僕は捉えている。
それは一度に「面談しよう!」と言って伝わるものではない。
日々の様々な出来事を通して、それに対する反応を通して、徐々に部下に伝わっていくのである。
もちろん部下も同様である。
僕たちマネージャーから見える部下というのは一面に過ぎない。
オフィスにおいて示したある反応とは逆の考え方があって、やむを得ずそのように反応せざるを得ない、なんてことも起こったりする。
そしてその信憑性みたいなものも。
だからこそ継続的に(ある種淡々と)行うことが重要なのだ。
特別なものではなく、日常に
何というか、1on1を特別なものとして捉えない方がいい。
日常におけるルーティン業務のように、日々のスケジュールに埋め込んでしまうのだ。
そうやって色々なことを話していく。
もちろん、部下によっては話が弾まないこともある。
同じ部下であっても、その時々に応じて面談の調子が変わることもある。
そういう日々を繰り返していくと、その部下の現在の状況がある程度手に取るようにわかるようになる。
厳しい言葉を言わなければいけない状況もあるし、言われる状況だってある。
やりたくないな、と思うこともそれなりに多い。
でも、それを繰り返した先に、ベースの信頼感が醸成されるのだ。
それではまた。
いい仕事をしましょう。
あとがき
1on1を殊更に取り上げるのではなく、日常化してしまうこと。
これがマネジメントの秘訣であるような気がしています。
もちろん、コーチングのような素晴らしいスキルがあれば、僕のマネジメントのレベルも更に上がるのかもしれません。
でも、何度も書いているように、僕にはコーチングというものが肌に合わないし、たぶんキャラ的に向いてもいない。
だったら、あまり難しいことを考えずに、毎週淡々と繰り返していけばいい。
そんなことを思っています。
素振りや筋トレと同じように、1回やっただけでは効果は出ません。
ひたすら継続していきましょう。