エースがいなくても、チームは作れる
エース待望型マネジメント
チームにエースがいるか否か。
それによってマネジメントの方向性は大きく変わる。
かく言う僕も、以前はずっとエースを待ち望むようなチームビルディングを行っていた(ような気がする)。
「エースがいればなあ…」とずっと思いながら、マネージャーという仕事を続けてきた(ような気がする)。
ただ、8年以上のマネージャー歴を振り返ると、実際に僕のチームにエースがいた期間は殆どなくて(累計で1年程度)、それ以外の期間はエースなしで戦っていたというのも事実である。
そして、その期間もそれなりには戦えていた訳だ。
となると、エースがいなくても、それなりのチームは作れる、と言えなくもない。
今日はそんなエースがいないことに悩むマネージャーに向けた話である。
それでは始めていこう。
エースがいないのがデフォルト
どのようなチームを作るか、ということを考えた時に(現状を分析した時に)、エースを中心としたチームにするか否か、というのは大きな分岐点であるような気がしている。
特に着任直後におけるこの選択は、その後のチームの方向性を決定づけると言っても過言ではないだろう。
大抵のマネージャーは、チームにエース(もしくはエースらしき人)がいれば、その人を中心としたチームを考えるはずだ。
僕は営業のマネージャーなので、目標に対してエースがどれくらいやってくれるだろうか、ということから考え始めて、それ以外の残った数字を他のメンバーに割り当てる、そんな順番で考えることが多い。
でも、往々にして、チームにはエースは存在しない(だからエースはエースと言われるのだろう)。
大体がどんぐりの背比べ的な能力の部下ばかりである。
ただ、そこで嘆いていても仕方がない。
むしろその方がデフォルトなのだ。
エースがいる方が例外であって、いないからと言ってそれは運が悪い訳ではない。
そのような頭の切り替えが大事である。
ボトムアップは現実的ではない
では、エースがいないチームにおいて、チームをチームとして機能させる為にはどうしたらいいのだろうか?
「全員の底上げ(ボトムアップ)」というのがよくある回答だろう。
でも、僕はこの回答には懐疑的である。
もちろん、言わんとしていることはわかる。
ただ、ちょっと現実的ではないような気がするのだ。
言葉で言うのは簡単だし、誰もが簡単にこれを口にするのだけれど、そんなに簡単に全員の能力が伸びることはない。
厳しい言い方にはなるが、これが現実である。
ましてや、そこからエースを作るなんていうのは、夢のまた夢である。
満遍なくはムリ
なので、(これも繰り返しになって恐縮であるが)「それぞれの部下の得意な分野を伸ばしてもらう」というのが僕の回答となる。
そして、この「得意」というのは、絶対基準でなくて構わない。
あくまでも、チーム内の相対基準でいい。
客観的に見てとか、社内的にどうとか、世間と比べて云々、みたいな話は不要だ。
そのチームの中で秀でていると思えばその分野を担ってもらう。
そうやって、それぞれの部下をそれぞれの分野に散らばらせる。
結果、チームとしてはデコボコの状態が出来上がる。
ある分野に人数が集中してしまったり、またある分野には誰も人がいなかったり。
それを無理に分散させなくていい。
偏りは偏りのまま運営をする。
その為には、捨てる部分は捨てなければならない。
「どの分野も満遍なく」というのは、エースのいないチームではなかなか難しいので、できる分野をできるだけ尖らせるというイメージを持ってチームを構築していくのだ。
これでチームのベースは作れる。
弱者の兵法を
もちろん、チームを運営していくにあたって、弱点がモロに露呈してしまう、ということは(相当程度)起こるだろう。
そしてその弱点に対して、会社側(上司など)は、「どうにかしろ!」と怒鳴り込んでくるだろう。
それに対しての僕の答えは、「あまり気にしなくていい」ということになる。
もっと露骨に言うなら「無視していい」。
弱点の露呈は想定通りなのだ。
というか、エースがいないチームで戦うにはこの戦法しかないのである。
それを理解せずに、外野の人(上司など)はあーだこーだ理想論を言ってくるけれど、そんなものは受け流せばいい(もちろんしっかりと聞いていますよという態度は重要だ)。
どちらにせよ、成果が上がらなければ一緒なのだ。
上司の意向通りのチームを作ったとて、成果が上がらなければ何にもならないのである。
だったら、とりあえず成果を出してしまった方が良い(成果が上がる可能性が高い道を選んだ方が良い)。
僕はそう思うのだ。
時間を稼ぐためには、手っ取り早い成果が必要だ
そして、ある程度成果が継続的に出せるようになれば、会社(上司)はあなたに時間の猶予を与えてくれるようになる。
評判というのは、何よりもの力だ。
マネジメントにはある程度時間が必要であるから。
その与えられた時間の中で、また次の一手を考え、チームのベースを一段上げていく。
それを繰り返す。
いつしか、エースはいないけれど、それなりに戦えるチームが構築できているはずだ。
それではまた。
いい仕事をしましょう。
あとがき
ボトムアップ。
僕はこの言葉に嘲笑的な感情を抱いてしまうことがあります。
響きは良いですが、理想論的過ぎる。
お花畑が過ぎる。
社会人というある程度の年齢になってしまった人たちが成長する可能性は、「新卒3年以内」以外ほとんどない。
大雑把ですが、僕はそんな残酷なことを思っています(というか、成長する人は誰がマネージャーであれ、勝手に成長するはずです。マネージャーが成長に寄与できるはずなんて考え自体がおこがましいとすら思ってしまいます)。
僕たちの仕事は、そのような残酷な現実をしっかりと受け止めた上で、チームとして戦えるレベルまで持っていくことです。
外野の戯言を嘲笑いながら、現実的な戦術を取り、勝っていきましょう。