来る者は拒まず、去る者は追わず
「距離が近い方が無条件で良い」という価値観への違和感
マネジメントにおいては距離感が大事だと思っている。
これは近すぎても遠すぎてもいけない。
ほどほどの距離。
それがマネジメント(仕事も? というか人生も?)においては重要である。
そして、多くのマネージャー達を見てきて僕が思うのは、自分から近づかない方がいいよ、ということである。
多くのマネージャーは、部下との距離をできるだけ詰めようとする。
そしてそこには「距離感が近い方が無条件で良い!」という暗黙の価値観(それもその距離の近さの判定をマネージャー側が行っている)があるような気がしている。
僕はそれに違和感を覚える。
今日はそんな話である。
職場に気の合う人がいる方がおかしい
僕は人間に興味がない。
というか、職場の人間に興味がない。
それは部下に対しても同様である。
幼少の頃から僕は友達が少なくて、それについて悩んでもいなくて、学校のクラスなんてものは、たまたま同じ年齢で同じ地域に住んでいる人達が集められただけのものであり、そこで気の合う人がいるなんて運が良過ぎるのではないか、という(ませた)考え方を持っていた。
それは社会人になっても変わらない。
職場で出会う人なんてものに、何か特別なものを求める方が図々しいのではないか。
僕はそのような(醒めた)人間観(人間関係観)を持っている。
もちろん、そこで出会う人の中には、気の合う人だって時々はいる。
そのような人とは親交を深めておけばいい。
ただ、「それ以外の人」が圧倒的多数を占める。
だったら、それでいいのでは?
僕はそう思ってしまうのである。
「仲良くなろうぜアプローチ」への違和感
でも、多くのマネージャーはそうではないように見える。
皆、職場の人や部下と距離を近づけることが無条件で良いことだと思っているように見える。
僕はこの種の「仲よくなろうぜアプローチ」があまり好きではない。
もちろん、それによって仕事におけるパフォーマンスが向上し、成果が上がる可能性はそれなりにあると思う。
でも、そこには距離を詰めた結果生まれるデメリット(例えば人間関係のギスギスしたものなど)は考慮されていないように思える。
家族や友人や恋人のような人間関係と、職場の人間関係は同様ではないと僕は思うのだけれど、どうも多くの人達はそうは思わないようである。
「人間は皆仲良くすべきだ」というような思想。
理解はできるけれど、「不可能だろう?」と僕は思ってしまう。
それも職場の人間関係において実現できるなんて思っているのはユートピア過ぎるだろう?
僕はそう思うのである(だから僕には友達が少ないのだろう)。
程々の距離感が正解
僕が9年近くマネージャーをやってきて思うのは、マネジメントにおいては程々の距離感が一番上手くいく、ということである。
それは僕のキャラクターが関係していないとは言い切れない。
もっと人間に興味があり、人類愛を持っているような人であれば、距離を詰めれば詰めるほど、良いマネジメントができる場合だってあるだろう。
でも、上記したように、僕には人間への興味がない。
人類愛はないとは言えないけれど、目に見えるような近い人たちに対する感情とはちょっと異なるものでもある。
となると、僕にとっては、あまり距離を詰めない方がいい、という結論になる訳である。
部下と良好な関係性を築けていないから成果が上がらないのでは?
もちろん、これがどのマネージャーにとっても有効だとは限らない。
ただ、少なくとも「やってみる価値はあるのでは?」とは思ってしまうのである。
それは多くのマネージャーが成果を上げられていないからであり、その(大きめの)要因の1つとして、部下との人間関係が上手く行っていないからである。
いや、彼(彼女)らはそうは思っていないと思う。
「私は部下と良好な関係を築いている!」と主張するだろう。
でも、一方で、彼(彼女)らは部下の愚痴ばかり言ってもいる。
自発性のなさや、その受動性について、さんざん文句を言っていたりする。
それを自分のマネジメントのせいだとは全く思わずに。
僕にはこれが理解できない。
共依存関係
部下に自発性がないのは(部下が受動的であるのは)、その部下の生来の資質であるというのは否定できない事実だろう。
でも、その生来の資質を助長しているのは、あなたのマネジメントである可能性については疑わないのだろうか?
厳しい言い方かもしれない。
でも、近い距離間というのは、依存性を育むものでもある。
部下が自分で考えようとしないのは、あなたがその距離を詰め過ぎていて、あなたに甘えているだけなのでは?
そして、そのような甘えられる自分に、あなた自身が有能感を感じているからなのでは?
共依存関係。
それはマネジメントにおいてよく見られる傾向である。
そしてそれを社会的にも良いものであると見做しているように僕には思える時がある。
仲良しごっこ
「人間は皆仲良くすべきだ!」
「職場は円満であるべきだ!」
それはその通りだろう。
ただ、それが病的である可能性もあるということは疑ってもいいのではないかと僕は思うのである。
大事なのは成果である。
職場は仲良しクラブではない。
というか、仲良しですらないのに、仲良しぶっていることに僕は辟易している。
嫌な話になった。
それではまた。
いい仕事をしましょう。
あとがき
距離感を掴むことが下手。
最近の若手を中心に、このようなことを感じることが増えてきました。
付かず離れずの関係性というのは、自然に構築できるものではなく、それなりの経験値とスキルがあってこそ成り立つものです。
それがわからずに、距離を詰め過ぎたり、離れ過ぎたりするのが、最近の傾向のようであり、そこに僕は幼稚さを感じます。
依存でも断絶でもない、ほどほどの距離感。
それが成熟ということなのではないでしょうか?
友達の少ない僕はそんなことを思ったりします。
そんな僕ですが、引き続きご愛顧頂けたら幸いです。