手の平を返さない

UnsplashLiane Metzlerが撮影した写真

できないことを吹聴するのはやめようぜ?

「中間管理職は、上からも下からも文句を言われ大変だ」

これが定説である。

というか、実際問題として、このような板挟みが平常運転であり、その中でどのように振舞うかが問われ続ける、そう言っても過言ではないと思う。

その中で大事なことを1つ。

それは「手の平を返さない」ということである。

もう少し詳しく言うなら、「手の平を返す可能性があるなら部下の意見なんて取り纏めない方がいいし、何なら自分の権限の範囲で押し留めてしまった方がいい」ということである。

調子の良いことを言って、手の平を返す上司ほど嫌われるものはない。

今日はそんな話である。

的を射た不満への対応

現場からの意見。

部下から何らかの不満が生じ、それがそれなりの熱量を持っている時、あなたはどのように行動するか?

たとえば、「こんな予算じゃできませんよ!」であるとか、「会議が多すぎますよ!」であるとか、そのような種類の不満。

そして、その不満がそれなりに的を射ている場合。

あなたはそれを自分の上司に伝えるだろうか?

また、伝えるとしたら、どのように伝えるだろうか?

覚悟がない兄貴がたくさんいる

ここでよくやるムーブが、「オレがガツンと言ってやるよ!」的な、兄貴的な動きをすることである。

現場のことを何もわかっていない上司に対して、現実をわからせるように動き、それが結果として部下の為にもなると考えること。

それ自体は何も悪くない。

ただ、その実現可能性については考慮しておいた方がいい。

もっと言うなら、考慮した結果、実現可能性が薄くても尚、言わなければならないとするなら、途中で手の平返しをしてはいけない、ということになる。

これは裏を返せば、旗色が悪くなってくると、急に意見を変える中間管理職がたくさんいることを意味してもいる。

覚悟がないなら、始めから兄貴気取りはしない方がいい。

自分の責任の範囲の中で、出来ることだけをやった方がいい。

それが今日の結論である。

嫌われ役を押し付けない

これは「責任を持つ」ということにも繋がる。

何らかの部下からの意見に対し、出来ることと出来ないことを分け、出来ないことは出来ないと自分の責任の中で押し返すこと。

それを会社のせいにしたり、上司のせいにしたりしないこと。

ここで日和ってはいけないのだ。

多くの中間管理職に見られるのは、ここで部下のご機嫌を取ろうと、そのままの意見を自分の上司にぶつけ、結果採用されずに、その上司や会社に対して文句を言うことである。

もっと言えば、その過程の中で、徐々にその主張を弱めていき、「自分はそうは思ってはいないんですけど、部下がそのように言ってまして…(私も困っているんですよ)」というようにフェードアウトをすることである。

さらに、そのフェードアウトしたことは部下には見せず、「いや、ガツンと言ってやったんだけど、全然ダメでさ。ホントあいつ(or会社)は現場のことわかってないよな」と上司や会社のことを悪く言う場合すらある。

これは本当に良くない。

言うなら、それだけの覚悟を持って言うべきだ。

少なくとも、自分が上司や会社から糾弾されるリスクを負ってすべきである。

それができないなら、その覚悟がないなら、自分が嫌われ役を買って出るしかない。

部下に良い格好をするのではなく、自分の裁量の中でそれを断り、進んで嫌われていくのである。

嫌われる勇気

上記したような、ある種真っ当な部下からの意見具申。

でも、会社や上司の現状を考えると、どうにも実現が難しそうな場合。

また、部下の気持ちは理解はできるけれど、組織的な動きとしては疑問が残る場合。

そんな時には、自分がその壁となって、跳ね返すべきなのである。

もちろん、そこには自分なりの意見を添えてもいいと思う。

ただ、会社や上司(だけ)に責任転嫁するのではなく、自分も組織の一員であり、その立場からそれを拒絶することも忘れてはならない。

結果、「使えない上司」「わかっていない上司」とレッテルを貼られることも厭わないようにすること。

それが大事である。

判断と責任

これは大きく言えば「判断」である。

マネージャーの仕事は「判断」の連続である。

意見が通るものだけを上に伝えるだけではダメで、まだ上からの意見をただ下に降ろすだけでは論外で、そこにマネージャー自身の判断が含まれている必要がある。

ある種のフィルター。

そして、判断には責任が付いて回る。

「上司がー」とか「部下がー」とかいうような言い訳(や責任転嫁)をするのではなく、自分がどのように判断したのか、それを的確に表明し、旗色が悪くなってきたからと言って、手の平を返さないこと。

結果、それに伴う毀誉褒貶も被ること。

それが中間管理職の仕事である。

部下の代表としての自分と、会社の管理者としての自分

難しいことを言っているとは思う。

でも、あなたは部下の代表であると同時に、会社側の人間でもあるのだ。

そして、だからと言って、あなた自身の個性を消滅させる必要はない。

この辺のバランス感覚。

だからと言って、上手く立ち回れ、という意味ではないニュアンス。

これが出来た時、気づけば上司からも部下からもそれなりに信頼されるミドルマネージャーとなっているはずだ。

それではまた。

いい仕事をしましょう。

あとがき

中間管理職としての振る舞い。

これは数ある仕事の中でもかなり難易度が高いものだと思います。

だからこそみんな中間管理職について嘆くのでしょう。

でも、9年以上その仕事をやってきた僕が思うのは、没個性も超個性も違う、ということです。

というか、結局のところ、責任を取る覚悟があるかどうかが大事ということなのだと考えています。

手の平を返したくなるのは、自分が糾弾されることへの恐れがあるからです。

それを克服できた時、「そんなの関係ねえ!」と小島よしお的ムーブができた時、中間管理職というのは結構面白くなってきます(もちろん開き直り過ぎるのも問題ですが…)。

覚悟を持って仕事をしていきましょう。