ホウレンソウのハードルを下げる

UnsplashAmanda Frankが撮影した写真

部下から情報が上がらなくなってしまうのは…

マネジメントという仕事を続けてきて、つくづくリスクだと思うのが、部下から情報が上がってこなくなることである。

これは何か分かり易い出来事があって、そうなる訳ではない。

だんだんと、いつの間にか、情報が上がらなくなってくるのである。

これは部下との距離が開いてしまっていて、「何となく相談しづらいな…」とか「忙しそうだな…」とか「また次回にしよう…」ということが積み重なった結果起きる事象である。

でも、平常時はそんなことは意識にも上らない。

重要なインシデントが起きてから、「そういえば…」という形で露見するのである。

この種のマネージャーはその際、「聞いてなかった」「報告がなかった」というような釈明(言い訳)をする。

確かに部下側に問題があることもあるだろう。

でも、数多くのマネージャーを見てきた僕が思うのは、大抵の場合、マネージャー側に大きな問題がある、ということである。

そして、そのような事態を防ぐ為には、ホウレンソウ(報告・連絡・相談)のハードルを下げることが必要となる。

それでは始めていこう。

部下にホウレンソウを意識させない

まず前提として、僕はこのような事態になったことは殆どない。

一歩手前くらいには行ったことがあるけれど、すぐに引き返してくることができた。

それはなぜか?

暇そうに仕事をしているからである。

もう少し詳しく言うなら、敢えてホウレンソウという形を取らなくても、自然とホウレンソウが行われているような関係性を構築しているからである。

構えずに、気軽に、報告や連絡や相談が行えるような状態。

それを報告や連絡や相談であると部下側が意識すらしていない状態。

それが情報が上がってくる為にはとても重要である。

部下の話を聴く

では、そのような関係性を構築する為にはどのようにしたらいいのだろうか?

当たり前のことであるが、部下の話を聴く、ということである。

それもどんな時であっても。

デスクに座っている時、立ち話、ランチタイム、まあシチュエーションは何でもいいのだけれど、部下が話を始めたら、その話に意識を集中させる。

キーボードを叩きながらとか、他のことを考えながらではなく、その話に意識を向ける。

たかだか1分か2分の話である。

どんなに忙しくても、それくらいのことは出来るはずだ。

というか、本当ににっちもさっちもいかないくらい忙しいなら、そのようにきちんと話をすればいい。

そして、その仕事を片付けたら、部下のところに行って、「さっきはごめん。で、話って何だったの?」と言えばいいのだ。

簡単なことである。

バレてまっせ

でも、これができるマネージャーはそんなに多くない。

大体の人は、殆ど部下の話なんて聞いてもいないから。

そして、それを部下にはバレていないと思っている。

そんなことはない。

100%に近いくらいバレている。

だから情報が上がってこなくなるのだ。

それをやめること。

それだけで、少なくとも本当にクリティカルな情報が入ってこなくなるような事態は防ぐことができる。

部下の意見を採用する

次は、これをもう1歩進める。

もう少し手前の情報、きな臭いとか煙たい話まで入ってくる為にはどうしたらいいのだろうか?

色々あるとは思うのだけれど、部下の意見を採用する、というのが割と簡単で効果的なのではないか、と僕は思っている。

例えば、上記のようにフラッと部下が相談しに来たとする。

「こんな風に考えているんですけど、どう思いますか?」というように。

その際に、「確かに面白そうだね。それでやってみようか」と答えること。

そして、実際にやらせること。

そのようなことを繰り返していくこと。

それが更に広い情報が上がってくる為には必要なことであると思う。

カジュアルな情報が上がることが大事

部下とこのような関係性が築けると、必要な情報だけでなく、様々な気づきが部下から上がってくるようになる。

これは「懐いた犬」みたいな感じ(ちょっと例えが良くないが…)で、何というか、褒められたいという感情がそこに混じるようになるのである。

尻尾を振りながら、「ボス、あそこにホネが落ちていたでやんす」みたいな感じで、カジュアルに情報が上がってくるようになる。

もちろん、その情報は玉石混交で、いい情報もあるし、そうでもない情報もある。

それらに対して、率直にモノを申せばいい。

既に関係性が出来ていれば、このようなコミュニケーションも問題なく行われるようになる。

それが重要なのだ。

「ホウレンソウをしよう」と意識した時点で壁ができている

「カベをなくすこと」

「心理的障壁を排除すること」

口で言うのは簡単だ。

でも、実行するのはなかなか難しい。

ただ僕が思うのは、部下が「ホウレンソウをしよう」と思った時点で、もうそこには壁が存在している、ということである。

障壁がなくなっていれば、敢えて「ホウレンソウしよう」とは思わなくなる。

ただの雑談や、駄弁りのようなものになる。

そこにたくさんの素晴らしい情報が眠っている。

ホウレンソウを忘れさせる

気楽に話してもいいのだと部下側に理解して貰うこと。

そして、それを継続していくこと。

いつしか、ホウレンソウをしているということすら忘れさせてしまうこと。

それが我々マネージャーがマネージャーという仕事を続けていく為のコツである。

それではまた。

いい仕事をしましょう。

あとがき

「上司に報告する」というのは、僕でさえ「よいしょ」と腰を上げなければ難しいものだと感じています。

それは上司との間に心理的障壁があるからです。

「こんなこと言ったら怒られるだろうか」

「こんなこと言ったら馬鹿だと思われるだろうか」

そのような心配が、カジュアルな報告を阻害します。

大切なことは、報告を報告だと感じさせないことです。

暇そうに仕事をしてきましょう。