マネジメントが上手くいっていないなら、対話時間を増やしてみたら?
マネージャーは忙しい。が…
マネジメントが上手くいかない、という相談を受けた。
内容を聞いていると、大小さまざまな問題はあるにせよ、取り敢えず人と話す時間が圧倒的に少ないと感じたので、そのようにアドバイスをした。
すると、「いや、でも忙しくて…」という返答。
まあ、気持ちはわからなくはない。
マネージャー業は兎角忙しいから。
ただ、更に詳細を聞いてみると、単純に優先順位の付け方や、仕事の「捨て方」がイマイチだなと感じたので、それを話すとともに、それによって捻出された時間を対話に充てた方がいいよ、ということを重ねてアドバイスした。
これを纏めると、下記のような形になる。
マネジメントには対話が必要。
でも、時間がない。
だったら、作るしかない。
作る為には、仕事を減らすしかない。
大体のマネジメントにおける問題は、上記のような経路を辿れば快方に向かうものだ。
そして、その中でも今日は対話時間について書いていこうと思っている。
それでは始めていこう。
家族ですら、あまり対話をしていない
「あなたは家族のことをどれだけ知っていますか?」
そんな質問から本文を始めてみる。
そうなのだ。
どれだけ同じ時間を共にしていたとしても、案外家族のことは知らないものである。
もちろん、そこらへんにいる他人と比べると、知っている絶対量が圧倒的に多いことは間違いない。
ただ、日々生活していると、「あれ? こんな考え方するんだ」とか「お? そんな風に思うのね?」ということがそれなりの頻度で起こる。
特に、話題がやや深い所に向かうと、日常で覆い隠されていた価値観の芽のようなものが顔を出す。
その度に驚きがある。
これを振り返ってみると、家族でさえ、「対話」をあまりしていないことに気づく。
いや、確かに「会話」はしているのだ。
でも、「対話」はあまりしていない。
それも、別に避けている訳ではなくて、日々の忙しさにかまけて、「ただそうなっている」「そうなってしまっている」という状態なのである。
意識的に対話の時間を作る必要がある
これは仕事においても同様である。
というか、事態はもっと悪い所にある。
当然ながら、職場にいる同僚は他人に過ぎないので、そこまで深く話す機会はない。
もっと正確に言うならば、意識的にそれを作ろうとしなければ、そのような機会が生まれることはない。
それなのに、その人のことをよく知っているなんて言えるはずがない。
よく知っていなければ、マネジメントなんて上手くいくはずがない。
そのように思うのである。
深さをもった対話が必要
何年もマネジメントという仕事をやってきて思うのは、部下に機嫌良く働いてもらうことが何よりも重要で、その為には彼(彼女)らがどのような価値観を持ち、どのように働きたいのかを知っていることが必要である、ということである。
それと同時に、マネージャーがどのような価値観を持ち、どのように働きたいかを、部下にも知ってもらう必要もある。
一方通行ではダメなのだ。
双方向の理解が必要となる。
その為にはとにかく話をするしかない。
それも価値観がわかるくらい、それなりの深度を持った話をするしかないのである。
飲みニケーションは現代では不可能
以前であれば、これは「飲み会」というものである程度代用できたのだと思う。
「日本人・男性・正社員」が圧倒的多数を占めた同質性の高い職場においては、それもマネージャーに権威が存在した時代においては、皆で飲みに行って、皆で腹を割って話をする、ということはある種普遍的なものであった(良いとか悪いとかは別として)。
でも、現代は違う。
様々なバックグラウンドを持った人たちが同じチームに当たり前のようにいて(それもリモートワークなんてものも普通になって)、チームの全員が一堂に会するというのは至難の業となった。
ただ、やることというか、大事なことは変わらない。
彼(彼女)らに気持ち良く働いてもらわなければ、成果なんて上がらない。
だとすると、その気持ちよく働いてもらう為に必要なことを理解する為に、それぞれと個別に話をするしかないのだ。
時間はかかるが、十分お釣りはくる
確かに、部下の人数が増えれば増えるほど、この時間の捻出はとても大変なものになる。
20人ほどの部下がいた時には、仕事の多くの部分が1on1によって埋められていたというのも事実である。
ただ、それを加味しても、余りあるほどの意味があると僕は思うのである。
というのも、マネージャーの仕事はレバレッジを掛けることだと思うからだ。
レバレッジを掛けよう
プレイングマネージャーが自ら動くことは現在の環境下では致し方ない面はあると思うけれど、残念ながらそれではいつまでも仕事にレバレッジを掛けることはできない。
プレイの時間を減らし、その分を部下との対話に充てる。
その方が、(回り道のように見えるかもしれないけれど)成果が上がるのだ。
確かに怖いとは思う。
自分が暇そうにしていて、成果も上がらないとなると、言い訳をする余地がないから。
でも、それをやってみて欲しい。
勇気を持って、「日常業務」を部下に委任し、自分は部下との対話に時間をかけてみて欲しい。
そうすれば世界が変わるはずだ。
それではまた。
いい仕事をしましょう。
あとがき
「対話が必要だ」ということを言う(書く)と、1回の面談に力を入れよう(時間をかけよう)とする人が一定数現れます。
ただ、僕が経験上思うのは、1回の面談に力を入れるよりも、短くてもいいから繰り返し行うことが重要、ということです。
心理学的に言うならザイアンス効果(単純接触効果)みたいなもので、内容云々よりも面談を繰り返すこと自体に意味があると考えて気楽に取り組んで頂けたらよいのではないか、と僕は考えています。
ひたすら対話をしていきましょう。