レベルとカンスト
「部下は基本的に成長しない」という残酷な現実
今日は部下の育成について書いていこうと思う。
多くの人は、「部下は手を掛ければ掛けるほど能力が伸びていく、だからマネージャーはそれに手を貸すべきだ」と考えているように僕には見える。
本当にそうだろうか?
確かに言わんとしていることはわからなくはない。
ただ、そこには「願望」の要素が強めに入っているように思えるのだ。
何年もマネージャーをやってきた僕が思うのは、「部下は基本的に成長しない」という残酷な現実である。
それをもう少し丁寧に説明する際に、「レベルとカンスト」という概念を思いついたので、今日はそのことについて書いていこうと思っている。
それでは始めていこう。
単純化のきらいはあるが…
冒頭に「部下は基本的に成長しない」ということを書いた。
これは話を単純化する為に言い切ったものであり、やや正確さに欠ける表現である。
だから「レベルとカンスト」という概念を基に、もう少し丁寧にこの話を切り分けていく(王道のRPGゲームを思い浮かべながら読んで頂けると多少は理解が深まると思う)。
レベル上限は99ではない
部下には、初期レベル(もしくは初期値)とレベル限界(カンスト値)がある。
そして、それは部下によって異なるものである。
一緒にパーティを編成する中で、様々な経験を積む中で、それぞれがレベルを上げていく(時々レベルアップの際の「あの音」が聞こえてくるはずだ)。
その中には「初期レベルは低いが、レベル限界は高い者」や「初期レベルは高いが、レベル限界は低い者」、「初期レベルもレベル限界も低い者」「初期レベルもレベル限界も高い者」などがいる(もちろん、その中間にも無数に存在する)。
ただ、多くの人は、初期レベルの概念は理解していても、カンストの概念はあまりわかっていないように僕には思える。
どの部下も「レベル99」まで成長することが当たり前の前提として捉えられている、そんな印象を受けるのだ。
そして、チーム全員(パーティ)がレベル99まで成長すれば、それなりの強敵と(何ならラスボスと)戦えるようになっているはずだ、と思っているように感じられる。
断言する。
そ ん な こ と は な い ぜ 。
レベルが低ければ、能力も低い(たとえスキルがあっても。強い装備があっても)
ここに更に概念を加えていく。
多くのマネージャーができることは、「レベルアップに資するような経験を積ませる」ということももちろんあるだろうけれど、「それぞれにスキルを覚えさせる」ということもあると思う。
また、「それなりに強い装備を付けさせる」ということもあるだろう。
想像して欲しい。
強いスキルと強い装備を付けたメンバー。
でも、レベルが低く、能力値も低いまま(ただカンストはしている)。
そんなのでラスボスと戦えると思いますか?
一撃で死んで終わりだろう?
カンストレベルは20くらいが普通
ここには「成長思想」があるように僕には思える。
「人間は柔軟であり、成長に限界はない」というような考え方。
冒頭に書いた「手を掛ければ掛けるほど能力が伸びていく」という思想。
まあ言いたいことはわからなくはない。
でも、そこにはカンスト値はあると僕は思うのだ。
そして、大抵の部下のカンストレベルは大体20くらいだろう。
酷いことを言っているかもしれない。
ただ、実際に仕事をしていると、否が応でもそのことを感じざるを得ないのだ。
ステータスがどこまで伸びるか
「初期値の低さ」というのはそこまで問題ではない。
もちろん高いことに越したことはないけれど、大事なのは経験と共にどこまで伸びていくかである。
ただ、それは永遠に続くわけではない。
どの部下にもレベルカンストはあって、そこまで伸ばすのは確かに我々マネージャーの仕事なのかもしれないけれど、それ以上のことは中々難しい。
一生懸命スキルを覚えさせたり、装備を強いものに代えたり、それなりにできることがない訳ではない。
ただ、元々のステータスが低ければ、どんなに有用なスキルも装備も、その効果はたかが知れている。
作戦でどうにかなる(こともある)
これは何も部下の能力の低さをディスりたい訳ではない。
我々マネージャーが考えるべきなのは、「部下を成長させる」ことだけでなく、「部下をどう使うか」ということでもあるということを言いたいのだ。
レベルが低くても、カンスト値が大したことなくても、その組み合わせ(パーティ編成)によって、それなりに戦うことは可能だから。
そのような作戦を考えること、実践することが、我々の仕事だから(僕がよく言う「戦略」というものである)。
マネージャーの責任の範囲とは?
でも、それと同時に、その限界点というのも知っておく必要があるようには思う。
部下が成長しないのも、ラスボス相手に1ターンで全滅してしまうのも、全てあなたのマネジメントに責任がある訳ではない。
もちろん、それによってマネージャーが免責される訳ではない。
成果が出ないこと、その報いは受けなければならない。
ただ、それを全て自分のせいだと思う必要はないように思うのだ。
ある種の責任転嫁。
それはあなたの苦悩を多少なりとも楽にしてくれるものだと僕は思っている。
適度に人のせいにしていきましょう。
それではまた。
いい仕事をしましょう。
あとがき
「部下が成長しないのはマネジメントが悪いからだ」
この話は間違っているとまでは言えないまでも、僕にはやや疑問です。
というのも、僕自身誰かにマネジメントされて成長したという実感はないからです。
また、自分が見てきた部下で大きく成長した部下が自分のマネジメントのおかげであるとは到底思えないからです。
本文にも書いたように、多くの部下にはカンストレベルがあって、それは思っているよりも低いものです。
成長限界を知り、その後はどのようにその能力を発揮させるかに意識を向けていきましょう。