政治的駆け引きを排除する
脊髄反射的に反対をしてくる人
新しい試みを実行しようとすると、政治的な力を使ってその動きを潰そうという勢力が現れる。
それはなにも大きな組織だけでなく、チームというような小さな単位でも生じる。
想像してみて欲しい。
あなたのチームにも「とりあえずネガティブな反応を示す」メンバーがいないだろうか?
こういう人は現在の環境を少しでも変えることに我慢がならない。
自分の現在の地位が脅かされることに耐えられない。
その改革の「中身」で判断するのではなく、「脊髄反射」でNOを突きつけてくる。
新しいチームにあなたがマネージャーとして赴任してきて、まずぶち当たるのがこの壁だ。
チームがうまくいっているのであれば、前例踏襲というのは悪いことではない。
でもチームが全く機能していないのに、自分の保身の為だけに改革を止めようとする人物はできるだけ排除した方が良い。
排除が難しければ、脇に追いやっておいた方が良い。
個室に呼び出されてくぎを刺される
たちが悪いことに、こういうメンバーはマネージャーの上司(もしくはもっと偉い人)への影響力を持っていたりする。
懐柔されているとまでは言えなくても、上司は上司でまともに対応するのが面倒なので、とりあえずほったらかしておいている、というような立ち位置にいる人は大勢いる。
そういう状況下で新しいことをやろうと意気込んでいると、1週間くらいしてあなたは上司の部屋に呼ばれることになる。
「いやいや、君のやっているあの新しい試みだけど、あんまり評判が良くないみたいなんだよね…」
というような形でくぎを刺されることになる。
「まだ君も来たばかりだし、もう少し穏便に事を進めてみたらどうかな」
これは僕が実際に直面した状況だ。
部屋から出てくると、たぶん告げ口したであろう奴が、ほくそ笑んでいる。
思い出しても腹が立ってくるが、こういう状況はマネージャーが意欲的であればあるほどよく直面する事態だ。
ある程度の経験を積んだ今でも、白けた雰囲気や嘲笑というものから、誰一人味方がいない状態から、物事を始めることはある。
まず1人の味方を見つける
そういった時にどう打開するか?
ある程度マネージャーとしての実績があれば、そういうものは雑音として黙らせておけるようになる。
例え上司が口を挟んできたとしても、過去の実績を盾にして突っぱねることができるようになる(それで結果が出なければ、責任を取ればいいだけのことだ)。
一番良くないのは、ここで安易に妥協して、中途半端な状態で改革を進めようとすることだ。
折衷案といか妥協案というか、牙が折られた状態というか。
個人的には、こういう中途半端な状態にするくらいなら、すっぱりその改革は諦めて、周りを固めることに専念した方がいいと思う。
もう少し仲間を増やしてから再度挑戦した方が良いと思う。
大事なのはチーム内に1人味方を見つけることと、上司のオーソライズを取ることだ。
チーム内の味方というのは、別にベテランでなくても構わない。
むしろ新人とか若手の方が味方に引き入れやすい。
現在の体制(固定化した体制)に不満を抱いていることが多いからだ。
メンバーの前では発言できないが、1対1の面談の中や、飲み会の席等で、こういった話がぽろっと出たりする。
孤軍奮闘だと思っていたあなたに希望の光が灯る。
これだけでだいぶ違ってくる(「1人の味方を見つけよう」参照)。
上司の言質を取って、運命共同体であることを認識させる
次は上司のオーソライズだ。
これは上司のタイプによってもちろん異なるのだけれど、一般論で言うのであれば、「改革したいのか」「改革しなくてもいいのか」を問うことだ。
チームの状態が悪いことはその上司も当然把握している。
それを変えなくてはならないのはその上司も当然把握している。
でも、既得権益やめんどくさいヤツの反発で手を付けられないままでいる。
(それは僕から言わせればその上司に勇気がないだけなのだけれど、それは脇に置いておく)
そんな状況であなたは上司の個室に呼ばれることになる。
「いやいや、君のやっているあの新しい試みだけど、あんまり評判が良くないみたいなんだよね…」
「まだ君も来たばかりだし、もう少し穏便に事を進めてみたらどうかな」
という例のアレが出てきたところで、
「そうですか…。じゃあやめましょうかね。でも、それではチームは停滞したままになると思います。当然ながら結果も出ないでしょう。それでもいいですか?」
とまずジャブを打つ。
大抵の場合、こういう(勇気のない)上司はタヌキなので、「いや、そうは言っていないんだよ。もう少しゆっくりやったらどうか、ということであって…もごもご」
と何とも煮え切らない態度になるので、さらにジャブを重ねる。
「ゆっくりやってきて成功しましたか? 成功していないから今の状態なのではないでしょうか? 変えるなら新しく僕が来たこのタイミングです。僕を悪者にしても構いません。というか、その為に僕を呼んだのではないのですか?」
ということを、ごく丁寧に、社会人としての節度を失わずにやんわりと伝える。
その場合、その上司の腹の中ではこんな計算が行われる。
「現状の成績ではマズい。オレの今後の昇進に響くくらいの体たらくだ。何とかしなくてはならない。でもそれができるのか? こいつはできると言っている。だが、まだ若いし経験もないし、イマイチ信頼できない。うーん…。どうしようか…。まあ、とりあえずやらせてみて、上手くいかなかったら、こいつのせいにすればいいか。あの面倒なヤツにはテキトーにいい顔しておいて、オレが悪者にならないようにしよう。矛先がこいつに向くように仕向けよう。うん、そうしよう」
という打算的な計算が超高速で行われた後、こんな風に言われる。
「確かに君の言う通りだ。いや、というか、君がどのくらい本気かを知りたかったんだよ。まあうまくやってくれよ(失敗したらただじゃおかないからな)」
これで十分だ。
ここで大事なのはとりあえず言質を取ることと、運命共同体(成績が上がらなければ自分の身も危うい)であることを認識させることだ。
これが済んだら改革を始める。
やりたいようにやる。
それで失敗すればそれだけの力量しかないということだ。
少年ジャンプみたいな展開を目指して
僕はタヌキの化かし合いのような政治的駆け引きにうんざりしている。
虎の威を借りる狐のような部下達に愛想を尽かしている。
それに簡単に騙される上司達にも呆れかえっている。
でも、結果を出さなければ、大きなことも言えなくなる。
だから、結果を出す。
そしていつかそいつらにざまあみろと言う(実際は言わないけど)。
そんな少年ジャンプみたいな展開を僕は何度もやり遂げてきた。
そこには手痛い失敗もたくさんあった。
思い出すだけで胃が痛くなることが山のようにある。
あなたにはそうなって欲しくない。
そう思って僕はこんなことを書いている。
それではまた。
いい仕事をしましょう。
あとがき
不満ばかり言っていて対案を出さない人は山のように存在します。
そしてそういう人は建設的な議論というものもできません。
地下に潜って、ただ他人の足を引っ張っているだけです。
そしてそういう人に付和雷同している人もたくさんいます。
会社が順回転している時にはそれでもいいと思うのですが、残念ながら昨今はそれで生き残れるほど甘くはありません。
勝手に沈むだけならまだしも、纏わりついてくるからたちが悪い。
一掃することは不可能でも、数が減らせたらもう少し良くなりそうなのにな、と僕は考えています。
少なくとも自分がそうならないように気を付けたいと思います。