自発性を奪う上司

UnsplashNiklas Hamannが撮影した写真

自発性を持つ部下を育てるには?

以前、優秀さの条件について「自分で考えて動ける」ということを書いた。

そして、そこに無意識性(無意識に問いが発露してしまう状態)があれば尚良い、というようなことを添えたような気がしている。

さて。

そのような部下はどうやったら育てられるのだろうか?

「それは天性のものだ」という希望のない答えを持ちながら、僕はこの問いに答えてみようと思っている。

「優秀な人は育てることができない。それは才能であるから」

「では、優秀とまでは言えなくても、そこに近づける為にはどうしたらいいのだろうか?」

「恒常的な自発性を持つことは難しくても、一時的(時折)自発性を持つことはできないのだろうか?」

このような議論の派生。

また、そこから導かれる新たな疑問。

「もしかしたら、上司が自発性を奪っている(芽を摘んでいる)ことはないのだろうか?」

今日はそんなことを書いてみようと思う。

多くの人は言われたことをやる方が楽なようだ

「自分で考えるよりも、人から言われたことをやる方が楽」

そのようなことを感じることがある。

でも、僕自身は人から言われたことをやることが、それもやり続けることが苦手である。

ただ、多くの人はそうでもないのではないか、と思う時があるのだ。

マイクロマネジメント型とアイディアマン型

それはマネージャーになってからより強く考えるようになった。

僕は自発性を尊重することがマネジメントにおいて大事なことだという考えを持って仕事をしてきた。

だから、あまり直接的な指示をしないように心掛けてきた。

でも、中には(というか大半の人は)何か具体的な指示があった方が仕事がし易いそのような環境を無意識的に求めている、ということがわかってもきた。

そして、そのようなマネジメントをしている人がたくさんいることも。

また、このタイプのマネージャーには2種類いて、意識的に部下にやらせることを細かく指示するタイプ(マイクロマネジメント型)と、無意識的に部下の自発性を削ぐタイプ(アイディアマン型)がいるような気がしている。

いつもは前者について書いているので、今日は後者のタイプについて書いていこうと思っている。

部下よりも良いアイディアを先に出してしまう上司

「上司が優秀であると、部下が育たない」

ちょっと定義としては乱暴であるけれど、そのような傾向はあるような気がしている。

ただ、ここで言う優秀というのは、実際に仕事ができるか否かということではなくて、部下の創発性に先回りして、それよりも良いアイディアを出してしまう、ということを意味する(ことにする)。

また、ここに悪気はない。

自分で新しいことを考えたり、施策を実行したり、そういうことをやるのが得意なタイプの上司。

本稿ではこれをアイディアマン型マネージャー(上司)と名付けてみる。

コスパ(タイパ)が部下の行動基準になってしまうリスク

一見すると、アイディアマン型上司はとても素晴らしいように思える。

現状分析から戦略構築を行い、戦術まで策定する。

その評価方法まできめ細かく考えて実行する。

必然的に、部下の行動はその中で高得点を効率よく叩き出すことに寄っていく。

意識的にせよ無意識にせよ、コストパフォーマンス(タイムパフォーマンス)が高い動き方となる。

「良いことなのでは?」と思った方に僕から一言。

「戦略がハマっていればね」

アイディアマン型上司は方向転換が苦手

アイディアマン型の上司は、自分のアイディアに自信を持っていることが多い

それ自体は決して悪いことではない。

ただ、それが現状と合っていない時、ミスマッチが起きている時、その戦略を修正していくことが苦手であるように僕には感じられる。

ましてや、部下からの意見を基に修正する、なんてことは滅多に起こらないような気がしている。

何を言っても無駄という感覚

これは現代という速い時代には、あまり好ましくない態度である。

リーン生産方式というか、ピボット的転回というか、とにかく現代は「取り敢えず始めてみて、市場の反応を見ながら戦略を機動的に変えていく(アップデートしていく)」ことが必要な時代である。

というのも、当たるかどうかというのは、実際に市場に出してみなければわからない側面があるからである。

もちろん、何でもかんでも出せばOKということではなくて(当たり前だ)、それなりに練られた戦略であっても、ハマらないということが往々にして起こり得るということである。

となると、戦略の機動的改変が必要となる訳だ。

でも、往々にしてこのようなアイディアマン型上司は部下からの意見を聞き入れることができない

それは部下側からすれば、「どうせ何を言っても無駄」というような感覚を生むことになる。

折角のアイディアが悉く潰されるのであれば(戦略策定の事前にも事後にも)、そして疎ましくすら思われるのであれば、誰も何も言わず、唯々諾々とその戦略に従って動くようになる。

そういう意味では、冒頭に書いたような「人から言われた通りやる方が楽」という人たちが多くいることの原因として、そのような上司が部下の自発性を摘んできた(摘んでいる)ことが挙げられるような気もする。

でも(繰り返すが)そのような自覚はこのタイプのマネージャーにはない。

そうやって、組織からは自発性が損なわれていくのだ。

それではまた。

いい仕事をしましょう。

あとがき

「何を言っても無駄」

そのような無力感。

それが職場には蔓延しているような気がしています。

そして、それは生来のものではなく、過去の挫折の積み重ねによって生じていることも。

マネジメントという仕事をしていると、「部下が何も考えていない」という言葉によく出くわします。

でも、その原因はマネージャーにあるのでは?

そんなことを思ったりもします。

バランスは難しいですが、部下の自発性を育むようなマネジメントをしていきましょう。