決める力・決めない力

UnsplashMarcus Urbenzが撮影した写真

決めると決めないのバランスを取ることがマネジメント

組織やチームを動かす際には、決める力と決めない力を上手に活用する必要がある。

そんなことを考えている。

決める力というのは、決断をすることである。

組織やチームを(今までとは違う)ある方向に動かすこと、またその決断をすること、それが決める力である。

そこにはそれなりの軋轢が生じる。

それを含めてもやった方がいいと判断した時、決める力を発揮し、実際に組織を動かしていく。

一方、決めない力とは何か?

こちらの方が分かりにくいと思う。

決めない力というのは、決断をしないことである。

組織やチームを今までと同じ方向に動かすこと、変化を求める声に過剰に反応しないこと、それが決めない力である。

こちらにはそれなりの批判が生じる。

それを含めてもやらない方がいいと判断した時、決めない力を発揮し、組織を現状のまま動かしていく。

この両者のバランス。

それがマネジメントである。

何だか言いたいことは全て言ってしまったような気もするけれど、とりあえず始めていこう。

不決断力

決断力。

上のポジションに立つ人には求められる力である。

でも、決断ばかりしていると組織は安定性を欠く

人というのは新しいことに抵抗を示し、慣れるまでに時間がかかる生き物であるから。

なので、不決断力も同時に必要となる。

決断をせずに、現状を変えずに、そのままの状態でできるだけ効果的にチームを動かす為にはどうしたらいいのかを考えること。

もっと言えば、決断をすべきタイミングなのか、そうでないのかをきちんと見極め、適切な対処ができること。

それがマネジメントをする上では非常に大切なことである。

停滞は安定化への通過儀礼

これは部下からの意見具申があった場面を想像して頂けると分かりやすいと思う。

部下から何らかの相談があり、それもどちらかというと現状に対して批判的な内容であった時(でも的を射ている時)、マネージャーであるあなたはどのように行動するか?

決断する、というのが一般的な回答であると思う。

部下からの真っ当な意見具申に対して、真摯に対応すること、そして組織やチームを望ましい方向に進めていくこと、それはとても大事なことである。

でも、一方で、もう少し粘るというか、今はもうちょっとこの体制を維持した方がいいなと判断することも重要であると僕は考えている。

変化をもたらすことが全て素晴らしいことではない。

停滞はある種、チームを安定化する為に必要な通過儀礼である。

そのようなイメージを同時に持つこと。

そして、それらを場面に応じて使い分けること。

それも必要だと思うのだ。

皆変えたがるから

革新とか変革とかいう言葉。

このような種類の言葉に人間は弱い。

そして、その逆の変えないことに対しての風当たりは強い。

だから、多くのマネージャーは変えようとする。

変えることで自分に決断力があることをアピールしようとする。

そのような潜在的な動機

そんな状況の中で、敢えて変えないこと、チームを熟成させるかのように、少し様子を見ることが時にマネージャーには求められる。

もちろん、変えなさ過ぎて、チームが腐ってしまっては元も子もない。

ただ、ワインと同様、ある程度の熟成期間はチームには必要となる。

そのバランスを如何に取るか。

最後に具体的な方法論について書いて、本稿を終えようと思う。

「決断」はしない方がいい

変えるタイミングと変えないタイミングの見極め方。

基本戦略は変えないことだと僕は考えている。

もちろん、微修正のようなものはする。

ただ、「決断」が必要なくらいの大きな変化はできるだけしないことが望ましい。

僕はそのように思うのである。

過剰反応しない

先程の例に戻る。

部下からの意見具申があり、それがそれなりに的を射ている時、マネージャーはどのように行動すべきだろうか?

実際のところは、チームの状況によって違ってくるので、あくまで一般論として答えるなら、「過剰反応しない」というイメージを持って取り組むと良いと思う。

それも、その意見に対して自分が如何に賛成であったとしても。

本来的には、100くらいの変革が必要だなと思っていても、その大きさのままで行動せず、20くらいに抑えて行動を始めること。

そして、必要に応じて徐々にその数字を上げていくこと。

それが大事であるように思う。

大きな変化は大きな反動をもたらす

確かにこのような動き方は、部下からすると物足りなさを感じるものだと思う。

もしかしたら、「決断力がないな」と判断されるリスクだってある。

でも、マネージャー業を何年もやってきた僕が思うのは、大きな変化は大きな反動をもたらす、ということである。

そして、その反動というのは、必ずしもわかりやすい形で現れる訳でもない。

地下に潜り、対処が難しくなることだってある。

だから、本当に変える必要があると思っても、力を入れ過ぎずに入る、ということが大事だと僕は思う。

もちろん、最終的に100に向かうイメージは持ち続けてよい。

ただ、あまりにもそれが露骨に出過ぎると、部下も警戒を示す。

だから、決めない力を維持しながら、チームを漸進させていくことが大事なのである。

それではまた。

いい仕事をしましょう。

あとがき

変化しないことはウケが悪いです。

でも、チームの成果を高めたいと思うなら、変化のなさはとても重要なことです。

その期間を経ないと、戦略が熟成されることがないからです。

変化と不変化を上手に使い分けていきましょう。