組織の矛盾を放置しない
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問題の所在はどこだ?
「部下のモチベーションが低い」
「どうにも成果が伸びてこない」
そんなマネージャーは多いと思う。
そこで考えて頂きたいのは、問題の所在についてである。
大抵のマネージャーはその問題の所在をチーム内にあると考える。
これはまあ当たり前の話だ。
「何らかの問題がチーム内にあって、部下のモチベーションが下がっている、結果として成果も伸びてこない」
このような論理展開。
何もおかしなことはない。
でも、それだけではなく、ちょっと目を転じるというか、もう少し違う所に意識を向けてみる必要があるのではないか、というのが今日の話である。
部下のモチベーションが下がっている要因は、チーム内だけでなく、それ以外にある場合が往々にしてある。
それを完全にではなくとも、少しだけであっても取り除いてあげると、チームの成果は大きく向上する場合がある。
今日はそんな話である。
それでは始めていこう。
大前提としてやる気はないもの
部下の「やる気」に関する相談を受けることがある。
というか、多い。
その際に僕がよく話すのは、「まあやる気が上がらないのはある種デフォルトであって、特別目新しいことではないですよねー」ということである。
残念ながら、この令和の時代にモチベーション高く働く部下というのは殆ど存在しない。
それはチームの要因というよりも、もう少し大きな話(例えば現代の仕事の大半はブルシットであるという事実や、会社の人事制度全般、社会における雇用制度に関する考え方、もっと言えば「働く」ことに対する捉え方など)によってそのような状態がデフォルトになっているように僕は感じている。
そして、残念ながら、そのような大きな話を変えることは殆どの場合、現実的ではない。
となると、ある程度の部下のモチベーションの低さは受け入れた上で、仕事を進めていく必要がある。
僕はそのようにまず考えている。
もう少し小さな話
その上で、もう少し小さな話(でもチーム内ほど小さくない話)に目を転じてみる。
例えば、他部署の人が上手く動いてくれないであるとか、部内の指揮命令系統が曖昧であるとか、余計な打ち合わせや会議が多いとか、そのような話である。
それらは放置しようと思えば放置できないこともない種類のものではある。
マネージャーが特段動かなくても、昨日と同じように今日も仕事は回っていくだろう。
ただ、そのようなことはジワジワと部下のやる気を削いでいく。
というか、やる気が削がれているなんてことも意識されず、「諦め」のような空気がチーム内にも蔓延するようになる。
「何を言ってもダメ」
「どうせ…」
このような言葉たちが脳内に浮かぶようになる。
結果として、部下のモチベーションは一定以上上がらず、成果も凡庸なものに留まることが多くなる。
大きなメスは大きな反発を生む
ここに少しだけメスを入れる。
もちろん、たくさんメスを入れられるならそれに越したことはないけれど、僕の今までの経験上、大きなメスを入れるとそれ相応の反発によって、余計に部下の仕事がやりづらくなる事態が生ずるような気がするので、まずは小さなところから始めることをお勧めする。
と言っても、自チームだけの話ではないので、それなりの軋轢なり反発が起きる。
ただ、本当に組織のモチベーション向上を企図するのであれば、これは避けては通れないものだと僕は思っている。
(一見すると)平和な世界
以前と比べて、組織内で腹を割った話をする機会は大きく減少しているように僕は感じている。
それも役職者同士というか、それなりの社内的地位にいる者同士が、やや深めの話をすることはあまりないように思う。
それぞれが相互不可侵条約を結んでいるというか、余計なことは言わないというか、そのような状態が常態化している。
それは一見平和に見えるし、もしかしたら仲良くさえ映るのかもしれない。
でも、それでは組織の体温は上がってこない。
面倒事は避けて、果実だけを得ようとするのはいかがなものか?
もちろん、組織の体温が上がらなくてもいいなら、それでいいと思う。
ただ、僕が感じるのは、「成果を求めるくせに、そのような面倒なことには手を触れようとしないというのは無理な相談だぜ」ということである。
もし本当に部下のモチベーションを上げたいなら、そのような話(できれば避けて通りたい話)にもメスを入れなければならない。
問題への態度が重要だったりもする
正直な話、大体の話は大したことではない。
でも、その大したことのない話が部下のモチベーションには重要だったりもする。
繰り返しになるが、大きな話はとりあえず置いておいて、まずはそのような大したことないけれど、それなりに部下のモチベーションに影響を与えている要因について取り組むべきである。
自分だけで無理なのであれば、上司も巻き込んでそれをやっていく。
結果、10ある問題の内、2か3くらいしか改善されることはないだろう。
でも、そのような態度は確実に部下に好影響を与える。
少なくとも、マネージャーはこの組織の矛盾に対して理解があり、それを解決しようと努力する人であるという事実が部下に伝わる。
それが実は成果の向上には重要だったりもするのだ。
それではまた。
いい仕事をしましょう。
あとがき
見て見ぬふり。
それが現代の作法のようです。
もちろん、そこに僕も含まれています。
でも、それを少しだけやめると(問題に向かうようにすると)、部下のモチベーションが上がることがあります。
適切に問題に向かい合っていきましょう。