管理職に権利を

UnsplashMarkus Spiskeが撮影した写真

誰も管理職になりたがらない時代

「管理職は罰ゲーム」

そのような言説が一般的になり、若手社員も含め、誰も管理職になりたがらなくなっている(ある調査によれば、若手社員の約8割は管理職を目指していないそうだ)。

9年以上管理職をやっている僕も、その意見には賛成である。

はっきり言って、管理職は割に合わない。

権利と義務の関係で言えば、義務の方が圧倒的に多く、権利は平社員とさして変わらない。

処遇だってたかが知れている。

そんな環境の中で、またそのような状況を目の当たりにする中で、誰が管理職など目指そうとするのだろうか?

それでも今はまだいい。

というのは、現在の管理職の大半は昭和の空気を吸っており、不正義や不公平に対する耐性がそれなりにあるからだ(これはあくまでも会社側からの視点である。その当事者である僕らにとってはたまったものではない)。

でも、あと5年もすると、更に下の世代が管理職適齢期(ここで言う適齢期というのは、年功序列的な年齢という意味でなく、そのような資質を備えるくらい経験を重ねたと読み取って頂きたい)を迎え、現在のような理不尽に耐えられる人は大きく減少することだろう。

そういう意味では、その頃になれば、管理職という仕事への捉え方が変わり(変わらざるを得なくなり)、多少は状況が好転する可能性があると言えるのかもしれない。

少なくとも、もう少し権利が与えられなければ、管理職という仕事自体が成り立たなくなるだろう。

今日はそんな話である。

それでは始めていこう。

割を食っているのが課長

「何でもかんでも管理職のせい」

僕が日々働いていて感じることである。

いや、もう少し正確に表現するなら、「何でもかんでも課長のせい」ということになるだろう。

もっと上の管理職にまでなれば、このような理不尽は多少は軽減されるようだから。

たぶん一番割を食っているのは課長クラスだろうと僕は思う(少なくとも当社では)。

非常に言葉は悪いが、仕事の出来ないバブル世代の残党が上司におり、権利を大袈裟に主張する平成世代が同僚や部下にいる、更に令和世代が新しい価値観を職場に持ち込む、このような環境で働いている(ツケを払わされている)のが課長クラスなのだと僕は思っている。

さて。

このような状況に対して僕たちはどのように行動すべきなのだろうか?

やらなくていいことはやらなくてもいいのでは?

最近思うのは、ある種の義務の放棄である。

いや、義務の放棄というと言葉は強いけれど、本当にそう思うのだ。

これは自己防衛の為である。

やらなくていいことはやらない。

そこまで真面目に管理職という仕事を捉えない。

そうでもしないと、心身に支障をきたしてしまうから。

無責任な管理職の急増

でも、それによって、多数の無責任な管理職が生まれることになってしまった。

これはやむを得ないことではある。

自分の身を守る為に必至だから。

ただ、その結果、志のある管理職は更に辛い立場に追い込まれているような気がしている。

「ああはなるまい」

そう思って頑張ると、どんどんと義務だけが押し付けられるようになる。

結果、そのような人から先に壊れていく。

こうして無責任な管理職だけが残り、誰もが自分の仕事領域を極小化しようとし、会社はどんどんギスギスしたものになっていっている。

権利だけを主張し、義務を履行しないことが、普通の行動規範となっていく。

それを見た若手社員は、より一層管理職になりたくなくなっていく。

まさにスパイラルである。

でも、これが実際のところである。

何も誇張などしていない。

というか、もっと酷いことだってあるのが管理職の現実なのだ。

権利の拡張を

では、このような状況を変える為にはどうしたらいいのだろうか?

僕は権利の拡張だと思っている。

義務の放棄という方向性が上記のような問題を引き起こしたのだから、それを打開する為には逆サイドに向かうしかない。

そして、そこには当然ながら会社側にも痛みを背負ってもらう必要が出てくる。

今までの管理職の善意に頼っていた運営をやめ、管理職に権利を与える。

また、きちんと義務を履行する管理職を、会社側が適切に守るようにする。

これがなければ、管理職が絶滅(もしくは極端な形骸化)することになるだろう。

昇給・減給権と離脱権を

では、権利の拡張とは具体的にはどのようなことを指すのか?

僕が今考えているのは、「一定割合の昇給・減給権の付与」「管理職からの(降格によらない)離脱権の獲得(FA権のようなもの)」である。

もちろん、本来的には「管理職の義務の有限化」が直ちに措置として取られるべきだとは思う。

でも、それはどうにも起こりそうにない(というか、日本の現在の働き方の中では、管理職の厳密なジョブ・ディスクリプションというのはたぶん不可能だ)。

となると、やっぱり権利の拡張しかないように思えてくる。

正直者が馬鹿を見ない状態へ

少なくとも、僕は「権利ばかり主張する部下へ対処するための権利」が欲しいし、「罰ゲームをやったことによる報酬(もしくはそこから逃げられる権利)」が欲しいなと思っている。

仕事をしない部下に適切な減給を。

仕事をする部下に適切な昇給を。

管理職を担ってくれている人達への適切な対処を。

それが僕が願うことである(というか、それって人事部の仕事なんじゃねえの?)。

それではまた。

いい仕事をしましょう。

あとがき

だんだんと善意で仕事をしていることに疲れてきました。

もちろん、それは管理職に限ったことではなく、日本中どこでも見られる現象なのでしょう。

「正直者が馬鹿を見る」

残念ながら、それが現代日本のスタンダードです。

今回は管理職の権利をテーマにして書きましたが、僕が願うのは管理職に限らず、真っ当に働く人が真っ当に報われることです。

それなくして、日本が元気になることはないでしょう。

大変なことがたくさんありますが、何とか頑張っていきましょう。