聴ける能力

UnsplashAnastasiya Badunが撮影した写真

話を聴くなんて誰だってできる?

中間管理職は受動から始まる。

上司や部下といった外部からのアクションに対するリアクション。

そこから仕事が始まることが多いのが、ミドルマネージャーである。

その際に重要だと思うのが、聴ける能力である。

的を射ない部下の話の要点をサッとつかめるか。

指示が不明確な上司のポイントをスッと理解できるか。

そこが日々の仕事において大きな違いとなる、そんなことを思う。

そして、話を聴くことは、話をするよりも軽く見られているようにも感じる。

「話を聴くなんて誰だってできるでしょ?」

まあ、確かに。耳は常に開いているし。

ただ、要点を掴んだり、ポイントを捉えたり、意図を汲み取ったりすることはそんなに簡単なことでもない。

今日はそんな話である。

それでは始めていこう。

要点はどこに?

人の話を聴く際に、「早く要点を言って欲しいなあ…」と思うことはないだろうか?

僕はある。

しょっちゅうである。

でも、大体の人はそこまで話をするのが上手くなく、「一通り聴いてようやく言いたいことがわかる(もしくは聴いてもわからない)」というのがむしろ一般的ですらある。

そんな中で我々マネージャーは仕事をしていかなければならない。

The long and winding road

ここで、「先に結論を!」と言うのは、あまり良い手ではないと僕は思う。

相手が部下であれば委縮してしまう可能性があるし、そのように話をしたところで結論を上手に言える部下などあまり存在しないから(上司にも言いたいが、それが不可能なのは言うまでもない)。

となると、グニャグニャと曲がりながら進んでいく(時に戻ったりする)話を忍耐強く聞きながら、そこで言いたいことを的確に捉えなければならない。

これは思いのほか難しい仕事である。

ただ、それを難しい仕事だと捉えていないマネージャーが多いのも事実で、それはまたそれで問題であるというのが今日のテーマに繋がっていく。

話を理解できる人は実はそこまで多くない

僕は駆け出しのマネージャーの頃に、ある部下から「課長は私の言うことをよくわかってくれて、とても助かります」と言われたことがある。

その時には僕もマネージャーとしての経験が浅かったので、「何だか大袈裟だな」と感じたことを覚えている。

でも、時が経つにつれて、その部下が言っていることの意味がだんだんとわかるようになってきた。

というのも、話がわかる能力を持ったマネージャーというのは実はそこまで多くないと気づいたからである。

言葉として話を聞くことができる人はたくさんいる。

ただ、そこに含まれた意味(含意)まで読み取れる人は多くない。

そんな風に思うのだ。

要点の捉え方

では、自分で話を聴くことが上手くないなと感じるマネージャーはどのようにしたら話を上手に聴くことができるようになるだろうか?

まずはじっと聴くということである。

話の腰を折らずに、部下(や上司)が話をしたいように一通り話をさせる。

その中で、「ここが要点だろうな」という部分を探っていく。

一通り話を聴けば、多くの場合要点がどこかがわかるが、そうでない場合もそれなりにあるので、その場合は「こういうこと?」であるとか、「こういうことがしたいの?」みたいな問い掛けをしながら、その真意を探っていく。

その問い掛けに対し、部下(や上司)はまた回答があるので、それについてまたじっくりと話を聴く。

その上で、その話全体を自分の言葉で言い換えてみる。

ここでまた反応がある。

それをまたじっくりと聴く。

これくらいやれば、大体の話は要点がわかり、そこで何をやりたいのか(やらなければならないのか)がわかるようになる。

どうしたいのかを問う

ポイントは話を遮らないということと、話を自分の言葉で言い換えてみるということである。

加えて言うなら、想いや意思みたいなものを確認することも大事だと思っている。

部下の中には、事実を並べて判断を仰ぐタイプの者がいる。

その際に僕が問うのは、「あなたはどうしたいの?」という点である。

ある仕事に対して、1番の主体者は部下であると僕は考えている。

管理職はその添え物に過ぎない。

だから、管理職の判断は判断として示すべきだけれど、その前にその部下がどうしたいのかはきちんと確認しておく必要があると僕は思っている。

その上で、判断を下す。

意思が大事

イマイチだなあ、失敗しそうだなあ、と思っていても、部下が心からやりたいと思っているなら、その仕事はやらせるべきだと僕は考える。

失敗から学べることもあるから。

もちろん、その仕事が成功するようマネージャーは支援をしていくし、その責任はマネージャーにあるのだけれど、仕事の主体者は部下であるべきだし、それについて何らかの思いは感じて欲しいと僕は考えている。

やらなければならないから(仕方なく)やるのか、やりたいからやるのか?

それさえも、聴かなければわからない場合がある。

そういうことの積み重ねが、部下を自発的にし、仕事の精度を上げていく。

僕はそんな風に考えて、今日もまた部下の話を聴くのだ。

「もう少し先に結論を言って欲しいなあ」と思いながら。

それではまた。

いい仕事をしましょう。

あとがき

リスク回避傾向が顕著になってから、「want」を表明する人が極端に減ったなと僕は感じています。

それは確かにリスク管理には効果的かもしれません。

でも、全然面白くない。

そして今日のテーマに即して言うなら、やりたいことの表明のなさが、要点を捉えることへの困難性を助長しているような気さえしています。

意思の表明とその曲解なき受容を。

話を聴くことは、「want」を受け止めることであり、「その人」を受容することです。

factではなくwantを重視していきましょう。