改革よりも漸進を

物事を変えていくには
新しい職場や新しいチームを率いることになった時、それもその職場なりチームが上手くいっていない場合、大抵の人は「何かを変えなければならない」と思うはずだ。
その際に頭の片隅に留めておいて頂きたいのが、「改革よりも漸進」というイメージである。
これは物事を一気に大きく変えるのではなく、徐々に変化させていくことを意味する。
10年ほどマネジメントという仕事をやってきて僕が思うのは、物事が大きく変わるということは起こり得ないし、仮に起こっているように見えたとしても、そこに内実は伴っていない、ということである。
人間には慣性の法則がある。
今日やっていたことを明日もやっていたいと思うのが人間の性である。
となると、改革のような急進的な動きはどうしたって反発を招く。
反発を招くものを、上手に着地させることは至難の業である。
ただ、では何もしなくていいのかというとそんなこともないし、実際に何も変わらない訳でもない。
じわじわとよくわからない内に変わっている、そんな風に物事を進めていくことは可能であるし、その方が結果的に効果も大きい。
何だか言いたいことは全部言ってしまったような気もするけれど、今日はそんなことを書いていこうと考えている。
それでは始めていこう。
本当に大きく変える為に
「チームを良い方向に変える」という目的があるとして、そこにどのように到達するか?
これを考えて、実行するのがマネジメントという仕事である。
そして、多くの人はそれを一気呵成にやろうとする。
まあ気持ちはわからなくはない。
チームの状況は良くないし、それを変えるのが仕事であると自分自身も思っているし、上司からのプレッシャーもあるし。
でも、「良い方向に変える」という成果を本心から求めるなら、あまり性急にならない方がいいと僕は思う。
というか、むしろ気付かないくらいジワジワと進める方が結果的に大きな成果に繋がるとすら僕は考えている。
以下、もう少し詳しく書いていく。
人間は変わりたくない生き物だ
「改革」というのは、勇ましいし、見栄えもいい。
何よりも、「何かを変えているぞ!」という実感がある。
それはマネジメントをやったことがある人間であればよく理解できる感覚だろう。
でも、本当に何かを大きく変えたいと願うなら、変わっていることを悟られないように進めた方がいいと僕は思う。
それは人間は変わることに対して、抵抗感や嫌悪感を覚える生き物だからである。
改革と反対運動
これは生物(動物)として仕方のないことである。
本能と言っていいものである。
今日も明日も平和に(変わらずに)日々を送っていくことを生物(動物)はどうしたって求める。
そこに改革という雷鳴が轟く。
誰だって、「日常が脅かされた」と思ってしまうだろう。
そうすると、その改革に中身が伴っていたとしても、冷静に判断すれば大いに納得的だったとしても、それは感情的な反発を招くことになる。
下手をすれば、それに対する反対運動が起こる(水面下の場合もある)。
結果として、改革の旗印を掲げたのはいいものの、実態は変わらないか、むしろ悪化することになる。
それは明らかに望んだ成果ではないはずだ。
解釈を変える
では、物事を本質的に変える為にはどうしたらいいのだろうか?
僕が考えるのは、グラデーションのように物事を変えていくということである。
これはもしかしたら「解釈を変える」という感覚に近いかもしれない。
同じ物事だったとしても、その解釈を変えて提示してみること。
そうすると、物事の見え方が変わってくる。
やっていることは変わらないのに、やっていることに対する見え方が変わっていく。
ただ、実行している当人はそれに無自覚である。
そのような緩やかな感じ。
それが本当に組織やチームを変えていく為には必要な作法である。
変化とすら感じられないような前進
これは大きな言葉で言えば「ビジョンの提示」に近いと言えなくもない。
でも、大きな物語を掲げることは、不必要とまでは言わないものの、現場で働いている人達にとっては(大仰過ぎて)効果的ではない場合がある。
そこでもう少しそのレイヤーを下げる。
普段やっている仕事に対しての、別の解釈を提示する。
もしくは、その仕事に取り組む時の意識を少しだけ変えるよう助言してみる。
それはどう考えても「改革」とは程遠いものであると感じるはずだ。
そして、先述した「日常が脅かされた」という感覚や「抵抗」に繋がりづらい概念であると僕は思う。
そのような漸進を続けていく。
それは意識ベースでは、変化とすら感じられないような微細な前進である。
でも、月日が流れ、それが月単位・年単位になれば、大きな違いになっている。
それこそがマネジメントなのではないか?
また、これを隠密的に遂行できるマネージャーこそが、優秀なマネージャーと言えるのではないか?
そんな風に思うのだ。
派手なことは実はあまり効果がない
目立つこと、派手なこと、は実は変化をもたらさず、成果にも繋がらない。
それを心に留めながら、少しずつ組織を良い方向に変えていくことが重要なのである。
それではまた。
いい仕事をしましょう。
あとがき
見栄えを極端に気にする時代ですが、大事なのは中身であると僕は考えています。
そして、中身を変えることはそんなに簡単なことではありません。
改革という言葉は勇ましいですが、それが本当に改革に繋がるかというとそんなこともないのではないかと僕は考えています。
というか、実は漸進こそがむしろラディカルなのではないかとすら思っています。
本質的に物事を変化させていく為に、ジワジワと漸進していきましょう。