影響力を考える

感謝される理由が思い当たらない
先日、昔の部下から連絡があり、久しぶりに飲みに行った。
会話自体は近況報告から始まり、段々と馬鹿話に発展していって、終始楽しいトーンだったのだけれど、終盤になって、その部下がちょっと真面目な顔をしながら「いや、でも、本当にウエノさんには感謝しているんですよ…」と言い出したので、ちょっと驚いてしまった。
最初は「確かにだいぶ飲んだし、酔っぱらっているのかな」と思ったのだけれど、どうやらそうでもなさそうで、結果としてひとしきり真面目な話をすることとなった(その後また馬鹿話に戻った)。
ただ当時のことを振り返ると、特に何か特別な指導をした訳でもないし、どちらかと言えば手の掛からないタイプの部下でもあったので、何がそんなに感謝されるようなことなのだろうかと思ってしまったのも事実である。
そして、その答えはこの文章を書いている今だって見つかっていない。
ただ、その思考の過程で、「課長と言えど、意外に影響力があるのではないか?」と思ったので、今回はそれを文章にしてみようと考えている。
それは「僕たちは思っている以上に部下に影響を与えているのかもしれない」という日々の仕事の引き締めにも繋がっていくと思うから。
それでは始めていこう。
部下と真っすぐに向き合う
部下指導について他のマネージャーから相談されることが時折あるけれど、特段何かやっている訳ではない。
でも、周囲からはそれなりに部下指導に定評があるように思われているようだ。
その要因を自分なりに分析してみると、「真っ直ぐに向き合う」ということがあるように思う。
僕から見ると、多くのマネージャー達は、正面から部下と接していないように思われる。
もちろん、中には熱心な指導をしている者(しようとしている者)もいる。
ただ、だからと言って、それが真っ直ぐに向き合っているかというとそうではないような気がしている。
というのも、その関心の矛先が、部下ではなく、実は自分に向いているのではないかと思われる節があるからである。
これはどういうことか?
部下指導を熱心にしている自分への陶酔
部下指導は部下の為に為されるものである。
でも、部下指導に熱心な者は、それだけではなく「部下指導を熱心にしている自分」をアピールしているような気がする(嫌らしい言い方だが)。
もちろん、それだって全然悪いことではない。
他の大勢の何もしていないマネージャー達から比べれば、雲泥の差ではある。
ただ、そのような態度は確実に部下に伝わる。
そして、残念ながら、そのようなスタンスが部下の成長を妨げてしまうことだってあるのだ。
タイミングにより指導方法は異なる
大事なことは、実際にその部下が成長するかどうかである。
また、その成長タイミングは部下によってマチマチである。
その時々において、関与した方がいいのか、放任した方がいいのか、が異なるのが部下育成の難しさだ。
だから、それをよく見極めながら、指導していくことが大事なのである。
そして、その際に忘れてはならないのが、今日のテーマである影響力についてである。
言葉の力
思いのほか言葉というのは力を持っているものだ。
何気なく言った言葉が案外刺さっていたり、逆に傷を与えてしまったり。
それを自戒しながら、部下指導をしていくことが大事なのかなと考えている。
でも、それは結構大変なのも事実である。
一挙手一投足、全てに気を遣いながら仕事をしていくのは考えただけでクラクラする。
そういう意味では、現実的な落とし所を探ることが重要なのかなと考えている。
出来る限り誠実に仕事をすること
僕の場合は、「出来る限り誠実に仕事をする」というのがその落とし所であると思う。
冒頭の彼に対してのように、自分が意識していないところで影響を及ぼしていることだってあるから。
ただ、それもその時において最大限誠実に仕事をしていたから結果的に実現したことであって、別にその際に手を抜いていた訳ではない。
そして、それは「その部下宛」ということではなく、「自分の仕事に対して」であることが重要なような気がしている。
そうなのだ。
部下育成というフェーズでは部下に真っすぐに向き合うのが大事であって、それは他の仕事においても同様である。
目の前の仕事に対してできる限り誠実に仕事をしていくこと。
そのような態度が影響力を帯びるのではないか?
言行一致
結局のところ、マネジメントという仕事は人間性が関係している。
人間性が良ければ、マネジメントという仕事はそこまで難しくない。
でも、残念ながら人間性が優れている人は殆どいない。
ということは、マネジメントには向いていない人が殆どであるということである(もちろん僕もそうだ)。
そんな状況の中で、せめてできることの1つが「言行一致」である。
これは「誠実に仕事をする」という言葉を実際の業務に落とし込む際に有効な行動軸である。
言っていることとやっていることを一致させること。
それが誠実さの表明であり、結果としてそのような振る舞いが部下に影響を与えていく。
そんなことを思いながら、今日も僕は仕事に向かうのである。
それではまた。
いい仕事をしましょう。
あとがき
自分が影響力を与える側に回るなんてことが起こるなんて想像もしていませんでした。
でも、気が付けば僕もいい歳なので、そういうことに責任を持って取り組まなければならないのかなとも思っています。
と言っても、出来ることは限られているので、出来る範囲の中で細々とやっていこうと考えています。
引き続き読んで頂けたら幸いです。