会話量の累計とマネジメント

UnsplashVictoria Strukovskayaが撮影した写真

最低限必要な会話量の累計時間

僕は毎週1on1をやっている。

それも部下全員とやっているので、それなりの時間となる。

「よくそんな時間がありますね」と揶揄されることもあるけれど、1on1以外に有効なマネジメント手法が僕には見つからなかったので、それをただ愚直にやっている。

効果のほどはよくわからない。

「1on1をやらなかった世界線」と比べることは不可能であるから。

ただ、10年以上そのような仕事の仕方をしてきた僕が思うのは、人(この場合は部下)との関係性を向上させるためには、最低限必要な会話量の累計時間というものがあって、それを越えると仕事がだいぶやり易くなる、ということである。

それを具体的な数値に換算するなら、30分×4週×12ヶ月=計24時間くらいのイメージだろうか。

もちろん、そこには時間経過というものも絶対的に必要ではある(1週間連続で5時間ずつ話をしたからといって、急速に仲が深まるものでもない)。

でも、それが組み合わさると、チームを運営していく際のレベルが大きく変わるし、当然ながら成果の水準も圧倒的に高くなる。

今日はそんな話である。

それでは始めていこう。

平均すれば30分くらいは話をしている

「毎週そんなに話すことありますか?」

そんなことを同僚のマネージャーなどに言われるけれど、これがあるのである。

もちろん、部下によっては今日は話す気分ではない(またこちらも同様の場合もある)ということもあるので、5分くらいで切り上げるなんてこともザラである。

でも、一方で2時間くらい話し込んでしまうということも往々にしてあるので、平均的には30分くらいは毎週部下と1対1で話している、というのは決して誇張ではないだろう。

仕事の話と色々な話

話の内容の多くは仕事の話だ。

それも僕の場合は営業なので、お客さまへの提案内容(作戦会議的な)について話をすることが多い。

ただだからといって、そればかり話している訳ではなく、そこに付帯する色々なことを話すというのが大体の流れである。

お題目よりも普段のことが大事

また最近では、会社側も「管理職は1on1を積極的に行いなさい!」と言うようになってきたけれど、個人的には「別に言われてやるような話でもないしな…」と思っている。

そして、そのやり方についても「キャリア面談」であるとか「成果評価面談」であるとか、あるテーマを決めてやることが望ましいというようなことを勧めてくるけれど、僕からすればやや的外れというか、「それも大事だけれど、普段のことも大事なんだよな」と感じている。

というのも、1on1の有効性を高める為には「ちょっとした変化」にきちんと対応していくことが必要だと思うからである。

問診のようなもの

この「ちょっとした変化」というのは、部下の表情だったり、話し方だったり、反応だったり、そのようなものに現れる。

それによって、部下がいまどのような状態なのかがわかるようになる。

言ってみれば、問診のようなものである。

僕は医者で、部下が患者のようなものだ。

その変化率を毎週の面談の場で読み取り、効果的な処方箋を出していく。

それが1on1のキモである。

話の中身よりも話すこと自体が重要

そういう意味においては、「話す内容(中身)」についてはあまり関係がないとも言える。

変化率を読み取る為に話すことが重要なのであって、そのコンテンツはどうでもいいとまでは言わないけれど、あまり重要視していない。

でも、そういうことを言う人に出会ったことはない。

「1on1=コーチング」みたいな人ばかりである。

そして、そういう概念で1on1をやっているから、「毎週そんなに話すことありますか?」という質問になるのである。

価値観の交換

僕の感覚では、冒頭にも書いたように「会話量を累計させていく」という感じなのである。

これは「僕自身を部下に馴染ませる」ということでもあるし、「部下を自分(僕)に馴染ませる」ということでもある。

要は、人と人が分かり合う為には価値観の交換のようなものが必要で、ある話題に対してどのような反応を取るのかが双方共に分かっている必要があるし、それにはそれなりの時間がかかる、ということである。

そしてそれは「仲良くなる」ということを意味しない。

好きか嫌いかは別として、「この人はこのような考え方をする人なのだ」ということが分かることが重要なのだと僕は考えている。

真意が伝わるまでには1年くらいはかかる

それがある程度網羅された時、マネージャーの指示が的確に伝わるようになる。

それはその裏側にある価値観や考え方のようなものが理解されているから、言葉が字面通りではなく、その真意も含めて伝わるようになるからである。

それがチーム全員とできるようになれば、成果の水準も大きく変わる。

でも、その為にはそれなりの時間が掛かる(冒頭の例で言えば1年くらいはかかる)。

ただ、それなくしてマネジメントもない、とも思うのだ。

お手軽な方法はない

「マネジメントはスキルではない」

というか、お手軽に「これをやれば成果が上がります!」というようなものはないと僕は思っている。

そこには(ベタな言葉で恐縮であるが)「相互理解」が欠かせない。

そして、その為の手段として1on1以外に僕には思いつかない。

それではまた。

いい仕事をしましょう。

あとがき

会話を積み重ねていくこと。

そうすれば部下と意思疎通を行うことは簡単になります。

でも、これは言うは易く行うは難しです。

多くの人は毎週毎週部下と話をすることができません。

コツコツと信頼関係を築いていきましょう。