やることを減らす
大抵の人はやめることができない
何度言っても言い過ぎにはならないと思うのが、この「やることを減らす」ということだ。
とにかく不必要なことをどんどん減らしていく。
これがマネジメントには効果的だ。
ただ、できない。
大抵の人は「そうは言っても、必要かも…」と思って、やめることができないのだ。
それはミニマムベースでの仕事は責任を伴うからだ。
そして現状維持であれば、責任を取らされることはないからだ。
今日はそんな話をしていこう。
管理者大好き! スプレッドシート!
事業仕分けではないけれど、新しいチームを率いることになったり、決算年度が変わったりした場合に、まずすべきことは「不要なことの棚卸し」だ。
ここで大抵のマネージャーは「何か新しいこと」をやりたがるのだけれど、その前にやらないものを決めた方が良い。
部屋の片づけと一緒で、大事なのはまず不要なものを捨てることだ。
かつては素晴らしいものであった手法やスプレッドシートも、今の時代に適合的なのか(そして効果的なのか)ということを考えて、その労力と見合わないのであれば、思い切ってやめてしまう。
特に管理者は、スプレッドシートが大好きなので、意識的にそれを削減していく。
それはスプレッドシートがあると、「仕事をした気」になるからだ。
「管理している雰囲気」が出せるからだ。
「それっぽい」仕事はやめる
挑発的なことを言っているけれど、これは事実である。
このスプレッドシートをどのくらい減らせるかがマネジメントの効率性を左右する、といっても過言ではない。
自分で作るならまだしも、それを部下にやらせているのであれば、本当に減らした方が良い。
ポイントは「本質的かどうか」だ。
なくてもどうにかなる、ものはいらない。
「それっぽい」仕事はやめてしまう。
それだけでチームの生産性は大幅に向上する。
(付け加えると、僕は計数管理というのは究極的には不要だと考えている。
それは過去の数値の積み重ねでしかないからだ。
それを如何に精緻に行ったとして、何の意味があるのか?
大体の数字がわかれば、方針は策定できるものだ。
その細部を正確にしようとする行為は官僚制の悪しき習慣であるとすら考えている)
報告によって素晴らしい方針が策定されることは(残念ながら)ない
これをもう少しきちんとした言葉で表現すると、「報告」や「連絡」が大幅に削減されることで、有意義な時間が捻出される、ということになる。
上司や本社に報告することで、何か付加価値が生じるのであればいいのだけれど、そんなことはない。
報告はただの報告に過ぎない。
そして残念ながら、その報告によって素晴らしい方針が策定されることはないのだ。
不要なことを無くせば必ず生産性が向上する
これは一見消極的な態度であるように見える。
というのは、「何か新しいことをやる」というのは前向きに見え、「やることを減らす」というのは後ろ向きに見えがちであるからだ。
もちろん新しいことをやることを否定はしないけれど、生産性を確実に上げたいのであれば、不要なものを無くした方が圧倒的にコストパフォーマンスが良い。
新しいことは「当たる」かどうかわからないけれど、不要なことは確実に「当たる」からだ。
そして、これは実務面での省力化に繋がるだけでなくて、精神面でのパフォーマンスにも大きく影響する。
無駄なことをやることほど、マインドを低下させるものはない。
それが「やれされ仕事」であればあるほど、その効果は絶大だ。
そうしたものを取り除いていくことで、チームは筋肉質になっていく。
鍛えられた状態になってから、新しいこと、本当に意味があること、をやればいいのだ。
慣性の法則は思いのほか強い
では、やることを減らす為にはどうしたらいいのか?
「そんなの簡単でしょ?」という風にもし思うのであれば、それは甘い。
人間は惰性や慣性に従いがちである、ということへの意識が弱過ぎる。
どんなに無駄なものであっても、習慣になっていることに対しての抵抗感は思いのほか強いものだ。
特に年齢が高いメンバーほど、この「現在への拘り」が強いので、そこから動かすのには労力がいる。
もう少し意地悪な言い方をすると、「無駄なことをすることで給料を貰っているメンバー」がチームには必ず存在するのだ。
無駄な仕事は誰かのメシのタネでもある
彼らは「こんな仕事無駄だ!」と言いながら、その仕事がなくなると他にやることがなくなってしまうのだ。
だから、口では効率化を歓迎していても、いざ実際に無くそうとすると抵抗してきたりする。
そのようなアンビバレントな態度にはこのような理由が存在している(ことが多い)。
厳しい言い方になるが、無駄な仕事は無駄であると同時に、誰かのメシのタネ(例えば割増の残業代)になっているのだ。
それをやめて、成果を基準にすることは、かなりの抵抗が生じるだろう。
ただ、それをやらなければ、そこに手をつけなければ、あなたのチームは低迷したままなのだ。
勇気を持って削減しよう
多くのマネージャーはこの抵抗を恐れるので、減算することよりも加算することを選ぶ。
削減して、上手くいかなかった時の責任も負いたくないし、「ほら見たことか!」と批判されたくもないからだ。
それよりは目新しいことをやって、独自性を出そうとする方が軋轢も少ないし、精神的な負担感も少ない。
もちろんそういう経験も必要だろう。
ただ、もし本当にチームを向上させたいと思うなら、そこから逃げてはいけない。
無駄なものは思い切ってやめる。
答えはいつだってシンプルなものだ。
それではまた。
いい仕事をしましょう。
あとがき
洗脳、というと言葉は強くなりますが、無駄なことであっても習慣になってしまっているとそれに気付けないということは往々にして起こります。
何かを俯瞰して見る、というのは知性の発露であると僕は考えるのですが、自分のやっていることを無理やりにでも客観的に見る(自分で自分にツッコむ)癖をつけておくと、自縄自縛的な罠から逃れることができるようになります。
惰性や慣性はとても手強いものです。
だから大抵の改革は頓挫するわけです。
まずは明らかにムダなところから手をつけていきましょう。