戦略的マネジメントと場当たり的マネジメント
やり手? いやいや…
大抵のマネジメントは戦略的に行われてはいない。
これが現実だ。
多くのマネージャーは、思い付き、もしくは自分の上司に言われるがままの場当たり的マネジメントを行っている。
チームが上手くいかない時に、その場しのぎのマネジメントを行うことは、チームの成長を確実に阻害する。
本来的には、芽が出るまで少しの時間待たなければならないのだけれど、それをせずに次の良さそうな方策に移ってしまう。
効果検証を行わない。
次から次へと新しい作戦が出てくるので、「やり手」のように映るのかもしれないし、本人もそのように思っているのかもしれないけれど、これは間違いなく悪手だ。
今日はそんなことを書いていく。
戦略はいじるべきではない
「戦略構築→実践→効果検証→戦略構築→…」というサイクルで僕はマネジメントを行っている。
大事なのは、最初に大きな戦略(大戦略)を立てることである。
例えばその決算期をどのように闘うか、という大まかな部分を立案しておく(人材育成など複数年度に跨るものは今回は捨象する)。
それは「骨格」となる部分であって、これをその決算期中に変えることはない。
あくまでも大方針であるので、その土台は揺らがないのだ。
本来的には「戦略」という言葉は、その言葉からして、そのような意味合いを持っているのだけれど、往々にして、この戦略自体を変更してしまう、ということが現実のマネジメントでは起こってしまう(もちろん本人は無意識なのだろうが)。
これは絶対に避けるべきだ。
というよりも、途中で変更せざるを得ないような戦略は戦略とは呼べない。
それは「戦術」である。
そして大戦略の効果が出るまでには、数か月ないし半年くらいは平気でかかるものなのだ。
それをじっと我慢して待てるかどうか。
このことがマネジメントの質を左右する。
負のスパイラル
チームの規模や質にもよるけれど、往々にして、戦略が実質的に機能するまでには時間がかかるものだ。
ましてや、それが今までのやり方と大きく異なる場合には。
それを待つことが非常に大切なのだ。
ただ、一方で、現実的な世界においては、この「待機期間」には成績が低迷することが多いし、その場合、自分の上司なり組織から横やりが入ることになる。
「どうなっているのかね!」という叱責と共に。
これを防ぐには、本来的には最初期にやや無理をしてでも成果を上げてしまう、というのがセオリーではあると思うのだけれど、そうもいかない場合もあるのが現実だ。
その場合、上司からの圧力に負けて、方針を曲げてしまうことになる。
もしかしたらもう少し待っていたら成果が出たかもしれない当初の方針を変更したことで、現場は混乱し、更に数字が上がらないことになる。
そしてまた横やりが入り、「新しい方針」が示される。
以下繰り返し。
これを僕は「負のスパイラル」と呼んでいる。
負のスパイラルは成果の上がらないチームによく見られる現象
成果の上がらないチームによく見られる現象として、色々なことを試し過ぎて、結局のところどれも上手くいかない、そしてマネージャーの方針にも信頼性がない(面従腹背的)ということがある。
一見すると、何となく活気があるように見える場合でも、この「負のスパイラル」に嵌り込んでいるチームにおいて、成果が出ることは(それも中長期的に高い成果が出ることは)まずない。
どんどん悪い方向に進んでいくだけだ。
揺るがない自信を
以前にも書いたことだけれど、チームという人間集団においては、「待つ」ことが求められる。
マネージャーないし、その上司のスピード感においては、すぐに変更したとしても問題がないと思われるような場合であっても、メンバーにとってはそれは拙速だと感じられる(感じられがちである)ものなのだ。
このスピード感の違いというものを理解しているマネージャー(とその上司)はとても少ない。
だから、どんどんと方針を変えていくし、それを悪いことであるとも思っていない。
彼らはそれを「改革」であるとか、「新戦略」であるとか、まあその手の言葉を使って説明しがちであるのだけれど、僕からすればそれは「場当たり的」でしかないし、実際に右往左往して終わってしまうことが多いので、はっきり言って、迷惑でしかないのだ。
本質は揺るがない。
でも自信がないと揺らいでしまう。
初任マネージャーほどこのことを肝に銘じて欲しい。
時間をください
僕はもうある程度マネージャー経験もあるし、過去の実績もあるので、外部から横やりが入っても、「はいはい…いつものやつですね…」と受け流すことができるのだけれど、経験も実績もない若手マネージャーであれば、この圧力を逃れることは至難の業だろう。
だからこそ、最初期の成果が大事だし、時間を稼ぐことが大事なのだ(この辺の話は以前のブログに書いてあるので、そちらを参照して頂きたい)。
体感として、手応えが出てくるまでには最低でも3か月はかかる。
でも3か月というのは四半期と同義であって、その期間すら待ってもらえない会社もあるだろう。
しかしながら、その期間を待つことでしか、中長期的な成果を出す為の土台を作ることはできないのも事実なのである。
上司の方々は是非マネージャーに時間を与えて下さい(もちろん、どうしようもないマネージャーに対しては手を加えるべきではあるので、その見極めが肝心なのだけれど…)。
それではまた。
いい仕事をしましょう。
あとがき
連敗中のチームがカンフル剤として監督を交代させるも、結果としてチーム状況がより悪化する、というのはよくあることです。
もちろん明らかにその監督の手法が悪く、変える側もその原因を真に理解しているのであれば、それは一定の効果を持つのですが、そうではなく「何となく」変えてしまうのであれば、これは逆効果です。
新人マネージャーは、「悪手」と「(時間がかかる)妙手」の違いが判らないことが多いです。
後者を見極め、信念を持って戦略を進めていきましょう。