名を捨てて実を取る
果実を大きく取る為に、カードを切るタイミングを見極める
マネージャー経験を重ねて変わった考え方の1つに、「名を捨てて実を取る」というものがある。
まあ、変わったというか、「実」側に重心が寄った、という方が正確かもしれないのだけれど、多少嫌なことを言われたとしても「果実を大きく取る」方が大事なのだ、ということが経験を重ねるにつれ分かってきた。
そしてその際に重要なのが、「カードを切る」タイミングである。
今までの僕であれば切っていたであろうタイミングではカードを切らず、そこから暫くの間何もしないでおく。
もっと言えば、更にカードを手札に増やしていく。
そして、「ここぞ」というタイミングでそのカードを切り、大きな領土を手にする。
今日はそんな話をしていく。
一時的な不名誉なんて
これは「嫌われる勇気」とも関係している。
誰だって嫌われたくないのは一緒である。
そりゃマネージャーだって嫌われたくはない。
でも、時には一時の不遇をかこっても、取りに行かなければならない局面がある。
その際の不名誉は被っておけばいい。
言いたいように言わせてやればいい。
時が来たら、その評価が一気に裏返る。
形勢が逆転する。
そこまではじっと耐えることが重要である。
勝負のタイミングまでは耐えることが大事
マネージャーの仕事は、メンバーが能力を発揮できる環境を整えることに尽きる。
しかしながら、働いていると様々な障害が持ち上がる。
解決できるものもあれば、解決できないものもある。
解決できるものの中にも、時間がかかるものもある。
それを見極めて、勝負のタイミングを計って、一気呵成に仕掛けていく。
臥薪嘗胆、ではないけれど、それまではじっと耐える。
そういうイメージが大事である。
速けりゃいいってものではない
以前にも書いたことだけれど、マネージャーとプレイヤーの大きな違いは、「仕事が速ければ速いほど良いとは限らない」ということであると僕は思っている。
要は、時間軸の捉え方が変わるのである。
ビジネス全般において、スピードは命である。
何事においても、速いに越したことはない。
ただ、である。
マネージャー業務においては、それが「拙速」になる場合がある。
この辺の見極め、バランス感覚がマネージャーには求められるのだ。
寝技に持ち込む
プレイヤー時代と同じように、何事に対しても反射的に仕事を行っていくと、表面上の課題はクリアしているように思えるものである。
例えば、チームに問題が持ち上がったとして、それにマネージャーがすぐに対処する、というのは決して悪いことではない。
でも、それが「解決」に繋がるかというと、必ずしもそうではない。
もう少し時間をかけて、じっくりとスライドさせていく、寝技に持ち込んでいく、ことも重要なのである。
そして手札はギリギリまで出さない。
この辺の感覚が、自分のことを振り返っても経験を重ねるにつれ大きく変わった部分であると思う。
目の前の白よりも
オセロで例えるなら、途中経過はどうでもよくて、最後に大きくひっくり返せればいい、という感じである。
それまでに淡々と角を取り、相手に自分を囲ませ、こちらが終盤に手を打てる場所を増やしていく。
もっと言うと、終盤までは相手に気持ち良くゲームをさせておく。
そして一気に取りに行く。
先程の例えで言うなら、経験の浅いマネージャーというのは、黒を白にできそうなところがあったら、都度それを白に変えていくというイメージである。
でも、マネジメント業務というのは人が関係するものなので、隣の石に影響されて、折角白に変えたものがまた黒に戻ったりするものなのである。
それも一回ではなく、何回も繰り返したりする。
だから、その1回1回の勝敗(黒を白にすること)には、そんなに拘らない方が良い。
それよりも、ゲームが終わった時に、白の部分が黒よりも多ければいい、くらいのある種大雑把なイメージを持つことが大事なのである。
外野はいつだって無責任に好きなことを言うものだ
外野からは、なぜ白にできるのに今しないのか、という声が上がるだろう。
そういう奴には言わせておけばいいのだ。
最後に大きく白に変えていけば、そんなものは一笑に付すことができる。
もちろん闇雲に打ってはだめだし、タイミングが遅すぎても手遅れになってしまう。
あくまでも戦略を練った上で、長期的な展望に立った上で、行うことが重要なのである。
緒戦はどうでもいい
そういう意味では、何事においても「反射的」に行うのは愚の骨頂である。
プレイヤー時代はそれでも何とかなったと思う。
自分の力でねじ伏せることもできたと思う。
でもマネージャー業務は違う。
ムッとすることがあっても、その場で反応せずに、ぐっと堪える。
ニコッとすることはできなくても、苛立ちを悟られないように無表情を貫く。
そして機が熟すのを待つ。
今まで溜めておいた恨みつらみを全て開放する。
押し下げられていた前線を一気に取り返しに行く。
緒戦はどうでもいい。
大事なのは最終結果である。
百戦殆うからず
政治や兵法、軍事など、難しいことはわからないけれど、そういう本をマネージャーが読もうとする意味は何となくわかるような気がする。
確かにマネジメント業務にはそういう部分がある。
そういう意味では、僕も多少は成長できているのかもしれない。
それではまた。
いい仕事をしましょう。
あとがき
今日の話は「狡猾さ」みたいなものに関係しているかもしれません。
若手マネージャー達と話をすると、この辺の感覚の差を感じることが多くあります。
彼ら(彼女ら)の言い分は良く分かるのですが、それだけでは大きく戦局を変えることはできません。
負けているように見せかけながら、袋小路に誘い込んでいきましょう。