負のスパイラルを回避するには?
デス・スパイラル
「負け癖」が付いているチームの立て直しを命じられることが時にある。
もちろんアンナ・カレーニナの法則のように、「不幸なチームは、それぞれ異なる理由で不幸である」と言えないこともないけれど、大きく分ければ大体似たような理由で負けていることが多いような気がする。
それは「負のスパイラル」に嵌っている、ということである。
「負のスパイラル」というのは、負けが込んでくると打開策として急場の策をやる、それが練られていないから更に負ける、追い込まれるからまた次の策を…、というようにどんどんドツボに嵌っていく状態のことを指す。
そしてこれは現場レベルでは自覚的であることが多いのだ。
「ああ、また負けパターンね…」と思っているから現場の士気も上がらないし、士気が上がらないから結果も出ないし、ただ疲弊するだけである。
今日はそんな状態のチームにならないようにする方法を書いていく。
「何かやらなければならない」という妄執から逃れる
結論から言うと、「惰性でやっていることをやめる」ことに尽きる。
これは負け癖のついているチームにありがちなのだけれど、「何かをやらなければならない」という信念(僕からすれば妄執)に囚われていて、本質的なことに体力を傾けることができていないことが負けが込む1番の要因なのである。
脳死状態で「取り敢えず何かやる」というのは、組織行動としてはよくあることなのだけれど、これは絶対にやめた方がいい。
組織が何と言おうと、上司が何と言おうと、無駄なことは絶対に始めない。
そしてできれば、今やっている無駄なものを減らす。
これが負のスパイラルから逃れる最短距離である。
「打開策ことが正義」ではない
多くのマネージャーが、無駄だと分かっているのに無駄なことを続けてしまうのは、プレッシャーに耐えられないからだと僕は思っている。
負けている状態で、「新しいことをやらない」=「無策」という概念に皆囚われ過ぎている。
「打開策こそが正義だ」という考え方が蔓延し過ぎている。
それを変える。
踏みとどまる。
それが負のスパイラルを回避する為には一番重要なことである。
無策は無策じゃないぜ?
「そうは言っても、何もしないで結果が出なかったらどうするんだ!」
そう思われる方も多いと思う。
安心して欲しい。
結果は必ず出る。
というか、「何もしない」訳ではないのだ。
不要なものをやめることで、体力(と精神力)を捻出し、本質的な仕事に充てる。
できれば、本質的なことしかやらないようにする。
これで結果は出る。
というか、どんどんとマイナスになっていく事態は必ず防げるのだ。
タイムラグを考量に入れる
多くのマネージャーや上級マネージャー達が理解していないのは、何らかの試みというのは、成果が出るまでにはそれなりに時間がかかる、ということである。
スタートしたものが結果に繋がるまでには、タイムラグがある。
その時間を適切に待てるかどうかが重要なのである。
もちろん見当違いの方策をやってしまっているのではどうしようもないのだけれど、ある程度練られた方法論であれば、タイムラグはあれど、成果に繋がってくるのだ。
でも、多くのマネージャー達は拙速に、「あれがダメだったからこれ」「これがだめだったからそれ」みたいな感じで、どんどんと新しいことをやりたがる。
効果検証もろくにせずに。
気持ちはわからないではないけれど、その期間の風雨に耐えられなければ、チームの状況を変えることは難しいのである。
自己実現的呪い
負け癖がついているチームは、マネージャーや組織への信頼を失っている。
「どうせダメなんでしょ?」と常に思いながら仕事をしている。
だから仕事にも身が入らず、成果も出ない。
これは自己実現的(予言的)な呪いとも言える。
自分が言ったこと(ダメなんでしょ?)を実現させる為に、仕事に身を入れず、結果成果が出ないことが成就する。
もちろん本人たちは意識していないのだろうけれど、どこか無意識の領域でそう思っている。
それを少しだけ変える。
その為に手っ取り早いのが、「やめる」ことである。
小さなハードルを跨ぎ続ける
そして綺麗になった状態で、何か小さな成果を上げる。
大したことでなくていい。
小さなハードルを跨ぐくらいの、小さな目標を掲げ、それを確実にクリアする。
それが良いことであるとチームで共有する。
次はもう少し大きなハードルを用意し、それをクリアする。
またチームで共有する。
それを繰り返していく。
自信は人を、チームを、変える
こうやって「負けパターン」から少しずつ脱却していくのだ。
自信は人を変える、とよく言われる。
これはチームにおいても同様である。
人間というのは不思議なもので、ちょっとのマインドの変化によって、成績は大きく変わる。
それがチーム単位となれば尚更である。
やめる勇気を
僕は「同じメンバーなのに、なぜこんなに成果が変わるのか?」と聞かれることがある。
彼ら(彼女ら)には「やめるという発想がない」、というのが現時点での僕の結論である。
やめられれば、成果は上がる。
ただ、その度胸と自信がないのだ。
自信を失っているメンバーに自信を与えること。
尊厳を取り戻させること。
それだけでチームは変わる。
それではまた。
いい仕事をしましょう。
あとがき
やめる、というのは僕が見つけた最高のマネジメント手法です。
それはどんなチームにも適用できます。
というのは、組織における仕事というのは、勝手に自己増殖するものだからです。
アイディアも、マーケティングも、スキルもいりません。
ただいらないことをやめるだけ。
是非騙されたと思って実践してみてください。