若手に数字付けるか問題
マネージャーが出した成果をどうするか?
今日は営業部門に携わる人に向けた話を。
それは「マネージャーが(実質的に)出した成果を部下の数字として付けるかどうか」という問題である。
部下、とくに若手社員の成績が芳しくない時、マネージャーが部下と一緒に商談を行い、実質的にマネージャーが案件を決める、という状況はよく起きる。
話すのはマネージャー、部下は隣でニコニコしているだけ、というような。
こんな時、その成果というのは部下に付けるべきなのだろうか?
営業であればあるあるの話だと思うので、今日は狭い範囲の話題ではあるけれど、そんなことを書いていこうと思う。
煮え切らない答えですみません…
大きく振りかぶって話始めたこのテーマであるが、実のところ、僕もまだ結論が出ていない。
「どちらかというと付けない方がいい」というのが、現在時点での僕の(煮え切らない)回答である。
というのも、部下の成長をどのくらいのレンジで見るかによって結論が分かれると思うからだ。
そして、部下のタイプや経験年数によっても、どちらが望ましいかというのは異なる。
そんなことを踏まえた上で、大まかに言うのであれば、「付けない方がいい」というのが僕の立場である。
なぜか?
端的に言えば、部下が成長しなくなるから、である。
もう少し詳しく言えば、勘違いをし出す場合があるから、ということになるかもしれない。
営業を見せることは大事だが、見せても仕方がない
まるっきりゼロベースというか、駆け出しの営業マンであれば、どのような話の組み立て方をするのか、どうやって踏み込んでいくのか、を実際に見せるのは、とても大事なことである。
でも、一方で、本当に駆け出しの営業マンには、それを見せたところで真似できる訳でもないし、その凄さなんてものも伝わらないので、「雰囲気だけ」になってしまうのも事実である。
自分で言うのもなんであるが、僕の営業というのは、ある程度経験を重ねた人にしかその凄さが分からない種類のものであると思っている。
キラーフレーズがある訳でもないし、スペシャルな手法を持っている訳でもない。
ただ、顧客と駄弁っているだけなのである。
もちろんそこにはそれなりのノウハウがあるのだけれど、それを新人に言ったところでポカンとされるのがオチなので、社会科見学的にやっているだけ、というのが実際のところである。
なので、数字も付けない。
これが基本となる考え方である。
両者が両者とも自分の手柄であると思っている案件
では、もう少し進んで、ある程度は部下も関与している案件の場合はどうするのか?
ここは結構判断が難しいところである。
部下の独力だけでは案件が決まっておらず、マネージャーが出ていったことで決まった案件、というのは、外形的にはどちらが実際に案件を主導したのかが見えづらい。
部下は部下で自分のおかげであると思っているし、マネージャーはマネージャーで自分のおかげであると思っている。
ただ、実際のところはマネージャーの力によることが大きいとする。
その数字はどうするか?
自分のおかげだと思っているなら数字を付ける。でも…
まず部下と話をする。
上記したように、部下が自分のおかげであると思っているのであれば、その数字は部下に付けるが、次回以降は単独でやらせる、というのが僕のやり方である。
逆に、マネージャーのおかげであると思っているなら、数字は部下には付けないが、次回以降も陪席を行っていく。
後者の場合も、どこかのタイミングで前者のような状況になる。
そこで「子離れ」ができるようになるのだ。
継続的に商談に陪席するのはNG
やってはいけないのは、いつまでもマネージャーが商談に陪席し、実質的にはマネージャーが案件を仕上げているのにも関わらず、部下に数字を付けるということである。
僕はこれによって、何人もの部下を勘違いさせることになった。
マネージャーとしては部下に頼られるのは嬉しいし、チームの数字も上がるし、自分も達成感があるので、できるだけ多くの商談に携わっていきたくなるものである。
ただそこはぐっと堪えた方がいい。
部下が勘違いをするから。
というか、自分のスタイルを身に付けないまま、ある程度の年齢(僕は営業が伸びるのは30歳までであると思っている)になってしまうからである。
自分なりの型を身に付けるためには試行錯誤が必要
若い頃は「若さ」だけで商談が決まる。
でも、ある一定年齢以上になると、自分なりの「型」を身に付けないと数字が伸びなくなる。
そしてその「型」というのは、一人で試行錯誤する過程を通してしか身に付かないのである。
もちろん、時々陪席して貰って、マネージャーのアドバイスを仰ぐことは問題ない。
でも、その場合は、上記したように数字は付けない。
これくらいの割り切りが必要であるように僕は考えている。
部下を藻掻かせる
部下の成長を考えた時、冷たいように見えるかもしれないけれど、ある程度突き放すことは必要なことである。
もちろん、しかるべきタイミングと時期にアドバイスはするけれども、できるだけ「藻掻かせる」ようにする。
藻掻いた経験がなければ、伝わるものも伝わらなくなる。
そして、その「藻掻き」には、「数字への渇望」と「自分の至らなさへの自己嫌悪」が必要なのだ。
数字のコントロールを
数字が付かないと、数字を付けないといけないよな、と部下は思う。
数字が付くと、数字を付けなくてもいいよな、と部下は思う。
これを適切にコントロールすることが、部下の育成には大事である。
それではまた。
いい仕事をしましょう。
あとがき
未だに「上司たるもの部下に数字を付けるのが務めである!」みたいなことを思っている人は多いです。
もちろんそれは否定しません。
ただ、本当に部下のことを考えるなら、適切なタイミングで「子離れ」することが大切だと僕は思っています。
大事なのは「水を与えるのではなく、井戸の掘り方を教えること」です。
そしてできれば、「井戸を掘っても水は出ない」という経験もさせたい。
その為には、自分なりにあれこれ考えさせることが大事です。
頼られて「気持ちいいいい!」と思うのもわかりますが、適度に突き放すことが部下の本当の成長に繋がります。
甘さと優しさ。
優しくありましょう。