部下の成長は長い目で見よう

部下の成長を勘定に入れずに戦略を立てよう

以前も書いたように、「マネージャーが部下を育成できる」というのは幻想だと僕は思っている(部下は育つのか?参照)。

マネージャーができるのはあくまでも長所が活用できる「場」を提供することで、能力自体が伸長するのは稀だ(新入社員は除く)。

もし能力が伸長する社員がいるのであれば、それはマネージャーのおかげではなく、本人の資質や努力によるものだ。

僕はこういった育成観を持っている。

ある種「期待していない」。

だから「がっかりもしない」

冷め過ぎているのかもしれないけれど、成長という不確定要素を戦略の中に組み込んでしまうと、数字の見込みを立てるのが困難になってしまう。

ベースの数字が固まらなくなってしまう。

まあ成長すれば儲けもんだ、くらいの感覚で捉えている。

人によって成長のタイミングやスピードは異なる

ある種の人からすればこういった態度は「育成に消極的だ」という評価に繋がるようだ。

もっと積極的に「育てる」ということに傾注すべきだと彼らは思うようだ。

でも不思議なことに、僕は後輩や元部下から「あの時のおかげで仕事が上手くいくようになった」と言われることが多い。

世間で言われている育成と僕が考える育成はどうも違うようだ。

積極的な育成と消極的な育成とでも言えばいいのかもしれない。

情熱を傾ければ傾けるほど、人が成長するのであれば、僕だってそうする。

水をやって、肥料を与えて、日当たりの場所に置いて、風通しも良くして。

そしてその木が枯れたりすると、勝手に落ち込んだり、八つ当たりしたりする。

厳しい言葉で言うのであれば、自分勝手だし、傲慢な育成観だと思う。

僕の場合はこうだ。

早く芽を出す木もあるし、そうじゃない木もある。

水が多い方が良い木もあるし、乾いている方が良い木もある。

以下、日当たり、風通し、等繰り返し。

僕のスタンスはそんな感じだ。

人の成長のタイミングなんてわからない。だから面白い。

以前、入社3年目までの社員以外は成長は難しいということを書いた。

この部分をもう少し正確に書くのであれば、4年目~10年目くらいまでが一番成長するけれど、それはあくまでその社員の力次第だ、という感じだ。

もちろん、そこには環境や機会を与えることも重要だろう。

でも本当に伸びる社員は環境が多少悪くても、機会が少なくても、確実に成長する。

伸びない社員は、環境が良くても機会に恵まれていても成長は鈍い。

そしてその伸びなかった社員に対して、「せっかく良い環境(機会)を用意してやったのに…」みたいに積極的育成派の人達は思っているように僕には見える。

勝手にがっかりしているように僕には見える。

僕は何人かこういう「過去にがっかりされた経験のある社員」を部下に持つことになった。

上司の言うことを乱暴に要約すると、「期待が薄い社員」なので、そのように扱うように、という感じだ。

僕はそういう社員と商談に同席したり、飲みに行ったり、日々下らない話をする中で、なんというか「ハマっていない」要因がわかるようになる。

なので、僕はあまりよく考えずにそれを口に出してしまう。

特に「指導」とか「育成」とか「指摘」とかそんな感じではなく、ただ思ったから言ってしまった、みたいな感じで。

当然、その時は「そうですか…」みたいな非常に反応が薄いのだけれど、こういったことが本人の転換点になっていることが多いようだ。

言っている僕はその時点ではそんなこと露にも思っていないので、たぶんこういう仕事の方が向いているだろうな、ということを重点的にさせてみる。

すると、運も重なって結果が出たりする。

たまたま結果が出たタイミングと、僕のどうでもいい発言がリンクしているだけなのだろう。

それを好意的に部下は解釈してくれているのだろう。

リップサービス付きで。

僕はそんな風に捉えている。

消極的育成論者として

「オレのおかげだ」みたいなことを全く思わないと言えば嘘になるけれど、それはあくまでも結果論で、その時には無意識であるのだし、ピンポイントでそれが刺さる訳でもなく、五月雨式にやっていたことがたまたま当たった、みたいなところもあるので、正直に言うとラッキーという感覚に近い。

その燻っている社員の特徴を捉えることはすごく大事で、僕は自分のマネージャーのミッション達成という功利的な目的の為にその長所を利用しているだけなので、感謝されるのは過分な評価だなとは思うけれど、一方でマネージャーをやっていて良かったなと思えるのはこれだけだ。

任せるのと放任のバランスは難しいし、僕の育成観は放任寄りに映るせいか、テキトーに育成しているように見えるのが悲しいところだ。

でもわかる人にはわかるという開き直りと自負心も一方である。

(それが余計に厄介なのかもしれないけれど…)

一緒に仕事をしている期間に伸びるわけでもないし、会社が変わってから伸びる人もいるし、人間というのはとても不思議だ。

僕はその不確かさみたいなものを尊重して、丁寧に人の成長を見守っていたいと思う。

そして成長した時にはその人の努力だと思えるくらいの度量を持っていたいと思う。

それではまた。

いい仕事をしましょう。


編集後記

期待と放任のバランスは本当に難しい。

以前、学習塾のCMの中に「やる気スイッチ」というフレーズがあったと思いますが、人の成長には「自分で伸びよう」という意思と、それに適した環境がタイミング的にバチっとハマることが大事だと考えています。

それは強制することはできないものなので、なるべくそうなるように仕向ける、という方が感覚として近いように思います。

仮に自分の在任期間が「その時」でなくとも、その芽を摘まないよう見守っていたいと思っています。

その為にはそれ(成長)なしでも結果を出せるようにチームを運営していかなければなりません。

なかなか難しいことは事実ですが、それを目指して今日も仕事をしていきましょう。