腕を磨こう

UnsplashKelly Sikkemaが撮影した写真

結局は人間性。だけど。

「結局は人間性」

僕がこのブログの立ち上げ初期から言っている言葉である。

「マネジメントというのは、結局のところ人間性がその成否を左右するので、人間性がイマイチな人はそれなりのマネジメントしかできない(そして僕もそこに含まれる)」

そのような諦念がこの言葉には表れている。

「どうあがいても、(人間性が劣った僕のような人間には)素晴らしいマネジメントは無理」

そのような趣旨である。

でも、だからと言って、投げやりになっている訳ではない。

そのことをしっかりと受け止めた上でどうするのか、というように僕の思考は流れていく。

それが「志向性」というものである。

「現状は変わらない。未来も変えられない。でもそのような方向に意思を向けることはできる。そしてそのような方向に意思を向けているそのこと自体が重要なのだ」

僕はそのような考え方を持って仕事をしている。

さて。

今日はそのような志向性の中でも、もう少し具体的な話をしていこうと思う。

それは「腕を磨く」という考え方である(実際に磨かれるかどうかは別として)。

腕を磨こうとし続けることは、マネジメントという仕事を少しだけ楽しくしてくれる(可能性がある)。

意味がわからないかもしれないけれど、とりあえず始めていこう。

脳筋思考

「腕力はある程度の物事を解決する」

そのような脳筋的な考え方を僕は持っている。

というか、マネジメントという仕事を続けていく中で、段々とその考え方が強くなっていった、というのが正しい表現だろう。

そしてここで言う腕力というのは、アドリブ力とも言い換えることができるかもしれない。

ある場面が訪れた時に即応できる能力。

これを今回は腕力と定義して話を進めていこうと思っている。

マネジメントはリアクションが主体

以前にも書いたように、マネジメントは「受け」から始まることが多い。

能動的に仕掛けることが多かったプレイヤー時代と比べ、部下からの相談、上司からの指示など、他のアクションから生じるリアクションがその仕事の大半を占める、というのがマネージャーの仕事である。

となると、そのリアクション力がマネジメントの成否を分けると言っても言い過ぎではないように思う。

完全とは言えない情報量の中で、適切な情報を拾い、それを繋ぎ合わせ、持っているスキルで対応していく、それを繰り返す。

それが僕が考えるリアクション力であり、アドリブ力であり、腕力である。

腕力は一朝一夕ではつかない

そして、この腕力という表現には、一朝一夕でどうにかなるものではない、という意味も込められている。

1日筋トレを滅茶苦茶やったとて、急に二の腕が太もものような太さになる訳ではない。

日々のたゆまぬ鍛錬が、その腕を少しずつ太くしていくのである。

そこにはプロテインもなければ、パーソナルトレーナーもいない。

ただ淡々と体を痛めつけ、超回復を待ちながら仕事を続けていくしかないのである。

未知をできるだけ既知にすること

よくマネジメントについての悩みを相談されることがあるけれど、それはトレーニング方法はどれが最適かということを聞かれているのと近い印象を僕は持っていて、「まあ何でもいいから取り敢えずやってみたら」というのが(乱暴ではあるが)僕の回答である。

ジムでベンチプレスをやることが重要なのか、デッドリフトの方が良いのか、それとも自重の方が良いのか、みたいな問いは、まあわからなくはないけれど、とにかくやってみないことには腕は太くならんぜ(えり好みしている場合じゃないぜ)と僕は思ってしまうのだ。

これは経験の種類を事前に規定しない、ということに繋がってくる。

マネジメントという仕事においては(というか仕事全般においてかもしれない)、何が有用であるかというのは、事前にはわかり得ない。

となると、取り敢えず経験し既知のものにする、それを増やす、というのが有効な戦略となる。

これが初任マネージャーとベテランマネージャーの違いにも繋がってくる。

同じマネジメントという仕事でも、ある事象に対して未知の状態で挑むのか、既知の状態で挑むのかでは、その精度が大きく変わる。

そしてその事象がまるまる同じでなくても、手元にある材料が豊富であれば、それを持ち寄って、有り合わせのもので対応することもできるようになる。

これが僕が考える腕力である。

前例がなくても、勘所はある

日々起こる様々な出来事。

その中にはどのように対応したらいいのかわからないものも当然含まれている。

また社内にノウハウが蓄積されていない場合だってある。

そのような状態の中で、マネージャーは判断を行わなければならない。

前例踏襲ではない決断を行うのは、それなりにリスクがあるし、そこには当然ながらそれなりの覚悟が必要となる。

だからと言って、「勘所」がない訳ではない。

どんな判断にも「良い筋」はある。

それを見つけられるかどうかがマネジメントの勝敗を分けるのだ。

楽しくなる為には訓練が必要

そして、腕力があれば、多少の判断ミスがあったとしても、力技で何とか立て直すこともできる。

結果として、安定したマネジメントを行うことができるようになるし、仕事も楽しくなる。

裏を返せば、楽しく仕事ができるようになる為には、それなりの訓練が必要となる、とも言える。

あらゆる経験は間違いなく糧になる。

それを信じて、今日も未知の困難に立ち向かっていくのだ。

それではまた。

いい仕事をしましょう。

あとがき

本文では腕力と書きましたが、「地肩」が強いに越したことはありません。

でも、これは人間性と一緒で、先天的な要素も大きい。

だからそれがない大半の人(僕もここに含まれます)は、努力によって力をつけるしかありません。

日々の仕事の些細な経験が何の役に立つのかと思う日ばかりだと思いますが、その経験は必ず役に立ちます。

マネジメント筋を痛めつけていきましょう。