手柄を取りにいかない
マネージャーが手柄を取りにいったら、マネジメントとしては失敗している
何をもって自分が優秀なマネージャーであるかを示すか?
手っ取り早いのは自分で成果を出しにいくことだ。
チームの成績が低迷している時に、マネージャー自身が打って出て、数字を挙げてくる。
流石はマネージャーだ!
ぱちぱちぱち!
とはならない。
と僕は考えている。
マネージャーが自分で手柄を取りにいったら、それはマネジメントとしては失敗していると、そのように考えている。
それはなぜか?
プレイヤー業務は単純に気持ちがいい
僕は事あるごとに成績低迷時に「課長が営業に出たらどうか?」ということを打診され続けてきた。
ここには「チームでできないのであれば、管理者がその分を埋め合わせるべきだ」という考え方がある。
それ自体は僕も賛成だ。
でも、マネージャーが出張っていってしまうと、チームの成長はそこで止まってしまう。
メンバーがマネージャーを頼ってしまうからだ。
そしてマネージャー自身もそれで気持ち良くなってしまうからだ。
これはプレイヤーとして実績を残してきたマネージャーが陥りがちな罠であると僕は思う。
本人は「よっしゃ、チームの為に一肌脱ぐか!」と考えているのだけれど、結果的にそれはチームの為にはならない。
マネージャーが「もっともっと」と欲しがってしまうからだ。
成果を上げてチームに帰ってくるというシチュエーションはヒロイズムを絶妙にくすぐる。
「オレのおかげでチームが救われた!」という快感は、地味で代わり映えのないマネジメント業務とは雲泥の差だ。
忘れかけていたアドレナリンとドーパミンが溢れ出てくる。
端的に言えば、とても気持ちが良い。
メンバーも上司もちやほやしてくれる。
チームを私物化してしまう
これはある種の麻薬だと僕は思う。
そして無意識下でチームの低迷を願うようになる。
というか、チームの根本的な解決を先送りにするようになる。
それは地味だし、面倒だし、不明瞭だからだ。
もっと目立ちたい!
本人は否定するだろうけれど、そういう注目はマネージャーが久しく味わっていなかったものなので、とても甘美だ。
どんどん手柄が欲しくなってくる。
もっと褒めて欲しくなる。
いつしか良い顧客もマネージャーが単独で担当するようになる。
もっと言えば、良い顧客を自分に集めてしまう。
当たり前の話だけれど、それによってもっとマネージャー個人の成果が上がるようになる。
これを繰り返す。
いつしかチームはマネージャーのものになる。
チームが私物化される。
本人は物凄く手ごたえを感じているし、充実感もある。
でもチームの成績は散々なものに終わる。
そして、チームは崩壊する。
これがプレイングマネージャーの末路だ。
手柄を求めに行く者の行く末だ。
苦しい時こそマネジメント業務に特化する
僕は時にマネージャーが出張ることは必要だと思うけれど、それはあくまでも非常時だけに留めておいたほうが良いと考えている。
自戒も込めて言うけれど、この「お立ち台に立ちたい」という願望は物凄く強力だ。
スポットライトを浴びて、ヒーローインタビューに答えたい。
マイクに向かって、かっこいいことを言いたい。
でも、それはマネージャーとしては諸刃の剣だ。
チームが低迷していて、それを本当に打開したいのであれば、マネジメントに特化した方が良い。
安易に自分が出張っていって、点数を稼がない方が良い。
じっくりと腰を据えて、なぜチームが低迷しているのか、その要因を分析した方が良い。
もちろん、その時間を稼ぐために自分で成果を上げてくることは否定しない。
でも、それはあくまでも急場しのぎの策であるべきだ。
本質はマネジメントによってチームを改革することだからだ。
過去の栄光は忘れて、マネジメント力で勝負していく。
そういう覚悟がマネージャーには求められる。
というか、そういう場面でマネジメントを徹底した先にマネージャーとしての成長があるのだ。
安易に逃げてはいけない。
上司はうるさく言ってくるかもしれないけれど、ぐっと堪えてマネジメント業に注力すべきだ。
トンネルは長いだろう。
でも必ず通過できる。
必ず光が差し込んでくる。
それまで走り続けよう。
それではまた。
いい仕事をしましょう。
あとがき
「プレイングマネージャー信仰」のようなものはそろそろやめた方がいいのではないか、と思っています。
これが日本特有のものなのかどうかはわかりませんが、少なくともプレイヤーに求められるものと、マネージャーに求められるものは大きく違う、ということを(体感として)理解している人は少ないように感じています。
マネジメントに必要な筋肉を鍛えるのは時間がかかりますし、マネジメントに特化しないとそれは不可能です。
それをなあなあにしたままの現状が、日本企業におけるリーダー層の不足、というような話に繋がっているような気がしています。
もちろんマネージャー本人にもマネジメントで勝負するという覚悟が必要です。
安易なプレイに逃げることなく、マネージャー業務を貫徹していきましょう。